講座418 「暑さに強い子」の育て方

 目 次
1.汗には3種類ある!
2.「臭い汗」と「臭くない汗」
3.「働く汗腺」と「働かない汗腺」
4.「暑熱馴化」とは
5.熱中症の発生実態
6.まとめ(意外な事実)

1.汗には3種類ある!

汗には3つの種類があるってご存知でしたか?

①温熱性発汗(thermal sweating)
②精神性発汗(mental sweating)
③味覚性発汗(gustatory sweating)

漢字を読めば「そうか!」と分かりますよね。

②の精神性発汗は、緊張などによるストレス発汗です。

これは手のひらやわきの下に発汗します。

③の味覚性発汗は、辛いものを食べた時に出る汗です。

顔や頭に出ます。

そして、①の温熱性発汗が気温の上昇や運動などによって出る汗です。

今回はこの温熱性発汗について解説します。

2.「臭い汗」と「臭くない汗」

汗を作る器官は「汗腺」です。

汗腺には2種類あります。

エクリン腺とアポクリン腺です。

エクリン腺は全身に分布して、気温の上昇や運動などによって汗を作り出します。

この汗は、約99 %が水という「薄い汗」で、ほとんど臭いません。

一方、アポクリン腺は、わきの下、耳の入り口、乳輪、肛門周囲などの毛幹の近くにあります。

この汗は、分泌細胞を含んだ「濃い汗」で、体臭に関係します。

ただし、全身にあるエクリン腺から出る「薄い汗」でも、放っておくと細菌が付着して臭いの原因になります。

3.「働く汗腺」と「働かない汗腺」

全身に分布して「薄い汗」を出すエクリン腺ですが、全部が全部働くわけではありません。

エクリン腺は、全身に200~500万個あるそうですが、そのすべてが働くわけではありません。

働くエクリン汗腺のことを「能動汗腺」と言いますが、これは人種や成育環境によって変わって来ます。

これを見てください。

この表は、じっくり見なければよくわかりませんよ!

日本人の平均は228万個です。

日本で生まれ育って、タイやフィリピンに行っても、能動汗腺数はほとんど変わりません。

しかし、タイヤフィリピンで生まれ育ってから日本へ来た人は能動汗腺数が多いですよね。

そして、寒い地域に住む人は少ない。

これはつまり、

能動汗腺数は生後1~2年の間に暑い環境で暮らしたかどうかで決まる

ということなんだそうです。

うちの孫は今1歳ですが、この暑さの中でも外遊びが大好きで連日汗をかいています。

先日は暑さの中でジャガイモ掘りをしていました。

3.汗腺発達の敏感期

ネットで調べると、能動汗腺の数は「3歳で決まる」という情報が多いようです。

まあ、0、1、2歳での発汗が大事であることは間違いないと思います。

心理学には「敏感期」と「臨界期」という言葉があります。

この2つを使って説明すると、

能動汗腺(働く汗腺)の数は、0~2歳が敏感期で、3歳までが臨界期

とまとめられそうです。

能動汗腺の数が多いと、どんな「いいこと」があるのか。

①暑い日でも体温が上がりすぎないように調節する能力が高い
②過剰な塩分を除去する機能が高い
③肌の保湿作用が高い
④指先の摩擦力が高い
⑤感染防御に関与する免疫菌が多くなる
⑥やけどなどの傷が治りやすい
⑦微生物を皮膚表面から洗い流しやすい

(出典:ドクターズオーガニック「汗腺」

こんなに「いいこと」があるのですね。

にもかかわらず!

