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講座327 給食で「黙食」がなくなった?

投稿日:

子どもに黙食をさせる。

これはツライなあと思っていました。

食事って楽しいものですからね。

それに我慢できないのが子どもですからね。

学校の給食時間はどうなってるんだろうと、ずっと心配でした。

そしたらやっと通知が出ましたね。

NHKは次のように報道しました。

子どもたちの給食、新型コロナ対策の基本的対処方針で「黙食」の記述がなくなったことをうけ、文部科学省は給食の時の過ごし方について、適切な対策を行えば会話は可能だとする通知を都道府県の教育委員会などに出しました。「給食の「黙食」どうなる?文部科学省が通知『適切な対策で会話可』」NHK首都圏ナビ)

みなさんはこのニュースをどのように読解したでしょうか?

今回はこのことを解説します。

 目 次
1.私が心配していたこと
2.学級崩壊への道
3.原文にあたる
4.メディア読解

1.私が心配していたこと

感染が広がることは心配です。

でも、私は次のことも心配していました。

「ルールなんて無視していいんだ」と学習してしまうこと

担任の先生が「給食中はしゃべっちゃいけません」と指導しているにもかかわらず、

それを無視してしゃべってしまう子が出ると思うんです。

100%シーンとさせるなんて無理ですよね。

実現してたら不気味ですよね。

わかっていても、どうしてもしゃべっちゃうのが自然だと思うのです。

そういう時に担任の先生はどうしていたのでしょう?

徹底的に管理する先生

これはですね。

仮に実現できたとしても弊害が起こります。

先生の見ていない所で悪いことをする子が出て来ます。

給食中に、先生に見つからないように、こっそりと話す子です。

それで成功したら「先生なんてちょろい!」「またやっちゃえ!」となって、

「見つかりさえしなければやってもいい」という暗黙の了解が広がります。

かくして学級は荒れます。

学級が荒れるだけならまだいいのです。

「見つからなければいい」という習慣は形を変えて実行されます。

万引きをする、道路にごみを捨てる、いじめ…。

これが「管理し過ぎ」の弊害です。

しかし、その逆もダメです。

ルール無視を放置してしまう先生

子どもの前で「給食中にしゃべるななんて無理だよねー」と言って、

自ら学校のルールを破ってしまう先生です。

びっくりする話ですが、たまにいます。

これも、

「ルールなんて無視していいんだ」と学習してしまうこと

です。

しかも、先生が率先して無視してしまうわけですから最悪です。

そして、言うまでもなく感染を広げる危険性があります。

影響はほかにもありますよ。

ちゃんと守っている子が馬鹿を見る

「私はちゃんと守ってるのに!」という感情を持つ子が生まれます。

当然ですよね。

これも学級が荒れる要因です。

まだあります。

ルールを守らなかったことで自分を責める子が生まれる

みんなが話をしたので、自分も会話をしてしまう子が出ます。

本当はダメだと分かっているのにルールを守れなかったわけです。

そういう子の中には自分を責めてしまう子がいます。

また、意識していないのに脳が自分を責めてしまうこともあります。

「私はダメなことをしている」(してしまった)

意識していないうちに脳は判断するものなのです。

このように放置放任は脳の健全な発達を阻害します。

以上のことから、「徹底管理」も「放置放任」も悪い事だらけです。

2.学級崩壊への道

では、どうすればいいのでしょう。

私なら次のように指導したと思います。

低学年なら、「給食中は大きな声で話さないでね」。

中学年なら、「給食中は大声で話さないように気をつけましょう」。

高学年なら、「給食中は飛沫を飛ばさないように過ごしてください」。

とにかく徹底管理はしないように言葉を選びます。

駄目なのは「大きな声」ですから。

それ以外は許容できる言葉を意図的に用います。

「できるだけ」というような曖昧な言葉を使うのもいいですね。

教育の場で「黙食」という言葉を使ってしまうと「しゃべっちゃ駄目」ということですから、教師はそれを守らせなければなりません。

これを専門用語で「統率力」と言います。

使う言葉に信頼のおけない教師のクラスは崩壊するのです。

3.原文にあたる

言葉にこだわるのは国語力の基本中の基本です。

そこは徹底すべき所です。

文部科学省が過去に出していた通知を読んでみましょう。

給食等の食事をとる際には、食事の前後の手洗いを徹底すること。会食に当たっては、飛沫を飛ばさないよう、例えば、机を向かい合わせにしない、大声での会話を控えるなどの対応をとること。「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を踏まえた小学校、中学校及び高等学校等における新型コロナウイルス感染症への対応に関する留意事項について(通知)」2文科初第1462号令和3年1月8日)

