発達障害への理解

講座308 発達障害の子の食事と栄養

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帝京大学医学部附属病院の功刀(くぬぎ) 浩教授が『発達教育』2022年10月号で「発達障害のある子の食事と栄養」という記事を寄せています。

この記事がすごいのです。

部分的になりますが私なりに解説させていただきます。

 目 次
1.ADHD児の栄養学的問題
2.ASD児の栄養学的問題
3.食べ物による治療
4.まとめ

1.ADHD児の栄養学的問題

野菜、果物、ナッツ類、魚の摂取が多い「健康的な食事パターン」をとっている者はADHDリスクが0.6倍に低下する。

この場合の「ADHDリスク」というのは発症するリスクなのか、症状が表れるリスクなのかは不明ですが、その両方と考えて話を進めます。

そのリスクが「0.6倍に低下する」というのです。

この数値は、ほぼ事実です。

なぜなら、この数値はメタアナリシス(メタ分析)に基づく数値だからです。

エビデンス(科学的根拠)には、ピンからキリまであります。

https://www.pinterest.jp/pin/596164069423510181/

テレビなどでよく使われる「専門家の意見」というのはエビデンスが低いものです。

真ん中くらいにある「コホート研究」というのは、2つの異なる集団をつくって追跡調査をする研究です。

その上に「非ランダム化」と「ランダム化」がありますが、これは研究対象を無作為(ランダム)に分けて検証したかどうかの違いです。

もちろんランダムに分けた方が信頼性が高い研究となります。

そして、メタアナリシスというのは、その信頼性の高い「ランダム化比較試験」による結果をいくつもいくつも集めて、統計的に解析を行い、結果を出したものです。

根拠に基づく医療としては、最も質の高い根拠とされます。

そのメタアナリシス(メタ分析)による結果がこれなのです。

野菜、果物、ナッツ類、魚の摂取が多い「健康的な食事パターン」をとっている者はADHDリスクが0.6倍に低下する。

「健康的な食事パターン」にカギ括弧がついていますね。

これはこう読んでもいいということです。

健康的な食事パターンをとっている者はADHDリスクが0.6倍に低下する。

要するに、食事に気をつけているかどうかということです。

その「気をつけている」の具体的な中身が、たとえば厚生労働省が出している「食事バランスガイド」です。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html

では次に、その逆パターンを紹介します。

功刀教授は次のように書かれています。

赤肉、精製穀物、加工肉、トランス脂肪酸の摂取が多い「西洋式食事パターン」は1.9倍に、砂糖入り飲料やスイーツの摂取が多い「ジャンクフード型」は1.5倍にリスクを高める。

これは逆パターンですから「食事に気をつけていない」と表現することもできます。

私たちの生活は、気をつけていないと「西洋式」や「ジャンクフード型」(コンビニ型)に陥りやすいはずです。

私も仕事で帰りが遅くなる日はコンビニ食で済ませてしまいます。

功刀教授は次のように指摘しています。

成育環境が経済的に貧しく、十分な食料を得られない不安を持ちながら育つとADHDのリスクが高まることが指摘されています。

本当は手作り食の方が工夫して安く済ませられるのですが、作るのが面倒というのもあるでしょうね。

でも、そのことによって子どもたちが「面倒な問題」を抱えることになるリスクが1.5~1.9倍になると読みとることもできます。

この他に、ADHDと「鉄不足」「ビタミンD不足」の関係も紹介されています。

鉄不足とビタミンD不足はドーパミンの機能を障害させる。

鉄分と言えば、「煮干し」「レバー」「しじみ」でしょうか。

ビタミンDと言えば、「しいたけ」や「しらす干し」ですね。

ADHDと腸内細菌に関する研究もたくさんあるそうです。

ビフィズス菌などの有用菌が病態に関与し、治療にも有効である可能性が指摘されている。

有用菌というのはいわゆる善玉菌のことです。

善玉菌を増やす方法は3つあります。

①直接摂る、②植物繊維を摂る、③オリゴ糖を摂る。

しかし、ビフィズス菌は年齢を重ねるにつれどんどん減っていきます。

赤ちゃん期の95%以上をピークに、成人では10〜20%、老年期では1%未満まで減ると言われています。

従って新生児期の腸内環境が最重要です。

功刀教授は指摘します。

帝王切開、早産、母乳栄養ではないこと、新生児期での抗菌剤の投与はビフィズス菌の減少の要因となり、これらはADHDのリスクを高めるとされています。

最近は抗菌剤だらけですからね。

特に赤ちゃんには気をつけたいと思います。

2.ASD児の栄養学的問題

ASDと言えば「偏食」です。

食材や料理の好き嫌いだけではなく、食品の色、外見、匂い、触感、パッケージ、製造元、温度など様々なところにこだわる子もいます。

功刀教授は次のように書いています。

こうした特徴に関する具体的な対応法としては、子どものこだわりをよく観察し、偏食を叱ったり脅したりせず、できるだけ子どものこだわりに付き合いながら、無理強いをせず、少しずつ(スモールステップで)、褒めながら、苦手な食べ物を克服していくのがよいでしょう。

