講座513 ジイジ、孫を泣かす!
2.昨日の出来事
3.母親のしつけ
4.ジイジ、孫を泣かす
5.ジイジ、反省する
1.これまでのこと
孫は2歳8ヵ月です。
私は週に2回のペースで孫の家に通っています。
行くと必ず孫と遊ぶことになります(その間に娘が晩ご飯の支度をしています)。
孫の決まり台詞。
「にかい いこうか!」
私の返答は今までずっと同じでした。
「うん。行こうか!」
そうして私は孫を抱っこして階段に設置してある防止フェンスを乗り越えさせて、孫を階段に降ろします。
あとは自分で上がって行きます。
私は孫が落ちないように、すぐ後ろからついて上ります。
二階には3つ部屋があります。
寝室、おもちゃの部屋、ほとんど何もない部屋。
あっちこっち移動したりしながら毎回始まるのは「ごっこ遊び」です。
私も孫も1時間くらい平気で「ごっこ遊び」をします。
2.昨日の出来事
昨日が孫の家に行く日でした。
いつものようにピンポンを押してから玄関に入って行きます。
リビングに入ると、孫はテーブル(この家では卓球台がテーブルになっている)で遅い昼ご飯を食べていました。
孫はこちらを振り向いて、
「じいじだ」と言って笑顔を見せます。
私は隣に腰かけて、孫の食事のお手伝い。
床に落ちたら拾ってあげたり、口のまわりが汚れたらふいてあげたり、フォークがうまく刺さらなかった刺してあげたり…。
見ていると、スプーンやフォークの持ち方がだいぶ上手になって来ていました。
持ち方はまだ「回内握り」ですが、よく見ると、指先がわりと自由に動くように軸をつまんでいます。
3歳を過ぎたら「静的三点持ち」に移行できそうな気配です。
これはきっと、これまでにいろんな物を《つまむ》とか、《はがす》とか、細かい動きを経験してきたおかげでしょう。
そんなことを考えながら、孫の口のまわりについたケチャップを拭いていました。
3.母親のしつけ
ついつい私はそんなことをしてしまうのですが、母親は結構しっかり教育をしています。
食事が終わって、パズルで遊ぼうかというところで、母親が言いました。
「鏡を見てお口拭いてください」
そうなんです。
母親は普段から《鏡を見て自分で拭く》ということをさせているのでした。
しかし、この日はウェットティッシュを持ったまま、アンパンマンのぬいぐるみを抱えて幼児用の椅子に座ってしまい、口を拭く気配がありません。
そこでまた「じいじ」が手を出します。
私は「アンパンマンもお口を拭きましょう!」と言いながら、ウェットティッシュでアンパンマンに顔を拭かせます。
もちろんアンパンマンは鏡を見ています。
そんなことをしながら、その次に、「和佳ちゃんもお口を拭いてください!」と言って(孫は「わか」と言います)、
自分で顔を拭かせます。
これで、無事完了。
母親の教育は間違っていません。
まず、鏡を使わせるというのがいいですね。
しかも、鏡は幼児の背の高さに合わせて壁に設置してあります。
いちいち出さなくてもいいのです。
ですから母親は台所で野菜を刻みながら、口頭で「鏡を見てお口拭いてください」と言えば済みます。
これがシステムです。
幼児に鏡を使わせるということは、《「自分」というものの存在を視覚的に認識させる》ということです。
推測ですが、《自分理解》というのは脳の発達にかなり効果的だと思います。
《自分理解》はまちがいなく《他者理解》につながります。
共同注視と同じです。
人と人との関係性を理解するための基礎となるはずです。
鏡のいい所はまだあります。
運動機能の発達です。
《鏡に映った自分を見ながら指先を動かす》という運動は、普段なかなかやりませんよね。
この時でなければ脳のその部位は刺激されないはずです。
これもきっと意味があるはずです。
そして、最後は《身だしなみ》ですね。
「鏡を見てお口拭いてください」
母親のこの指示を聞いただけで、「この母親デキルな」と思いました。
しかも、指示の言葉づかいが丁寧ですよね。
「口拭けよ」とかじゃないですよね。
これも極めて重要な点です。
ですから孫の言葉づかいも自然と丁寧になっています。
そして、じいじの私は、これらのことをすぐに理解できたので、ぬいぐるみを抱えて幼児用の椅子に座ってしまった孫に対して、私が拭いてあげるのではなく、自分でやれるように支援しました。
連携プレーですね。
子育てに対する理解の仕方が同じであれば、こうした連携が暗黙のうちに可能です。
何しろ娘は私が持っている子育ての本を読み漁っていますから。
4.ジイジ、孫を泣かす
そのあとパズルで遊びました。
母親がパズルを出して来ます。
私は驚きます。
「えっ!これデキルの?」
なんと36ピースのパズルです。
娘曰く。
「こないだ24ピース出来たから、今36ピースに挑戦してんの!」
「マジか!」
バラバラになったパズルに挑戦してみましたが、ほとんどお手上げです。
孫の方がうまいくらいでした。
しかし、その途中で、孫はあることに気づきました。
「にかい いこうか」
じいじが来てるのに、今日はまだ二階で遊んでいなかったのです。
いつもの私なら「うん行こうか」です。
しかし、11月の北海道は気温が下がります。
朝は氷点下です。
そして、この家の二階は暖房をつけていません。寒いのです。
そしてそして、私は寒いのが苦手です。
前回も寒くて体調を崩しそうになりました。
ですから今日は孫に言われても二階で遊ぶのだけはやめておこうと決めて来たのです。
だから言いました。
「やだ。寒いから遊びません!」
きっぱりと断ったのです。
その瞬間です。
孫は固まりました。
そして、母親の所へ駆け出しました。
抱きつくや否や大声で泣き出しました。
いかにも悲しい、悲しい泣き声です。
私も悲しくなりました。
母親はしゃがみ込んで娘を抱き寄せ、背中をなでながら、
「悲しいね。じいじと二階で遊びたかったんだね」
何度もそう言葉をかけていました。
正真正銘の「ほっとダウン」です。
どのくらい泣いたでしょうか。
そんなには長くありません。
30秒くらいです。
孫は泣き止んだかと思うと、「オシッコしたくなった」と言って、母親と二人でトイレに行きました。
私はその間に帰り支度をして、スゴスゴと玄関に向かいました。
その時です。
トイレから声が聞こえました。
「ジイジ、帰らないでね。まだ遊ぶからね」
ガーン!
