講座91 「正しい」叱り方は、親・教師、共通!
2.①毅然と叱る
3.②短く終わらせる
4.もっと短い終わらせ方
5.さらに短い終わらせ方
6.③事情を聴く
1.「正しい」叱り方はシンプル!
「ダメな」叱り方は3つです!
①ヒステリックに叱る(怒る・怒鳴る)
②長々と叱る
③理由を聞く
この逆が「正しい」叱り方になります!
①毅然と叱る
②短く終わらせる
③事情を聴く
この違いが分かる方はこの先を読む必要はありません。
でも、ちょっと「あやふや」な方はぜひ最後まで読んでください!
叱り方の原則はとてもシンプルです。
明日からすぐにでも使えます。
2.①毅然と叱る
一応書きますが、「笑って叱る」はダメです。(^^)/
「叱る」のですから、何かを教える、注意する、気をつけさせるのが目的です。
ある程度の緊張感は必要です。
笑顔で対応しちゃうと、その緊張感が台無しです。
子どもは、叱られているとに気づかないことがあります(ホントにあります!)。
「自分は叱られているんだ」という自覚がなければ叱られる意味がなくなります。
ですから、笑顔で叱ったり、優しい態度で叱るのはダメです。
これは、親より、学校の先生が要注意です。
子どもたちに優しい先生だと思われたくて、笑顔で対応してしまう先生がいます。
それが「いいこと」だと勘違いしているのです。
叱る時は毅然と対応しなければなりません。
特に教師はそうです。親とは違い、
一生のうちの「一瞬」しか付き合わないわけですから、
その時に、その場面で、伝えなければならないことがあるはずです。
特に、「新しい生活様式」になった今は、学校で(集団で)過ごすという時間は貴重です。
そこでしか学べないことがあるのです。
そのチャンスを逃さずに「伝える」という行為は教師の仕事です。親には出来ません。
「叱る」とは「気づかせる」です。
「在れども視えず」に気づかせることを「叱る」と言います。
3.②短く終わらせる
この逆がダメなのはイメージできますよね。
長い叱り方のことを「お説教」とも言いますが、子どもに効果はありません。
効果があるのは、短く、パッと終わる叱り方です。
しかし、この「短く」のイメージが人によってかなり違って来ます。
私の「短く」は秒単位です。50秒を過ぎると「長い」と感じます。
1分以上は「完全に長い」です。
結婚式のスピーチの適切な長さが「2分半」だと言われます。
叱るのにスピーチは要りません。
お笑いやYouTube動画のつかみは「15秒」だと言われますが、心をつかむにはそのくらいがいいと思います。
叱る場合は、心をつかんで、ひとことを添えて終了!「20秒」くらいというイメージです。
例をあげましょう。学校での例です。
チャイムが鳴って教室に入って来た子たちを叱る場面です。
私はすでに教室にいます。何人かの子が遅れて後ろからゾロゾロと入って来ます。
すぐには叱りません。全員がそろったところで言います。
「今、遅れて入って来た人は立ちなさい」
余計な言葉は入れません。毅然と言います。
立つのが遅ければもう一度同じ言葉で言います。
「今、遅れて入って来た人は立ちなさい」
それ以外に言いません。
遅れて来た子たちが立ちます。
「自分が悪かったなと思う人は座りなさい」
全員座ります。以上終了です。
最初の15秒は「つかみ」です。緊張場面を作ってあげるわけです。
最後の5秒で「ひとこと」言って終わりです。
「短く」というのはこのくらいのことを指します。
そして、「終わらせる」です。
「自分が悪かったなと思う人は座りなさい」と言って座ったあとはすぐ授業に入ります。
もう、さっきの件は「終了」したということです。
ケンカの仲裁なら、「ハイこれで終わり!」という宣言を大人が出すことです。
4.もっと短い終わらせ方
私の師匠である向山洋一先生は「忘れ物」について、こう言っています。
忘れ物をして当たり前じゃないですか。
私は忘れ物があって当たり前だと思います。むしろ、ないほうが異常だと思います。
たまにありますが「忘れ物が全くないクラス」というのは、どこか異常ですね。
それは教師が強い指導を行っていて、絶対に忘れ物ができないような状況をつくっているんですね。
子どもはたまったもんじゃありませんよ。
私の小学生時代には「忘れ物調べ」というのがあって、忘れ物をすると表に✖がついて貼り出されていました。
参観日なんかがあると親にバレバレです。
向山先生が「異常」と言っているのは、こうした減点主義の思想なんです。
では、向山先生はどんな指導をしていたのでしょう。
ただ、確認はしてましたね。
「忘れ物をした人、起立。気をつけるんですよ」
これだけです。
これで次の時には減るといいます。