こうした対応は、ASDの子に限らず、すべての子どもたちに対してとられるべき姿勢だと思います。

が、学校教育における「完食指導」の実態は旧態依然です。

Twitterで「#完食指導」を検索すると、その実態が山ほど出て来ます。

ニュースサイトの「Sirabee」には「ヒドい!小学校で給食を残した時に教師にされた最悪行動3選」という記事が出ていますのでその3選を紹介します。

①5時間目の授業の時まで席に給食を置かれて食べることを要求される
②給食を残したら、囲んで「食・べ・ろ!」とコールをかけさせる
③給食を残したら、翌日の給食を取り上げられて食べさせてもらえない

このようなことは私も見聞きしたことがありますし、もっとヒドイ指導も知っています。

このような仕打ちを受けた子どもがその後どうなると思いますか?

不登校やPTSDになります。

完食指導は、教育的虐待です。

偏食傾向にあるASD児は当然ながら栄養が偏ります。

定型発達児:1ヵ月平均54.5品目
ASD児:1ヵ月平均34.5品目

ASD児の鉄欠乏は24~32%、貧血は8~16%

ASD児の23~70%に胃腸症状(腹痛、膨満感、便秘、下痢、嘔吐、嚥下困難など)

この胃腸症状を持つASD児は、ひきこもり、常同行為、落ち着きのなさ、不安、攻撃性、自傷行為などの副次症状も強くなる傾向があるそうです。

これも乳幼児期の腸内細菌の環境が影響を及ぼしていると可能性が指摘されています。

3.食べ物による治療

(1)微量栄養素の補充

ビタミン、鉄、亜鉛、葉酸、EPAやDHAなどの補充療法の有効性が指摘されています。

(2)カゼインやグルテンの制限

カゼインというのは牛乳に含まれるタンパク質、グルテンは小麦粉に含まれるタンパク質です。

これらの食事制限の有効性が指摘されていますが、カゼインやグルテンだけを制限することは難しく、他の栄養素が不足する事態にもなるため疑問の声も上がっています。

(3)ケトン食

ASD児の3割に「てんかん様症状」があるという報告があり、てんかんの食事療法として、ケトン食を用いる方法があります。

ケトン食というのは、糖質(炭水化物)を控えて、脂肪やタンパク質を多く摂る食事療法です。

具体的には、ごはん、うどん、パン、パスタなど主食となる炭水化物は摂らず、代わりに魚介類、肉類、大豆、卵といった良質なタンパク質をメインにした食事です。

4.まとめ

以上、『発達教育』2022年10月号「発達障害のある子の食事と栄養」の解説でした。

最後に、この記事の感想を書いて終わります。

(1)「健康的な食事」を意識することの大切さ

当たり前のことですが、これは意識しないと出来ないと思いました。

意識していないと、安易な食事に流れてしまいますから。

私なりになとめますと、「健康的な食事」の反対は、「西洋式食事パターン」「ジャンクフード型」「コンビニ型」「甘い物の摂り過ぎ」です。

(2)乳幼児期の腸内細菌は重要

これですね。死滅させないように育てないといけないと思いました。

(3)ASD児への食事フォロー

ASD児は特に栄養不足になりやすいですからフォロー(栄養補充)が必要だと気づきました。

合わせて、ASD児の胃腸環境に注意することですね。

学校の先生方に対しては、もういい加減に「完食指導」から抜け出してもらいたいですね。

YouTubeにも関係する動画がありますのでリンクしておきます。

この動画は2020年の12月6日に公開したものなのですが、それからずっと視聴され続けていて、私のYouTubeチャンネルで第4位のコンテンツなんです。

2年前ですから修正した箇所もあるのですが(たとえば「モノアミン仮説」の真偽など)、だいたいは今でも参考になると思いますのでこのまま公開しております。

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