悲しそうな声でした。
そんなことを言われたら帰るわけにはいきません。
私はまたスゴスゴとリビングに戻って途中だったパズルの前に座り込みました。
孫はもう泣き止んでいます。
泣いていたのはあの30秒くらいだけでした。
多分、悲しみを母親に受け取ってもらって、体も抱いてもらい、感情が収まったのでしょう。
しかし、これは《収まった》でもあり、《収めた》でもあります。
「ほっとダウン」によって気持ちを言葉にしてもらい、自分で感情を収めたのです。
これは自分の感情を制御(コントロール)できたということです。
「抑制」と「シフト」という実行機能を働かせたわけです。
そう考えれば、こういう経験も必要なのかもしれません。
わざと悲しませるのはよくないことですが、生活の中でこのようなことを経験しながら、子どもはたくましさを身につけていくいのでしょう。
5.ジイジ、反省する
それにしてもです。
私は帰りの車の中で反省しました。
多分、私の言葉は強過ぎたのです。
否定語を使ってしまいました。
否定語というのは刃物と同じです。
凶器です。
脳を傷つける道具です。
私が言ったことばを振り返りましょう。
「やだ。寒いから遊びません!」
一応、理由は言ったんですけどね。
最初の「やだ」が強過ぎたのでしょう。
ホフマンの「しつけ理論」によれば、《否定語のみで伝える》のが「力によるしつけ」です。
ですが、最初の「やだ」が強過ぎたり、理由の意味が相手に届かなかったりすることによって、結果的にそれは「否定語のみ」と同じことです。
ですから今回の私の対応は「力によるしつけ」だったのだと思います。
勉強になりました。
反省もしました。
次に会う時は、絶対泣かせないぞと誓うジイジです。
こちらかダウンロードできます。→『みんなの子育てスキル』フライヤー
『未来のために知っておきたい みんなの子育てスキル』水野正司著・間宮彩智イラスト(マイクロマガジン)
否定語は子育ての場面のみならず、全てのコミュニケーションの場において、うっかり相手を傷付けてしまう言葉だと思います。
夫は自覚なく否定語を使うので、困ります。私が必要以上に傷付かず、港のようになるのが良いと思いつつ、理想通りにはいきません。日々修行(?)ですね。
そして、これから、娘が思春期に入ったら、きっと、子供が否定語を使うのかな?と。夫とのやり取りは、その時の練習になるかもしれませんね(笑)。
日々修業、「港」頑張ってください!
家族であってもなかなか理解はできないものです。
理解というのは、理解できない方の責任ではなく、社会が形成するものだと思います。
世の中が変われば理解は広がります。
まずは地元から。
そう思って活動しております。
いつもコメントありがとうございます!
鏡を見てお口をふかせる、衝撃的でした!
素晴らしいです!
質問です!
朝、最終的に子どもが顔を洗うということができればいいですが、洗面台で顔を洗わせたら水浸しになるのが想像でき、つい先延ばしにしたままです。
4歳の娘は食後手を洗うのは習慣づいていますが、口をふくというのはできていないので、早速やりたいです。2歳の息子は手を洗うのが嫌いで、拒否されて私がふく程度です。
わかちゃんのママは、顔あらい(顔拭き)についてはどのような教育方法を考えておられるのかぜひ教えてください。
返事をもらいましたので転載します。
◼️うちの娘は顔に水をつけるのはやや苦手で、私が顔を洗う姿を見せても全く興味を示さないので、泡と水で洗顔できるようになるにはまだ時間がかかりそうだなと思っております。
とりあえず朝は身だしなみとして出かける前に濡れタオル等で拭いて綺麗にするようにして、やる気がある時にお風呂で顔の洗い方を教えていこうかなと思っています。
恥ずかしながら私自身が水で洗顔できるようになったのは小学校高学年くらいだったので、焦らず余裕のある時にやらせようと思います。
ジイジからのコメント
ティッシュを持たせ、鏡は設置してあり、具体的な指示があれば、一人でやれる可能性がありますよね。それで、もし、一人で拭けたら、親として手間が省けますし、工夫した結果うまくいったら子育てが楽しいくなりますし、子どもは褒められて嬉しくなりますし、win-win-winになります。
これが逆の発想で、「〜させねば」でやると、もしできなかったり、うまくいかなかったりするとネガティヴになると思います。そして子どもには「無理」がかかる。この「無理」というのは避けた方が良いと思います。
両者を分ける発想の違いは子育てにおいてかなり重要なウエイトを占めていると思います。
水野先生、わかちゃんママ様
早速のお返事、本当にありがとうございます!
「させねばならない」「できてない」の呪縛にかかっていました。みんなが幸せになる方法でアプローチしてみます!ありがとうございます!