講座350 余裕がないと叱ってしまう?
本やブログを読めば「イイコト書いてるなあ」とか「そうかも知れないなあ」と思うでしょう。
でも、実際の場面になったら叱ってしまうかも知れません。
それでもっと詳しい解説をしようと思って講座347「怒る」はダメ!「叱る」はいい?」を書きました。
しかし、こんなコメントをいただきました。
心に余裕が無いと、子供が嫌な気持ちになるような対応をしてしまう、、、怒らない心が欲しい。
そうなんですね。
結局、どんなに知識を増やしても「心に余裕」がないと、怒っちゃうんですね。
最後はそこかー!
究極の難題を出されてしまいました。
答えないわけには行かないので答えます。
どうしたら心に余裕が持てるのか!
2.must育児
3.need not育児
4.ハードルと同調圧力
5.基準は「らしさ」
6.まとめ
1.子は親の鏡
これまでいろんなタイプのお母さんと出会って来ました。
大抵は家の中の様子までは見ません。
話を聞くだけです。
それでもわかるんですよね。
「このお母さんはきっと家では怒っているだろうな」
だいたい当たります。
学校に来た時に子どもと仲良しのフリをしたり、わざと優しい声をだしたりしてもバレます。
学校での子どもの様子を見られているわけですから隠しようがありません。
それでも気づかないフリをして対応しますけどね。
学校では言うことを聞かない → 家で言うことを聞く
これは親が厳しいタイプです。
学校で羽を伸ばすわけです。
学校では真面目 → 家でダラダラ甘える
これは親が優しいタイプです。
本人は園や学校で頑張っているので、家庭で癒してあげるのは良いことです。
これは大雑把な例ですが、もっと細かく観察することもできます。
でも、分かったとしても学校や園は手出しが出来ません。
家庭教育に首を突っ込む権限までは持っていませんから。
通常は泣き寝入りです。
2.must育児
そこで考えたのは次のことです。
家で厳しいお母さんはどうして厳しくするのだろう?
厳しくない我が家にとっては難しい問題です。
「どうしてあんなに怒るんだろう?」と不思議に思うことが多い世の中です。
直接聞いてみれば答えてくれるのでしょうか?
いやいや。「うちは厳しくなんかしてませんよ」と言われるのがオチでしょう。
実態のつかめない子どもに厳しい子育て。
このような子育てを「must育児」と名付けてみます。
「~しなければならない」「~すべきである」といった考え方が中心の子育てです。
3.need not育児
それとは反対なのが「need not育児」です。
「~する必要がない」「~しなくてもいいでしょ」といった考え方が中心の子育てです。
子どもがおもちゃで遊び終わった後に「片付けるのが当然でしょ」とは思いません。
「片付けないでどっかへ行っちゃうのが子ども」という認識です。
だから、叱る必要がない。
叱ろうとも思っていない。
言ったとしても、片付けてくれることを期待していない。
遊んで散らかすのが子どもでしょ。
そんなスタンスです。
先日、あるお母さんと話をしたのですが、5歳になるそのお母さんの息子さんは外食先で勝手に自分でジュースをオーダーしてしまうそうです。
「mustお母さん」なら叱るのではないでしょうか?
でも、そのお母さんは「1回くらいならまあいいか」というスタンスです。
「need not育児」です。
それで思ったのですが、お母さんの余裕って、実はこういうところから来ているのではないでしょうか。
4.ハードルと同調圧力
どうでしょう?
心に余裕のないお母さんというのは「must」に縛られているのではないでしょうか。
「~しなければいけない」「こうあるべきだ」というのが「must育児」です。
それに対して心に余裕のあるお母さんは、いつでもにこやかでした。
余裕があることが表情からわかりました。
そして、そういうお母さんの育児方針は「それくらい、いいんじゃない」「必要ないでしょ」というneed not育児でした。
どうですか?
心の持ち方の参考になりませんか?
別な言葉で言うと「基準(ハードル)が低い」ということです。
低いというより、ほとんどないとい感じですね。
ですから「イラっ」としない。
「カチン」と来ない。
たとえ周りの目があっても気にしない。
「いいんです。子どもですから」
そう開き直って、同調圧力に屈しない。
というか、同調することで子どもを苦しめない。
「心の余裕」はそういう信念・強さにも支えられているようです。
5.基準は「らしさ」
ここで少し深掘りしますよ。
「子育てはこうあるべきだ」というmustの根拠はどこから来るのでしょう?
育児書? ネット記事? ママ友情報? YouTube動画?
