講座346 「正しい対応」は一つ

ある日のことです。

2歳のお子さんが、ベランダからまだ青いイチゴを勝手にもいで来ました。

お母さんにイチゴを見せて「これ大きい!」「これ小さい!」と言っています。

それはその子が初めて「大小」を学んだ瞬間でした。

しかし、イチゴを勝手に取って来たのはいけないことです。

またやってしまう可能性もあります。

こうした時にどのように声をかけたら良いでしょうか?

A:イチゴを勝手に取って来たことを叱るだけ

B:大きい・小さいを言えたことをほめるだけ

C:大きい・小さいを言えたことをほめて、でもイチゴを取ったことはダメだったと伝える

D:イチゴを取ったことはダメだったとして、大きい・小さいを言えたことはほめる

「正しい対応」は一つです。

どれか一つに決めてください。

決めましたか?

1.読解力が要求される

多分、多くのお母さん方は次のように考えると思います。

イチゴを勝手に取って来るのは困る。しかもまだ青いイチゴだし。
・でも、「大きい・小さい」を言えたのはほめてあげたい。初めて言えたし。

そこで、多くの母親は両方のことを口にするのではないでしょうか?

選択肢で言えば、CとDです。

CとDの違いは、どちらを先に言うかです。

Cは、最初にほめて、最後に叱る。

Dは、最初に叱って、最後にほめる。

これ、どちらが効果的だと思いますか?

心理学には「初頭効果」と「終末効果」という言葉があります。

初頭効果とは、最初の刺激が記憶に残りやすいとする考え方です。

「第一印象が大事!」という考え方です。

それに対して、終末効果というのは、最後の刺激が記憶に残りやすいとする考え方です。

「別れ際が大事!」という考え方です。

で、どっちが効果的かと言いますと、両方なんです。

それぞれに効果があって、要するに受け取り側の問題なんです。

では、2歳の子は次の二つをどう受け取ると思いますか?

C:よく言えたね!でもイチゴを取ったらダメ!

D:イチゴを取ったらダメ!でも「大きい・小さい」は言えたね!

これは「ほめる」と「叱る」はどちらに効果があるかという問題です。

覚えていますか?

どちらに威力がありますか?

「叱る」ですよね。

人間は動物ですから本能的に「生きること」「自分を守ること」が優先されます。

ですから、「叱る」には即効性があります。

親が叱ると、子どもはすぐに反応します。

怒鳴ったり、怖そうな態度をとれば強く記憶に保持されます。

それだけではなく、「ダメ」という否定語にも強く反応します。

Cであっても、Dであっても、強く残るのは「ダメ」という言葉です。

信州大学医学部の本田秀夫教授は次のように言います。

2歳のお子さんに「ほめる」ということと「叱る」ということをいっぺんに教えるのは無理です。(2022年11月26日・丸子中央病院市民公開講座動画)

私も無理だと思います。

大人でも考え物です。

よほど論理的に考えられないと正しく受け取ることはできないでしょう。

あの人は努力家ですが、浪費癖があります。

こう言われると終末効果に引っ掛かって悪い印象を持ちませんか?

でも、冷静に考えると「努力家」なんです。

この例のように、二つの内容を伝えるとバイアス(偏り)が生まれてしまします。

受け取り側に、それなりの読解力が要求されるのです。

ですから、幼児や児童に対して、いっぺんに二つの内容を伝えるのは効果的とは言えません。

2.「正しい対応」はある

となると、残るは二つです。

A:イチゴを勝手に取って来たことを叱るだけ

B:大きい・小さいを言えたことをほめるだけ

これはもう、どちらがいいかわかりますよね。

「正しい対応」と言えるのはBです。

本田教授は動画の中で次のように解説しています。

ダメなことをやるのは簡単。いつでも出来る。叱れるとすぐに変化する。
しかし、今まで出来なかったことをやれたというのは貴重な出来事。ほめておかないと意欲が続かないかも知れない。
(要約・水野)

だから、ほめることが大事なわけです。

そして、叱ると混乱する。効果はない。防衛という即効性が働くだけ。

従って、このような時は「ほめるだけ」が正しい対応というわけです。

3.まとめ

どうだったでしょうか。

私たちは「ほめるだけ」がなかなか出来ないものです。

どうしても、ダメな行動を何とかしたいという方向に考えがちです。

しかも、「叱る」は即効性がありますからね。

子どもが自分の目の前で「うん。わかった」と言ったら、伝わった気がします。

でも、その時にほめていたとしても、ほめられたことの方は伝わっていない可能性が高いです。

子どもの心は防衛反応の最中ですから。

B:大きい・小さいを言えたことをほめるだけ

子ども:「ママ~!大きいイチゴと、小さいイチゴ見つけた!」

母親:「え~!ホントだあ!『大きい』と『小さい』だねえー!」

母親:(指さしながら)「大きい!小さい!、大きい!小さい!」と喜ぶ。

こんな感じですね。

【年代別 発達障害の支援】幼児期・学童期の支援
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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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7件のフィードバック

  1. つむちゃんのお母さん より:

    大事なことです。
    2歳ですからね。褒めるだけでいいんですよね。
    とは思いつつ、私は言っちゃうかもしれません。「そうきましたか~~~」と心の中で唱えて、仏になれるように日々勉強を積み重ねていきたいと思いました✨

    • 水野 正司 より:

      頑張ったり、ポジティブに考えたりしなくても自然にできますよ!だってもう理解したから!

  2. タミー より:

    分かりやすい説明をありがとうございます。
    是非その後、青くて大きいいちごと青くて小さいいちごを子どもに食べてもらいたいと思いました!

  3. さつきママ より:

    つい二つ言ってしまうなぁと気づくことができました!
    欲張らずにどっちが大事か、選択します!
    現場でも家庭でも^_^

  1. 2023年1月19日

    […] 講座346で、まだ青いイチゴをもいで来てしまった女の子の話をしました。 […]

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