発達障害への理解 理想の学校・ブラックな学校

講座309 わが国の教育システムの問題点

投稿日:

先日、こんな講座を受けました。

「青年期・成人期における発達障害のある人を誰一人取り残さない社会に向けて」

講師は信州大学医学部教授・本田秀夫先生です。

その中で私は衝撃的な言葉に出会いました。

今回は、その言葉の紹介から「わが国の教育システムの問題点」を解説していきます。

 目 次
1.会社が一から教えている
2.日本、終わってる?
3.「未来人材ビジョン」
4.人材育成への提言

1.会社が一から教えている

本田先生は「わが国の教育システムの問題点」を次のように言われたのです。

通常の学校教育を真面目に受けても、就労にはほとんど役に立たない

日本の子どもたちは18歳で卒業したり、22、23歳で卒業したりしますよね。

でも、この段階では「社会人としては使い物にならない」というのです。

言われてみればそうですよね。

ですから、就労してから会社が働き方を教えています。

たとえば、こんな内容です。

ビジネスマナー研修:他の人と一緒に働くにはどのようなマナーが必要なのか
ITスキル研修:
メールやエクセルをどのように使うのか
ロジカルシンキング研修:
抜けや漏れがないように円滑に仕事をするためにどうするか

ビジネスマナーと言えば、接客のことかと思いがちですが、それだけではありません。

同僚として、組織の一員として動くためのスキルを教えるわけです。

こういうことは会社が「一から教えなければならない」のが現状です。

ロジカルシンキング研修なんてまさにそうです。

ビジネスの場では物事が100%であることはほとんどありません。

でも、ちゃんと勉強していない多くの人は、「みんなやってます!」とか、「絶対に正しいと思います!」とか、「この資料、完璧!」といったような言葉を日常的に使ってしまっています。

仕事でこんな発言をしてしまう人は問題ですよね。

仕事では、正確に物事を伝えることが求められます。

本田先生は言います。

欧米などでは高学歴になればなるほど即戦力として期待されるような教育を受けている。
それに対して日本は「大学を卒業しているからといってもどうせ使い物にはならないだろう」という前提で会社側も受け入れている。
(要約水野)

「こんなことをやっている国は滅びます!(もう滅んでる!)」と本田先生は言い放ちました。

2.日本、終わってる?

これ、決して大袈裟な表現ではありません。

「未来人材ビジョン」(経済産業省)

これはアメリカの「ギャラップ社」が世界規模で実施したState of the Global Workplace 2022 Reportの結果です。

エンゲージメントというのは「仕事への意欲・やる気」のことです。

ご覧の通り、やる気のある人は5%です。

これは、調査対象129カ国中128位。

チョークの製造会社、日本理化学工業の社長をされていた故・大山康弘さんは、

人間は働くことで幸せになれる

という名言を遺しましたが、

日本人の幸福度はどうなんでしょう?

世界38カ国で4,800以上の拠点を持つ総合人材サービス企業「ランスタッド」の調査によると、日本は、

「仕事に対して満足」と回答したのは42%で調査34カ国中最下位
・「仕事に不満」が21%でこちらは同1位

です。涙

また、ニッセイ基礎研究所の小原一隆氏が作成された「OECD加盟国の幸福度と生産性の関係」を見ても日本はG7で最下位。

日本という国は、

「仕事への意欲・やる気」のある大人が少なくて、

「仕事に不満」を持っている大人が多くて、

「仕事に喜びや誇り(働きがい)」を持っている大人が少ない国なのです。

そりゃあ、何とかしたいからこそ「滅びる」って言いたくもなります。

3.「未来人材ビジョン」

経済産業省は2022年5月30日に「未来人材ビジョン」を公表しました。

この資料には悲しくなる報告がたくさん出てきます。

これを見て思います。

国際競争力が30年間で1位から31位に落ちたにも関わらず、日本の学校教育はほとんど変わっていない。

「通常の学校教育を真面目に受けても、就労にはほとんど役に立たない」とすれば、一体何を目的にしてやっているのでしょう?