そういう情報はたくさんありますからね。
参考程度ならまだしも、検索しまくって一つの情報にどっぷり漬かってしまうのは考え物です。
最近は「エビデンス(科学的根拠)」という言葉が自由に使われて怪しさを増しています。
何を信じていいのかわからないというくらいがちょうどいいのではないでしょうか。
また、それとは別に「気にしない」「無理に~しない」というneed not育児も健在です。
こちらは何を根拠にしているのでしょう。
子どもの生きる力
カッコよく行ってしまえばそれです。
「成長する能力」「伸びる可能性」と言ってもいいでしょう。
もう少し詳しく言うと、それぞれの段階で「らしさ」を大切にするということです。
赤ちゃんの時には「赤ちゃんらしさ」を大切にし、発揮させ、
幼児期には「幼児らしさ」を大切にし、発揮させ、
児童期には「子どもらしさ」。思春期には「思春期らしさ」を大切にする。
そこに「その子らしさ」も加えるとなおいいでしょう。
「らしさ」を大切にする子育ては、昔から日本人に受け継がれたことでもあり、近年になって科学的に検証されつつあることでもあります。
6.まとめ
私は「心の余裕」は時間的なものではなく、考え方だと思います。
must(べき・ねばならない)を捨てて、need not(必要ない)を基準にしませんか。
それだけで大きく変わるような気がします。
それ以外にお伝えするとすれば次の2点です。
(1)型を身につける
(2)一人にならない
「型」というのは私の講座で紹介しているアレです。
①とりあえずほめる
何でもいいからとりあえずほめるという型です。
使う言葉は「すごいねえ!」とか「ステキ!」とかお決まりの言葉でもいいのです。
「とりあえず」が大事なのです。
これを口癖のように修得したならば「型」の完成です。
型は使っているうちに板についてきて、やがて様になります。
②とりあえず驚く
これも技術です。
でも、使っているうちに型となり、板につき、様になって行きます。
この①と②を使いこなすだけで、怒ったり、叱ったりすることは激減するはずです。
そして、最後に大切なのが「一人にならない」ということです。
心というのは一人では癒し切れないものです。
誰かと会う、誰かと話す、誰かに吐き出す、誰かと楽しむなど、そういう時間を意識的に設けることをオススメします。
「心の余裕がない」というのは時間が足りないことではありません。
(1)ハードルが高い
(2)型を身につけていない
(3)一人でいることが多い
コメントをくださった文さんは次のように書いています。
以前、怒らないを実践できたと伝えましたが、また、怒るようになってしまいました。それでも、怒らない時の感覚は掴めたので、修正して、また戻ってを繰り返しているような感じです。子供には、最近怒る回数が減ったと言われました。(畠山文)★10
とてもいいことです。
ここでも「must」はダメです。
「怒らないようにしよう」は、そう思っただけで自分のストレスとなります。
そうではなく、「いつのまにか怒るのが減ってた」というのがベストです。
娘さんが言った「最近怒る回数が減った」は理想的な言葉です。
無理をせずにそれができれば完成です!
コメント採用が10回になりましたので上級認定証を送らせていただきます。
おっしゃる通りです。
子供らしさを大事にしたい。
頭では分かっていて、世間体を気にしてしまう自分がいます。
これを克服するのが結構大変だなと身に染みています。
面白かったです。
性格上、mustタイプの人がいます。
その方にはあたりまえの枠があるようです。自分のあたりまえを押し付けます。
自分の思考のくせをとりたいでです。
琢朗先生も読んでいてくださったなんて感激デス!
コメントありがとうございます!
心に余裕がないと、分かります。
あと、お友達や下の子に押すなど危ないことをしてしまうと、声が大きくなってしまいますが「あれ!押していいのかな?」や「押したら危ないよ・痛いよ」というようにしています。正しい対応か分かりませんが前頭葉を働かせる・教えること、を思い出してやるようにしています。
いつもありがとうございます。
言い方にもよりますが、防衛スイッチが入らない注意の仕方は正しい対応です。
まさに家の中でだけmust育児になりそうな予感がしてる母親です。実家にいると余裕ができて何でも「まあいっか」と思えるのですが家にいると余裕がなくなってきます。
SNSを見ていると、子育てしている人もいない人も世の中のお母さん方がmust育児することを求めている人が多いような気がします。「今時の親はしつけがなってない!」と。
いつでもうちに来て下さい。(^^)/
一級の認定ありがとうございます。そして、今回の記事、大変参考になりました。
世の中には色々な考え方があって当たり前なのですが、子供に対しての認識は、沢山の人が共有できたらいいのにと感じました。躾がなってないとか、放任とか、レッテルを貼られたくないから、怒り過ぎる、叱れないなどがあるかな?と。
娘は衝動的で、興奮してしまうと行動の制御が難しく、本人の意に反して問題行動を取ることがあり、結果、親の私が咎められることが何回かありました。
親のみならず、社会全体で、子供ってこうだよね、との理解があれば、親を責めず、みんなで子供を見守れるのにと思います。先生の活動は正に、子供への理解を広めるものだと感じます。
社会全体の理解が重要ですね。
母親一人一人の責任にしてはいけないと思います。
must育児
という言葉、納得のネーミングです。
育児だけではなく、家事に関しても、must思考になっていることがあります。
掃除・洗濯・洗い物を、ここまでしなければ・・・
でも、している最中に子どもたちの世話をして、なかなか思うように進められない・・・
となって、イライラしてしまうことがあります。
家事においても、must思考を手放したいです。
やった!
ネーミングほめられた!
実は一人で気にいってました!