近年エアコンの普及や運動量の低下により発汗の必要が低下したため、
子供の汗腺は世代が若くなるに従い少なくなっており、
今や半分くらいではないかと予測されています。
体温調節ができなくなってきているということです。
(出典:ドクターズオーガニック「汗腺」

乳幼児期に汗をかくことの大切を再確認できました。

4.「暑熱馴化」とは

ただし、3歳を過ぎてしまっても暑さに強い子は育てられます。

人には「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」という能力があるからです。

暑熱馴化とは、「体が暑さに慣れること」です。

同じ人でも、夏の始まりにいきなり35℃を経験すると、慣れていないので(暑熱馴化されていないので)熱中症のリスクは高まります。

また、普段から運動をしていて汗をかきまくっている人やサウナが好きで汗をかきまくっている人は、暑熱馴化されているので、熱中症のリスクは低くなります。

つまり、人は暑さ対策として「慣れ」をつくることができるのです。

中村先生ら(2009)の実験によると、運動なしで、日常生活に近い状態で約 10 日間の暑い日を経験しただけで暑熱順化が発現したそうです。

ただし、このような短期間の「慣れ」は、消失するのも同じくらい早いそうです。

私も今は暑さに慣れて来たようで30℃を下回れば「涼しい」と感じられるようになりました。(^^)/

5.熱中症の発生実態

これは年齢別の熱中症死亡数です。

やはり、高齢者の多いのですが、子供たちで気をつける部分も読み取れます。

一つは、「10代の運動による熱中症死亡」です。

もう一つは、「乳児の熱中症死亡」です。

乳児の場合は「車の中の置き去り」がよくニュースになりますよね。

悲しいことです。

車内にいる赤ちゃんのことを考えると胸が痛みます。

もう一つの「10代の運動」を詳しく見てみましょう。

高校生の男子が多いです。

中でも高1の男子です。

これは学校管理下での死亡事故ですから、恐らく「部活中」が多いのではないかと予想されます。

そして、高1ということを考えると、部活を始めて間もない、まだ暑熱馴化が出来ていない状態での運動だったのではないかと予想されます。

なお、小学生での数が少ないのは「学校管理下」の調査であってスポーツ少年団などの活動が含まれていないからだという説明があります。

では次に「発生時期」と「発生時刻」を見てみましょう。

意外なことに一番多いのは「7月下旬」です。

8月より多いのは暑熱馴化が出来ていないからだと思われます。

そして、発生時刻です。

これも意外で、午後よりも午前中の「10~12時」が一番高くなっています。

もちろん午後からの総数は多いのですが、午前中だからと言って安心はできないということがわかります。

最後に「肥満と熱中症」について触れておきます。

事故例での体力や体調など個人の要因については、資料だけでは不明な点が多いのですが、1990~2017年の事故例のうち身長、体重の記載があった45例の体格的特徴をみてみると標準体重から20%超過している肥満者は69%にのぼり、熱中症死亡事故に肥満者が多いことがわかります。肥満の人は熱中症を起こしやすく、30分のランニングで死亡した例もあり、特別の配慮が必要です。(出典:JSPO(公益財団法人日本スポーツ協会)

6.まとめ

「暑さに強い子」を育てるには乳幼児期の発汗が大切です。

乳幼児自身には、そのことを理解することが難しいですから、保護者が意図的に育てる必要があります。

私もそうですが、大人は涼しい所で過ごしたいですよね。

でも、短時間でいいので、外遊びも大切にしましょう!

それが我が子の財産になります。

学校の先生向けには、授業用のYouTube動画もあります。

最後に汗に関する意外なネタを!

汗は血液から作られる!?

流れる汗はムダな汗!?

①発汗作用は運動時や高温化において体温が上昇するのに対抗した生理学的反応!

②発汗は体温調整を行う上で最も効果の期待できる手段!

③体が熱いと感じると、自律神経の交感神経が活発化しエクリン汗腺に体温を下げるように指示が出されます!

④指示されたエクリン汗腺は血管から血液の成分を受け取って濾過します!

⑤そして、汗の成分だけを体外に放出することで、その汗と一緒に表面の熱をにがすことで体温を下げるようにしてます!

⑥蒸発せずに体表面からポタポタと滴り落ちてしまった汗は本来の目的を達成できないムダな汗となります。

(出典:ドクターズオーガニック「汗腺」

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. タミー より:

    0歳の我が子が汗をかいていると心配で、すぐエアコンをつけて快適にしていました。
    でも汗をかくことも必要なのですね。
    かきすぎも危ない。
    汗をかかないのも良くない。
    何でも真ん中が良いですね。

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