それは多分、入試でしょうね。

中学入試、高校入試、大学入試のために真面目に頑張っているのでしょう。

そのことと人材育成とがマッチしていなかったという結果です。

未来人材会議では、社会で求められる能力を56項目に整理しています。

そして、この56項目の中で将来的に必要なる能力を次のように提示しています。

需要のトップに「問題発見力」とありますが、この言葉はこれまでも学校現場でよく使われてきました。

しかし、社会が求めている問題発見力と学校現場で考えている問題発見力には大きな隔たりがあるように思います。

テストの結果は高いのに、勉強と仕事が結びついていない。
テストの結果は高いのに、勉強が楽しいとは思っていない。

そりゃあ、社会に出たら学ばなくなるはずです。

4.人材育成への提言

では、どうしたらいいのか?

未来人材会議は次の2つを提言しています。

(1)旧来の日本型雇用システムからの転換
(2)好きなことに夢中になれる教育への転換

(1)を実現するには、早い時期から職業観を養う必要があると思います。

私の主張は次の4つです。(「人材育成の全体構造図」

①小学校高学年・中学・高校における社会経験の保障
②専門家への授業の外注
③知識の暗記に頼らない入試へのシフト
④MI理論やSEMなどの発想による個別最適化カリキュラムの実施

(2)を実現させるためには、学校教育の抜本的な改革が必要でしょう。

私の主張は次の3つです。(「人材育成の全体構造図」

①教員養成制度の改革(2年間の実習、インターンシップ制度、特別支援免許の専修化)
②学習指導要領の改革(時数の削減、基礎の保証、社会問題への対応、オンライン学習のカウント化)
③サードプレイスの拡充
(下図)

サードプレイスの拡充によって学校の先生方は過重労働から逃れられます。

その分を本来の仕事に意欲を持って当たることができるはずです。

未来を絶望するわけにはいきません。

最後に、未来人材会議の次の言葉を抜粋して終わります。

2040年のあるべき教育システムを実現するためには、
2030年代の教育が変わる必要があり、
その枠組みを変えるには2020年代前半に大きな変化を起こす必要がある。
残り時間は、あと数年しかない。
「未来人材ビジョン」

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-発達障害への理解, 理想の学校・ブラックな学校

執筆者:


  1. さつきママ より:

    水野先生の素晴らしい提言が、議員さんやメディアに届いてほしいです!!!

    • 水野 正司 より:

      そう言っていただるだけで励みになります!
      夢だけでは終わらせません!(^^)/

  2. スマイル より:

    シェアさせて頂きます!

  3. 畠山文 より:

    この記事を読み、以下の記事を思い出しました。幼児から小学6年生まで、いわゆる学校の勉強はせず、好きな事をして過ごした後、普通の中学校に進学したらどうなるか、、、

    https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=380249

    https://toec.jp/

    そして、昔は子供の頃から、家の仕事を手伝ったり、奉公に出たりして、社会経験を積んでいたなと。

    サードプレイス、良いですね。家庭環境に影響されず、全ての子供が多様な経験ができる場があるのは良いと思いました。

    • 水野 正司 より:

      フリースクールですよね。残念ながら6年間遊ぶだけでは世の中を生きて行けません。
      小学校4年生程度の読み書き計算は必要です。
      新聞を読んだり、自動車免許を取得したり、役所などで手続きをしたりするためには、ある程度の学力が必要です。
      また、自分で自分の学力を生涯にわたって伸ばすためには「学力の基礎」が必要です。
      「基礎学力」ではありません。「学力の基礎」です。
      それが小学校4年生程度の読み書き計算なんです。

  4. つむちゃんのお母さん より:

    教師自身の生き方も重要になってきますね。

    私が教員の魅力を感じ始めたのは、教育技術を学んでからです。
    つまり、自分で教えを乞いに行ったのです。大学の勉強は実技以外はほとんど使えない内容ばかり。今思えば採用試験のための勉強だったんですよね。

    もし、学びの世界を知らなかったら、今の仕事にやり甲斐なんか感じず、惰性で仕事をしていたと思います。

    未来のこどもたち、自分のこどもたちにはそんな思いさせたくないと強く思いました。

    • 水野 正司 より:

      私も同じです。
      大学時代は部活とバイトと恋愛で終わりました。
      教育実習もありましたが、あれは「ごっご」だったのだと教員になって理解できました。
      社会に出てから自分で勉強しなければならないのだと知りました。
      新卒1年目の12月です。

  5. […] い。勉強が楽しいとは思っていない。(詳しくは、講座309「わが国の教育システムの問題点」) […]

  6. […] 信州大学医学部教授・本田秀夫先生の言葉です。(講座309「わが国の教育システムの問題点」) […]

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