講座495 「しつけ」っている?

先日、北海道の北見市で「1000本ノック!」という子育て相談会に参加しました。

講師の二人が3時間ぶっ続けで子育ての相談に答えるというイベントです。

まさに「1000本ノック!」でした。

今回はこの時に感じたことを一つだけお伝えします。

 目 次
1.教育相談1000本ノック!
2.幼児が牛乳をこぼした場合
3.その対応方法
4.本当に必要な「しつけ」

1.教育相談1000本ノック!

講師は美幌を拠点にフリースクール「ゆめとこスクール」を運営する佐々木勇貴さん(どろんこさん)と私です。

実際にぶつけられた質問は50くらいでしたが、最後の質問に答え終わったのが16時ぴったりで、まさに「ノック」でした。

その中に私が「ハッ」となった質問がありました。

この質問を受けた時に、どうしてハッとしたかと言いますと、

そうか!子育てをされている方の中には、
「しつけ」は《しなければならない》と考えている方がいるものなのだ!

私はこのことを忘れていたのです。

なぜ忘れていたかと言いますと、「しつけ」をするという発想が私には皆無だからです。

でも、世間では親は「しつけ」をするもの、しなければならないものだという考え方があります。

私は無いのです。

どろんこさんも私と同じ考えでした。

ですから私はこう答えました。

「それでいいと思います」(「ポイしないでね」と言う程度)

2.幼児が牛乳をこぼした場合

たとえば、2歳児が食事中にコップの牛乳をこぼしてしまった時のことを考えてみましょう。

その場面で、親として、どんな言葉をかけますか?

私なら、「あ、こぼしちゃったね」くらいだと思います。

しかし、《しつけをしなければ》と考える方の中には、こんな言葉を言う人がいるはずです。

「なんでこぼしたの!『ごめんなさい』は?」

これは多分、《こぼさないで食べる》ということを教える「しつけ」なのだと思います。

あるいは、《ダメなことをした場合は謝る》という「しつけ」なのかもしれません。

背景には《人に迷惑をかけたら謝る》という「しつけ」が存在しているのかもしれません。

いずれにしても、私はしません。

理由は3つあります。

理由➊ 幼児の脳は未発達だから

テーブルに置いてあるコップに手を伸ばしてつかむという動作は意外と難しいのです。

目は、コップの位置までの距離を推測し、

手は、その推測が正しいかどうかを判断しながら近づいていきます。

その制御は、小脳と大脳の間における情報交換で行います。

さらに、うまくコップに手が届いたとしても、コップの中身をこぼさないように口元まで運ぶ動きはもっと難しくなります。

ですから、2歳児なら上手に飲めなくても仕方ありません。

そういう発達段階なのですから、「なんでこぼしたの!」と言っても仕方ありません。

「成長途中なんです」としか言いようがありません。

小脳の完成は6~8歳くらいまで待たなければなりませんので、それまでは《あり得ること》です。

だからと言って、親がコップを持って飲ませることばかりしていると発達が遅れてしまいます。

《まかせる》ということは必要です。

こぼすことを想定して任せるわけですから、「なんでこぼしたの!」という叱責はあり得ないわけです。

理由➋ 「謝る」意味をまだ理解できないから

「ごめんなさい」を言わせるには《相手に迷惑をかけてしまった》ということを理解させる必要があります。

《相手が困っている》とか、《お母さんに迷惑をかけてしまった》というように、他者の気持ちを想像する必要があります。

つまり、「一次の心の理論」です。

これができるようになるのは4歳くらいです。(講座300 思いやりを育てる方法(中編)

ですから、「ごめんんさい」を言わせても、その意味を理解して次から自主的に言えるようになることは期待できません。

もし、どうしてもそういう「しつけ」をしたい場合には、それは《形として教える》と割り切った方がいいでしょう。

でも、「ごめんなさい」は形として教える行動ではないと私は思います。

形として教えるべき「しつけ」は、森信三が提唱された「しつけ三原則」だけでよいと思います。

このことは、どろんこさんも私と同じ考えでした。

理由➌ イヤイヤ期のせいかもしれないから

2歳と言えば「イヤイヤ期」のど真ん中です。

もしかすると、わざと、牛乳をこぼしたのかもしれません。

手で払いのけるように牛乳をこぼした時は「わざと」です。

この場合は気持ちがイライラしているのです。

どうしてイライラするのかと言いますと、コップをつかむことに不安を感じていたり、自分でも自分の気持ちが制御できなくて無意識にそういう行動に出たりするからです。

これも脳の制御機能が未発達だから仕方ありません。

それがイヤイヤ期です。

また、払いのけるのではなく、明らかにコップを逆さまにしてわざと中身をこぼす場合もあります。

この場合は好奇心です。

コントロール能力よりも好奇心の方が強く出てしまうのもイヤイヤ期の特徴です。

これもそういう時期ですので仕方ありません。

ですから「なんでこぼしたの!」とは言いません。

理由➊ 幼児の脳は未発達だから
理由➋ 「謝る」意味をまだ理解できないから
理由➌ イヤイヤ期のせいかもしれないから

このようなことが理解できるので、《しつけなければならない》とは考えないわけです。

3.その対応方法

ここで、もう一度最初の質問を見てみましょう。

この「ごはんポイ」は、イヤイヤ期における「わざと」の行動かもしれませんね。

このような場合の対応方法は2つあります。

対応方法➊ 行動だけに焦点をあてて短く注意する

たとえ「わざと」であっても、その子が悪いわけではありません。

ですから叱責はタブーです。

しかし、だからと言って、何も言わないわけにもいきません。

黙って見ているのは不自然ですし、親が我慢して何も言わないのはストレスです。

ですからこのような場合は、その行動について短く注意をします。

「ポイしないでね」

これは最高の対応です。

「なんでこぼしたの!『ごめんなさい』は?」と比べてみてください。

これは叱責です。

「ポイしないでね」は注意です。

行動だけに焦点をあてた最短の注意です。

対応方法➋ 理由を語る

3歳くらいですと、少し長めの説明も聞いて理解できるでしょう。

「飲み物は《ダイジダイジ》だからこぼさないようにしてね」とか、

「お母さん困っちゃうからこぼさないようにしてね」などという理由を語って聞かせる方法もあります。

これは、お子さんの状況にもよりますし、親に余裕がある時でしょうかね。

4.本当に必要な「しつけ」

これは講師のどろんこさんと全く同じでした。

本当に必要な「しつけ」は三つだけでいい。

森信三の「しつけ三原則」です。

しかも、この三つのしつけ方は、ただ一つです。

親の背中でしつける

口で言うのではなく、

何も言わず、

親が黙って、その「三つ」をやり続ける。

それだけです。

それしかありません。

そして、それで必ず身につきます。

詳しくは、講座222「花の咲かせ方」をご覧ください。

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. 粟津理子 より:

    親が躾をしなければいけないと思うのは、おそらく親が周りの目に怯えていることも一つの要因では?と感じました。
    以前NHKラジオで、子育てママは子育てに関して誰からもフィードバックがないので自己肯定感が下がりやすいと聞いたことがあります。
    親は周りから子どもが褒められることで自分の子育ては合っているんだと思える。
    子どもが粗相をしたら、周りから親は何をしているんだと思われるのでは…という思考が無意識にあるのかな?と思いました。

    • 水野 正司 より:

      ほんとにそう思います。
      認めてもらえる環境をもっとつくりたいです!
      同じような環境だけだはなく、
      異なった立場の人からの評価が必要だと思います。

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