また、減らなくても、同じことをしてあげればよいだけです。
これが、私にとっての「短く終わらせる」のイメージです。
5.さらに短い終わらせ方
これよりも、さらに短い終わらせ方もあります。
授業に遅れて入って来た子への続きです。
実は、子どもの様子を見て、「遅れて来てマズかった」と思っているようなら、
叱る必要はありません。気づいている(視えている)わけですから。
「今、遅れて入って来た人は立ちなさい」などとやる必要はないわけです。
待たずにさっさと授業を始めるのが正しい方向です。
「時間になったら授業が始まる」が学校としての大義です。
準備が出来ている子を待たせることの方が間違っています。
遅れて入って来た子とチラッと一瞬目を合わせるだけで終了というケースもあるわけです。
これなら「0秒」で終了です。
子どもの様子を見てマズかったと思っているようなら対応しない。目を合わせて終了。
さらに、まだ上があります。
子どもの様子すら見ずに授業を始めてしまうやり方です。
戻って来ない子がいて、空席があっても授業を始めてしまうのです。
どうなるか。
遅れて入って来た子は慌てます。
「マズい!」と思うでしょう。
そうです。「マズい!」と思わせてしまう方法です。
待たずに授業を始める。
これは、準備の出来た子が損をしない最上級のやり方です。
ただし、ひとつだけ注意が必要です。
その授業が価値あるものでなければなりません。
ツマラナイ、どうでもいいようなコトから始まる授業だと、子どもはわざと遅れることもあります。
それは教師の授業に問題があるのです。
なお、おうちでの「短い叱り方」については、講座37 あります!正しい「叱り方」で解説していますので、そちらをご覧ください。
6.③事情を聴く
①ヒステリックに叱る(怒る・怒鳴る)
②長々と叱る
③理由を聞く
①と②がダメな理由は理解していただけてるでしょうか?
脳科学的な知見が必要な場合は、講座37 をご覧ください。
最後に「③理由を聞く」がダメな理由について書きます。
「理由を聞く」というのはこういう対応です。
「どうしてやったの?」
「どうして遅れたの?」
「どうしてそんなコトやるの!」
といった叱り方を指します。
気づいているかも知れませんが、これは「叱り方」ではありません。
大人(親や教師)が、子どもに感情をぶつけているだけです。
「どうして」と言われても子どもは答えられない場合が少なくありません。
大人の側も「どうして」なのかを本当は知っているくせに口にしてしまう場合が多いです。
「どうして」は、ほとんど意味のない言葉です。
というより、むしろ逆効果です。
答えに困った状態をつくり、叱られる時間を長引かせてしまうからです。
「短く終わらせる」とは真逆です。
①毅然と叱る
②短く終わらせる
③事情を聴く
では、「③事情を聴く」とはどんな対応でしょう。
ケンカの場合によく使われます。
一人は泣いた子、一人は泣かせた子。
二人の前でこう言います。
「何があったのか言ってごらん」
これが「事情を聴く」です。
「聞く」ではなく「聴く」を使ったのは、こちらから積極的に聴くという意味です。
そして、「一人ずつ」言わせます。
A君から事情を聴いたとしましょう。
A君から聴き終わったところでこう言います。
「B君、本当ですか」
B君が頷いたとしましょう。
「B君、それはいい事だと思いますか?悪い事だと思いますか?」と聴きます。
B君は「悪い事だと思います」と言うでしょう。
先生はその言葉を引き取って、
「そうだなあ。そんな事をしちゃダメだよなあ。でも自分でわかってるのはえらい。A君に謝ってごらん」
そういって「ごめんさい」を促します。
先生はA君に確認します。
「A君、いいですか?」
A君はコクリと頷きます。
その次が大事です。
先生は次のように言ってあげます。
「でも、ケンカになったのはA君にも悪いところがあったからかも知れない。A君も謝れるかな?」
A君も「ごめんなさい」を言う。
「B君、いいですか?」
B君もコクリと頷く。
「よし、これで終わりです」と宣言を出して終わります。
これを「喧嘩両成敗」と言います。
A君を泣かせたB君が99%悪い場合でも喧嘩の場合は両方に謝らせるという指導方法です。
これが五分五分なら両者に「事情を聴く」といった対応になるでしょう。
今回は「片方が99%悪い」という極端な設定で解説しました。
ポイントは同じです。「事情を聴く」→「その事をどう思うか言わせる」です。
「どうしてやったの?」とは考え方が全く異なるということが伝わったでしょうか。
以上が「正しい」叱り方の基本構造です。
要するに「ダメな」叱り方の反対というだけの話です。