文科省の通知には「黙食」という言葉は最初から出ていませんでした。

出ていたのは、例としての「大声での会話を控える」です。

「控える」という言葉は、動作などが度を越えないように遠慮するという意味です。

しかも、控えるのは「大声」です。

飛沫が飛ばないように小さい声で話すことまでは禁止していません。

読めばわかることです。

もし、子どもたちにルールを示すのであれば、このように原文を示して、「飛沫を飛ばさない」という根本目的と、「そのためにどうしたらいいか」という場面に応じた具体的な方法を、学年に応じて自ら考えさせるのが本来の教育だと思います。

もし、そのようなことをせずに「給食中は黙食です」という安易な指示で済ませていた学校があったとしたら、それは考える力を育てていなかったと言えるでしょう。

再度言いますが、文科省の通知には「黙食」という言葉は最初から出ていなかったのですから。

ちなみに、「黙食」という言葉の出処は、新型コロナウイルス感染症対策本部が出した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の「二」の「(5)」の「1)」です。

1)国民への周知等
国民に対し、基本的な感染対策を徹底することに加え、飲食はなるべく少人数で黙食を基本とし、会話をする際にはマスクの着用を徹底すること「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」

「二」というのは「全般的な方針」が書かれている章です。

(5)は「オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策」で、

1)は「国民への周知等」という項目です。

ここで、「子供も国民だろう」という安易な解釈をしてはなりません。

「2)」に別項目として、「学校等」とあるのです。

2)学校等
「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」等を踏まえた対応を基本(とする)

学校には別なマニュアルがあるのです。

そのマニュアルにはこう書いてあります。

5.給食等の食事をとる場面
児童生徒等全員の食事の前後の手洗いを徹底してください。会食に当たっては、飛沫を飛ばさないよう、例えば、机を向かい合わせにしない、大声での会話を控えるなどの対応が必要です。
「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」

「黙食」という言葉は出て来ません。

そして、これが文科省の通知の元になっているとわかるはずです。

文章を読むというのはこういうことです。

これを「読解」と言います。

4.メディア読解

こうやって読むと、文科省は初めから「黙食しましょう」とは言ってないことがわかります。

皆さんは初めからわかっていましたか?

もし、わかっていたとしたら、NHKのニュース報道を「おかしい」と思ったはずです。

もう一度出しますよ。

子どもたちの給食、新型コロナ対策の基本的対処方針で「黙食」の記述がなくなったことをうけ、文部科学省は給食の時の過ごし方について、適切な対策を行えば会話は可能だとする通知を都道府県の教育委員会などに出しました。「給食の『黙食』どうなる?文部科学省が通知『適切な対策で会話可』」NHK首都圏ナビ)

どうですか?

おかしいですよね。

報道タイトルにこうあります。

給食の「黙食」どうなる?

これなら学校の給食では黙食を指導していると受け取られますよね。

でも、これはタイトルです。

タイトルは短くする必要があるので仕方ないと言えばそれまでです。

本文まで読めばちゃんと次のように書いてあります。

通知では、基本的対処方針の変更について説明するとともに、文部科学省のマニュアルでも必ずしも「黙食」を求めていないことを改めて伝えています。

最初から求めていなかったことを「改めて」通知したわけです。

NHK記者はわかっていてタイトルを短くしたわけです。

でも、事情を知らない人が読んだら誤解するかも知れませんよね。

こういうのが放送法ギリギリの表現と読解の関係です。

では最後に文部科学省の今回の通知を載せて終わります。

今般の変更前の基本的対処方針においては、「二(5)1)国民への周知等」として、「国民に対し、基本的な感染対策を徹底することに加え、飲食はなるべく少人数で黙食を基本とし、会話をする際にはマスクの着用を徹底すること(中略)等を促す。」とされていましたが、今般の変更により当該記述が削除されました。この点、文部科学省が作成する「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」においては、「会食に当たっては、飛沫を飛ばさないよう、例えば、机を向かい合わせにしない、大声での会話を控えるなどの対応が必要です。」等とし、従前から、必ず「黙食」とすることを求めてはいないところです。実際にも、一部の地域において行われているように、座席配置の工夫や適切な換気の確保等の措置を講じた上で、給食の時間において、児童生徒等の間で会話を行うことも可能ですので、 感染状況も踏まえつつ、地域の実情に応じた取組を御検討いただくよう、よろしくお願いします。「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の変更等について」令和4年11月29日)


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