講座419 保育所が増えると子どもに悪影響?
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2.日本にも差はあった!
3.「保育の質」が問われている
4.スウェーデンの「1歳半神話」
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1.保育所が増えると子どもに悪影響?
これは8月31日の朝日新聞デジタルの記事の見出しです。
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有料記事ですので無料の部分だけ紹介させていただきます。
日本で幼児教育・保育の無償化が始まった2019年から遡(さかのぼ)ること22年。
1997年にカナダのケベック州で保育所利用料が大幅に引き下げられた。
この結果、保育所の利用者は増加し、就労する母親が増加したという。
子供への影響はどうか。最新の研究によれば、利用料引き下げによる保育所利用の増加は、子供らが10~20代になった後の非認知能力、健康、犯罪関与などに負の影響があったという。特に男子に攻撃性や多動の問題が顕著だった。
なぜこのような結果になったのか今後の研究が待たれるところだが、有力な仮説の一つが保育所増加に伴う保育の質の低下である。(出典:朝日新聞デジタル)
要するに、保育所の利用者が増加したら、その子たちが大人になった時に「負の影響」があったという報告です。
《負の影響》
・非認知能力
・健康
・犯罪関与
・攻撃性や多動の問題(特に男子)
この記事のもとになっているのは、令和4年9月13日に内閣官房で行われた第6回「こども政策の推進に係る有識者会議」です。
この会議で構成員の一人である慶應義塾大学の中室牧子教授が次の資料を提出しました。
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この教訓のポイントはここです。
「保育の質」は長期にわたって影響する
このように断言できるのは、効果を計測しているからなんです。
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知りませんでした。
「保育の質」って評価できるんですね。
次の4つのスケールが有名らしいです。
ケベック州ではこの中の「保育環境評価スケール」を用いたというわけです。
この「保育環境評価スケール(ECERS)」というのはどんなものかといいますと、
「空間と家具」「養護」「言葉と文字」「活動」「相互関係」「保育の構造」という6つの環境の下に全部で35の評価項目があって、その各項目がそれぞれ10前後の指標で構成されているというめっちゃ細かい評価スケールです。
たとえば、項目21の「ごっこ遊び」には次のような指標があります。
①2人の子どもが楽しく遊べるようなごっこ遊びのための遊具 / 教材や家具がない。
②ほとんどのごっこ遊びのための遊具 / 教材が壊れていたり,不揃いであったり,使えない状態であったりする。
③保育者が,問題行動以外にはごっこ遊びをしている子どもを無視している。
④観察時間中,最低 25 分はごっこ遊びのための遊具 / 教材が使えて,子どもは家族ごっこをして遊ぶことができる。
⑤保育者が,子どものごっこ遊びにある程度応答している。
⑥保育者の関わりは肯定的あるいは自然なものである。
⑦人形,子どもサイズの家具,おもちゃの食べ物,ままごと道具,男の子・女の子用の衣装など,量も種類も多いごっこ遊びのための遊具 / 教材がある。
⑧ごっこ遊びの活動センターがあり,観察時間中,遊具 / 教材で最低1時間は遊べる。
⑨保育者は,子どもが遊んでいるときに遊びに加わるが主導するのではなく,会話を交わしている。
⑩ごっこ遊びの中に多様性を表す例が少なくとも4つある。
⑪保育者が,子どもにとって意味のあるやり方で,ごっこ遊びの中の文字や数字について子どもと話す。
(出典:「諸外国の評価スケールは日本にどのように生かされるか」埋橋玲子)
すごいですよね。
「ごっこ遊び」ひとつでこれだけのチェック項目があるわけです。
これは保育士にとっては大変かも知れませんが、逆に「何が重要か」がはっきりしているので、このスケールに則って保育をしていれば、「保育の質」が保障されますよね。
親にとってはありがたい話です。
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2.日本にも差はあった!
で、中室さんたちは、この保育スケールを用いて日本の保育所でも調査をしたわけです。
その結果がこれです。
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当たり前の結果が出ました。
(1)保育所によって「保育の質」に差がある
(2)保育所内にも「保育の質」に差がある
保育所によっても違うし、保育士によっても違うということです。
当たり前でした。
これが日本の現状です。
「最低限の保育」とか、「一定の質」というものが保障されていないわけです。
学校と同じですね。
保育所の場合、保育料を支払って保育してもらっているので、余計にリアルです。
そして、小学校に上がった後の学力調査(小4時点)で有意な差が出ました。
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この結果は、次のことを予測しているわけです。
この後も、長期にわたって影響を与える可能性がある。
有識者会議での中室氏の提言を簡単にまとめるとこういうことです。
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3.「保育の質」が問われている
中室さんたちの報告は2022年です。
保育所は2018年4月1日から新しい「保育所保育指針」に基づいた保育をしているはずです。
それでも「保育の質」に差があるというのが実態です。
2018年から何が変わったのか振り返ってみましょう。
いくつかありますが、大きなポイントは次の2点です。
(1)2018年度から、保育所も「教育施設」になった
(2)2018年度から、幼稚園、こども園、保育所に共通の教育目標が設定された
ありましたね。
国が幼児教育に力を入れた時でした。
要するに「幼児教育の質」を高めようということでした。
しかし、中室さんたちの調査結果を見る限り、まだ「差」があるようですね。
幼児教育の中でも保育所は需要が多いのが現状です。
グラフからわかる通り、「教育」が専門の幼稚園利用者は減っています。
大雑把に言えば、「教育のニーズが減って保育のニーズが増えている」と言えます。
ますます「保育の質」が問われますね。
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4.スウェーデンの「1歳半神話」
講座76「『三歳児神話』の謎を解く!」で、世界各国の育児休暇について解説しました。
日本:「育児休暇」1歳まで(2023年時点では最大1歳2ヶ月まで)
フランス:「養育休暇」3歳まで
スウェーデン:「両親休暇」1歳半まで
イギリス:「育児休暇」5歳まで
ドイツ:「両親休暇」3歳まで
アメリカ:「家族休暇」12週間
(澁井展子『乳児期の親と子の絆をめぐって』p.36)
私が注目したのはスウェーデンです。
数字の上では「1歳半まで」となっていますが、考え方が戦略的です。
明治大学の鈴木賢志教授によると次の特徴があります。
①0歳児保育が存在しない
②1歳半以降になると9割以上の家庭が保育所に預ける
③「預けるのはかわいそう」というマイナスイメージがない
④「保育は教育」「教育はプロに任せる」という考え方がある
(「日本の”三歳児神話”はなぜなくならないか」PRESIDENT WOMAN 2019.06.12)
0歳のうちは預けない。
夫婦二人で面倒を見る。
しかし、1歳半になったら二人とも復帰する。
「預けるのはかわいそう」というマイナスイメージがない!
「保育は教育」「教育はプロに任せる」という考え方がある!
ハッキリしています。
これだとwin-win-winですよね。
この背景には《1歳半までは親が愛着形成を図るべき》という文化があるそうです。
そして国は「就業前教育は国家の競争力を高めるためにある」と宣言しているというのです。
乳幼児期の教育がシステム化されているわけです。
ちなみに、こんな調査結果もあります。(「スウェーデンから見る日本」日本経済新聞 電子版 2014/5/23)
⑤女性の就業率80%超え
⑥夏休みに宿題なし
ハッキリしてますね!
大変興味深い内容でした。娘は6カ月の時から保育所に通い、少し無理があったと思っています。1歳前後は、体調を崩しやすかったです。1歳半になると卒乳し、比較的落ち着いて通えたように思います。1歳半にうなずきました。
いつもありがとう。(^^)/