
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
私はYouTubeで「コラボ動画」を撮影しています。
退職教員3名による「若い先生向け」のハウツー動画です。
最近、視聴者からこんな質問が来ました。
「ウチの子は前の学年に習った漢字が書けなくて困っています」という保護者からの相談に、
どう対応したらよいでしょうか?
わかります。
こういう相談は時々あります。
今回はこのことについて解説してみようと思います。

1.心配しないこと
結論から言いますとですね、
親の心配することじゃないと思います。
すみません。本音を出してしまいました。
だってですね。
そんなことを言ったら、クラスの多くの子が忘れていますよ。
前の学年で習った漢字ですから。
いいじゃないですか、忘れたって。
忘れるに決まってるんです、漢字なんて。
ということを動画の中で話しました。
本音です。
しかもですよ。
このお子さんは普段の漢字テストで高得点を取っているんですよ。
つまり、今やっている漢字なら書けるんです。
それでいいじゃないですか。
どうしてそんなに心配するんでしょうね。
私としては、「前に習った漢字」よりも、「その子の自己肯定感」の方が大事だと思います。
せっかく100点をとっても親は不満なわけですよね。
「だって、それ今習った漢字でしょ。できて当たり前でしょ!」
そんな風に口にしているとしたら最悪です。
いいえ。口にしなくても、心の中で思ってたとしても伝わりますよ、そんなの。
だって、心から喜んでいないわけですから。
「前の学年の漢字が書けない?そんなの当たり前でしょ!だって脳は忘れるようにできてるんだもの!」
私ならそう思いますけどね。

2.LDには注意
ただですね。
これは動画の中で吉田高志先生が指摘されていますが、
「漢字が書けない子」の中にはLD(学習障害)に困っている子も存在します。
存在率は子どもの時期で5~15%だと言われています。
結構な割合ですよね。
しかも、様々なタイプがあって複雑です。
大きく言えば3つ。
①読字障害(ディスレクシア)
②書字障害(ディスグラフィア)
③算数障害(ディスカリキュリア)
読字障害というのは、音読が苦手な子の中にいます。
書字障害というのは、漢字の形を間違えたり、マス目に収めるのが苦手な子の中にいます。
算数障害というのは、時計が読めないとか、九九が覚えられないとか、簡単な計算が出来ないといった子の中にいます。
こうしたLDの特徴は、
話を聞くのは問題ないのに、音読だけがなぜか苦手(読字障害)
話したり聞いたりするのはできるのに、なぜか書くことだけが苦手(書字障害)
読み書きは出来るのに、なぜか算数だけが苦手(算数障害)
というように「なぜか」ある分野だけが極端に苦手という症状がある点です。
と言っても、素人が勝手に判断するのは危険ですので、
もし心配であれば、まずは学校に相談することです。
簡単なペーパー検査から専門家による個別検査まで様々な検査があります。
障害だとしたら、その子が「今」苦しんでいるわけですから、
「適切な対応」と「適切な理解」が第一に求められます。
本人は「なんで出来ないんだろう?」「自分は勉強が苦手だ」という感情を持ち始めているかも知れません。
小学校3~4年生くらいが要注意です。
これもまた、その子の「自己肯定感」を失わせないために必要なことです。

3.学校教育の不思議
「ウチの子は前の学年に習った漢字が書けなくて困っています」という保護者からの相談に、
どう対応したらよいでしょうか?
これが学校の先生からの質問でした。
この質問にはもう一つ、気をつけなければならないことがあります。
それは、日本の学校教育には次の制度があるということです。
今の学年の漢字は読めればいい(書くのはだんだん書けるようになればいい)。
でも、前の学年の漢字は書けて、使えるようになっていなければならない。
知ってましたか?
学校の先生は当然知っていると思いますが、
保護者の方は知らない方がいると思います。
これは学習指導要領という法令に次のように書かれています。
第2学年においては,学年別漢字配当表の第2学年までに配当されている漢字を読むこと。また,第1学年に配当されている漢字を書き,文や文章の中で使うとともに,第2学年に配当されている漢字を漸次書き,文や文章の中で使うこと。(小学校2年生の場合)
これは、私が最初に言った「心配しなくていいんじゃない」に反します。
本当は、法律では、前の学年の漢字は「書けるように」なっていなければならないのです。
細かく言うと、それが「使えるように」もなっていなくてはいけないのです。
知ってましたか?
私は元教員ですから、知っていて、わざと、
「いいんじゃない」
と言っていたわけです。
どうしてでしょう。
それは、教室現場からの叫びです。
「いや。無理でしょ。前の学年に習った漢字ですよ!」
「日常的にテストするのは新しく習う漢字だし、前の学年のテストって、いつやれって言うの?」
そういう叫びですね。
はっきり言って、これは教育公務員として言ってはイケナイ内容です。
学習指導要領に書いてあることは最低基準ですから守らねばなりません。
でも、現実には難しいことがあるのです。
どうして難しいのか?
目の前の子どもの「自己肯定感」を大切にしたいからです。
新出漢字は授業の中で練習しますよね。
練習したらテストしたいじゃないですか(先生も子どもも)。
そして、「やった!書けた!」「100点取った!」とやりたいじゃないですか。
教室現場は「漸次書ければいい」というのと違うんです。
今、書けるようにさせたいんです。
自信を持たせたいんです。
練習もせずに抜き打ち的に前の学年の漢字を出して、
「前に習っただろ!」「忘れたのか!」とはやりたくないわけです。
しかし、法律的には前の学年の漢字を書けるようにさせなければいけない。
だから50問テストみたいなものもテストに付いてる。
そういう時は、動画の中で吉田先生が言われているように、
抜き打ちではなく、「これが出ます」と教えて、練習時間を保障して、テストを実施する。
そういう配慮が必要なわけです。
法律も守りますが、子どもの「自己肯定感」も守りたい。
それが現場の教師なのです。

4.まとめ
(1)心配しないこと
親の心配することじゃない!
子どもの自己肯定感を下げない!
(2)LDには注意
子どもが「今」困っているとしたら急ぎの支援は必要!
子どもの自己肯定感を下げない!
(3)学校教育の不思議
学校には不思議がいっぱいあります!
現場の教師はその不思議と格闘しているのです!
子どもの自己肯定感を下げないために。


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