講座238 「数字の読み方」と「数の数え方」

 目 次
1.基本型・その一
2.基本型・その二
3.それ以外はすべて応用
4.おまけ

1.基本型・その一

読んでみてください。

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10

多くの方は次のように読むと思われます。

イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ、キュウ、ジュウ

でも、「キュウ」を「ク」と読んだ方もいたはずです。

イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ、、ジュウ

これはどちらも正解です。

こうした読み方は「漢語系」と呼ばれるもので、いわゆる「音読み」に当たります。

小学校の時に「音読み」は片仮名で、「訓読み」は平仮名で表記してませんでしたか?

漢語系(音読み)

ですから、漢語系の読み方は「カタカナ」で書きました。

「9」の音読みは「キュウ」と「ク」の2種類がありますから、どちらでもよいわけです。

でも、時々、こんな風に読む子がいます。

イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、なな、ハチ、キュウ、ジュウ

いますよね。

でも、「7」の音読みは「シチ」だけで、「なな」は訓読みです。

基本法則から外れています。

同様に、これもダメです。

イチ、ニ、サン、よん、ゴ、ロク、なな、ハチ、キュウ、ジュウ

「4」の音読みは「シ」だけです。

「よん」は訓読みです。

ですから、幼児に「数字の読み方」を教える時には、漢語系が基本になります。

漢語系(音読み)

「いやいや!そんな細かいコト、どうでもいいでしょ!」

という方もいると思いますが、

ダメです!はじめは漢語系で正しく教えましょう!

なぜかというと、幼児期の言語獲得には相互排他性原理が働いているからです。

お母さんがクマのぬいぐるみの名前を「プーさん」と呼んでいたのに、お父さんが「クマさん」と呼んでいたら子どもは混乱します。

「一つのものに一つだけの言葉」(他は違うもにだと認識する)のが相互排他性原理です。

注意すべきなのは、単に違うものだと認識するというよりは、別物だと排除する意識が強まるので同じものだと認識できないという点にあります。

小学校にあがって2年生になった時に「かけ算九九」を習います。

「九九」の読み方は漢語系です。

 4の段

これは「シのだん」と読みます。

 7の段

これは「シチのだん」と読みます。

時々、これらを「よんのだん」とか「ななのだん」と読む先生がいますが、ここで混乱が生じます。

「シ」と「シチ」が似ているので頭の中で混乱するのです。

小さい時から「よん」と「なな」に親しみ過ぎていると、

「シ」と「シチ」に慣れずに「九九」で混乱します。

ですから最初は基本を教えるべきです。

復習します。

次の数字を正しく読んでみてください。

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10

これだけでも意識が違ってきますよね。

2.基本型・その二

数字の読み方にはもう一つ別の基本があります。

和語系(訓読み)です。

和語系(訓読み)

日本に漢字が伝わる以前からある日本の読み方です。

現代では、この読み方を使う人はほとんどいないと思います。

幼児に数字を読ませて、「ひ、ふ、み…」と読んだら、かなり渋いですよね。

ですから、これをそのまま教えることはしません。

その代わり、「つ」を付けた時に、この数え方を基本とします。

和語系の基本

この読み方を幼児に教えるのは今でも有効です。財産になります。

ところで、今回の講座のタイトルが何だったか覚えていますか?

「数字の読み方」と「数の数え方」

です。

私はここまで、この二つを意識的に使い分けて書いてきました。

気づいていましたか?

基本編・その一は「数字の読み方」です。

基本編・その二は「つ」を付けたことによって「数の数え方」になりました。

「1、2、3、4…」という数字は《数詞》と言います。

「一つ、二つ、三つ、四つ…」は《数詞+助数詞》となります。

幼児期に教える時の基本はこの二つです。

つまり、

数字の読み方

というように数字が読めることと、

数の数え方

というように数を数えられることの二つです。

3.それ以外はすべて応用

それ以外はすべて応用です。

もう一度書きますが、それ以外は、すべて、応用、です。

たとえば次の数字を読んでみてください。

10、9、8、7、6、5、4、3、2、1

逆唱です。

逆唱の時はこうなります。

ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ

漢語と和語が混ざるのです。

これを音読みだけで読もうとするとこうなります。

ジュウ、キュウ、ハチ、シチ、ロク、ゴ、、サン、ニ、イチ

読みづらいですよね。

読みづらいので交ぜたのです。

これを「和漢混淆(わかんこんこう)」と言います。

理由は単に読みづらいからです。

二つの基本を応用したのです。

日本人の柔軟さです。

こういう例は山ほどあります。

たとえば、次の数字を読んでみてください。

10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0

普通は、

ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ、ゼロ

となります。

これを、

ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ、レイ

と読んだ人はいないと思います。

これは、さっきの用語で言えば「和漢英混淆」です。

わかりやすく表記すればこうです。

ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ、ZERO

これも日本人の柔軟さだと思います。

こっちの方が読みやすいですし、カッコイイですよね。

0.1

でも、小数点がつくと、途端にまた「レイ」に戻ります。

これを「ゼロてんイチ」とは読みません。

0円

そして、「円」だとまた「ZERO」に戻ります。

これらはすべて応用なのです。

また、その言葉を使う人によっても使い方は分かれます。

職業(アナウンサーや駅員など)によっても違ってきます。

7時50分 20世紀 10種競技

アナウンサーであれば、これをどう読むかが放送用語委員会で決められています。

住んでいるいる地域によって違ってくるという研究結果もあります。(奈良大学研究紀要

~冊、~枚、~頭、~回、~条、~発、などなど。

応用範囲はとても広いわけです。

ですから、二つの基本以外は、すべて応用、と考えれば気が楽です。

4.おまけ

でも、ちょっと欲を出しておきましょう。

小学校一年生になると学校で「日付」を教えられます。

日付の読み方は幼児期にマスターしておくとお得だと思います。

基本は和語ですが、ちょっと特別ですよね。

でも、応用の中ではかなり日常的に使われる言葉なので覚えておいて損はないと思います。

最後に、昨日あった出来事。

三歳の男の子のお母さん・Mさんからの報告です。

4個を『しっこ』と言う笑
いち、に、さん、しー
と数えるからかな?

そうですね。

数字の読み方の基本が出来ている証拠です。

基本は「4=シ」ですから、それに「個」を付ければ「シッコ」です。

でも「個」をつけると数詞になりますからこの基本原則からは外れて「よんこ」で大丈夫です。

「読み方」と「数え方」の基本を確認して終わりにします。

数字の読み方(音読み)
数の数え方(訓読み)
この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. まき より:

    よんの段、ななの段と言ってしまっていました。
    混乱の原因になっていたのですね。
    初めて気付かされました。
    ありがとうございます。
    「何個ですか」「いくつですか」の問いに正しく答えられるような教育をしたいです。

    • 水野 正司 より:

      まきさん、コメントありがとうございます!
      数の数え方って難しいんですよね。
      「四の段」と言うときの「四」は数詞ですよね。
      だから「シ」でいいわけです。
      数え方じゃないわけです。

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