講座493 早教育と早期教育
孫は今、2歳3ヵ月です。
ちょうど「語彙爆発」の時期です。
確かに「爆発」しています。
孫の家には週2~3回の割合で通っていますので成長の様子がよくわかります。
それに、生まれた時から適切な子育てをしてきていますので、発達が順調です。
ジジイの私がどうして「適切な子育て」と言えるのかと言いますと、
娘、つまり孫の母親は私が持っている子育ての本をだいたい読んで知っているからです。
育児中なのによく読めるなと思うのですが、彼女の読書力は私以上です。
学力が高いのです。
知的好奇心が強く、勉強好きです。
では、彼女はどうしてそのように育ったのか?
それは、彼女に対して0歳の時から「早教育」をしていたからです。
2.脳には臨界期と敏感期がある
3.発達の仕方には順序がある
4.「遊び」の発達順序①(感覚遊び)
5.「遊び」の発達順序②(模倣遊び)
6.まとめ
1.「早教育」と「早期教育」は別物
「早教育」と「早期教育」は異なります。
「早期教育」には、《早期英才教育》とか《お受験向けの勉強》というようなニュアンスがあります。
それに対して「早教育」という言葉は別分野です。
世界で最初に我が子に対して「早教育」を実施したのが、記録の残る限り、今から約200年前のドイツの牧師・カール・ヴィッテです。
そして、その『カール・ヴィッテの教育』を日本に紹介したのが木村久一の『早教育と天才』、大正6年の本です。
この本の解説は、なんと玉川学園の創立者・小原國芳です。
そして、ソニーの創業者である井深大も著書『0歳・教育の最適時期』において「ヴィッテの教育」に触れています。
その父は田舎の一牧師でしたが、ひじょうに創見に富んだ人で、「赤子のときから適当な教育をしさえすれば、たいていの子どもはかならず非凡になる」と強く信じていました。当時は、才能はすべて遺伝だというのが普通の考えでしたから。父ヴィッテが極端な教育論を唱えるのに、教会の人びともみな、口をそろえて反対したそうです。それを彼は、「私のとるべき道は、みなさんに論より証拠を示すしかない。神が私に子どもをお授けになり、それが十人なみの普通の子であったなら、私はかならずその子を非凡に育てあげてお目にかけよう。これは私がずっと前から心に決めていることである」と宣言し、それを実行したのですから、驚くべき人物です。
父ヴィッテがどんな教育をし、息子がどんな人物になったかは本に譲ります。
立派に育ったことだけは間違いありません。
この「カール・ヴィッテ」→「木村久一」という早教育の流れは、鈴木慎一が提唱したバイオリンの鈴木メソッドに影響を与えて行きますが、
理解を誤れば、「早教育と訓練主義」(森 1997)への傾倒という問題を容易に引き起こしてしまう。(出典:「鈴木鎮一と才能教育――その形成史と本質の解明」久保絵里麻(2013))
と指摘されているように、いつの時代にも誤解が付き纏う考え方であるため、なかなかその本質は継承されないようです。
話を戻しますと、
私はカール・ヴィッテのような強い決意で娘の教育を行っていたわけではまったくなくて、
妻に、
「読み聞かせは0歳からがいいみたいだよ~」
「歌のカードを見せて歌ってあげるのもいいみたい!」
「フラッシュカードも買ったよ!」
と、ひたすら早教育をやってもらっただけでした。
それでも妻の《継続力》と《最適時期》のおかげで効果があり、娘は賢い子に育ちました。
2歳の時に童謡100曲をマスターしていましたし、小学校1年生の時の学力テストは100名くらいいる学年の中で2番。
その頃から私が購読していた教育雑誌なども読んで、担任の先生の授業を批判したりしていました。
そういう子だったので、読書力が高く、子育て関係の本は100冊以上読んでいると思います。
しかも、私は、《つまらない子育ての本はBOOKOFFに持って行く》ということをくり返してきましたから、
本棚にあるのは全部《いい本》ばかりです。
娘はそれを読んでいるわけで、子育てに関する考え方や方法は、私とだいたい同じであるはずなのです。
そして、それが今、孫に対して実施されているわけで、
《早教育の二巡目》《世代間伝達》というわけです。
2.脳には臨界期と敏感期がある
人間は、生きるために必要のない脳細胞を消失させます。
1歳になるまでに9割が消失します。
その反対に、生き残った神経細胞同士のつながり(ネットワーク)は増加します。
そのピークは1~8歳です。
簡単に言いますと、
早教育の基本①:脳の力は早い段階で決まる。
ということです。
有名なのは英会話の能力や絶対音感でしょう。
世界中の赤ちゃんは世界中にあるすべての言語を習得する能力を持っています。
でも、その力が「いらない」と判断されたなら、1歳までにその能力は消えます。
本来なら日本の赤ちゃんも「race(競走)」と「lace(ひも)」、「rice(米)」と「lice(シラミ)」を区別できます。
しかし、生活に必要がなければ、自分の国の言葉を覚える邪魔になるので消えてしまいます。
こうした知能を分類したのがガードナーのMI理論です。
前頭前野が完成するのは24歳ころだと言われていますが、その基礎となる知能にはそれぞれ臨界期があり、言語の発音であれば1歳まで、絶対音感であれば3歳前後など、《発達の最適期(敏感期)》が存在すると言われています。
【臨界期】その期間を外すと効果が激減する期間のこと
【敏感期】あることを身につけるのに最も効果的な期間のこと
その最適な時期に子どもの能力を育てるのが「早教育」における一つ目の特長です。
3.発達の仕方には順序がある
二つ目の特長はこれです。
早教育の基本②:発達の仕方には順序がある。
たとえば、愛着形成の順序だと大きく次の三つです。
①大人からの視線によって「人との二項関係」を築く(新生児期~)
②おもちゃによって「物との二項関係」を築く(5ヵ月頃~)
③共同注視によって「三項関係」を築く(1歳前後~)
様々な機能にこうした「順序」があります。
4.「遊び」の発達順序①(感覚遊び)
もうひとつ例をあげるなら「遊び」の発達順序です。
「遊び」の発達や分類に関する研究は様々あるのですが、
私はこの「こども発達支援研究会」が作成された図がわかりやすいと思っています。
簡単に言いますと、「一人」から「集団」へと発達し、その順序を飛ばすと不具合を起こす可能性があるということです。
この図の中から「感覚遊び」と「模倣遊び」を取り上げてみます。
感覚遊びとは、視覚・聴覚・触覚・固有覚・前庭覚などの感覚を働かせて楽しむ遊びのことを言います。
たとえば、触覚ですと次のような遊びがあります。
・粘土遊び
・水遊び
・スカーフゆらゆら
・テープを貼ったものをはがす
・砂遊び
・泥遊び
・木の実(葉っぱ、木の実など季節のものを触ってみる)
・芝生に寝転がったり
・動物に触れたり
私は1歳の孫を連れて公園の噴水で水遊びをしたり、庭の植物にホースで水を撒く時にわざと水をかけたりします。
そういうのが触覚の感覚遊びです。
固有覚というのは、動作や運動をした時に自分の体がどのように動いているのかを感じる感覚です。
固有覚の感覚遊びは力加減を育てることができます。
次のような遊びがあります。
・バケツを持つ
・荷物を持ったり
・紙を破る
・昆虫採集
・肩車
・おんぶ
・ふんばる
・よじ登る
・ぶら下がる
・階段の上り下り
・ハイハイ
・ジャンプ
前庭覚は平衡感覚のことです。
姿勢を保ったり、動きの速さを理解するために使う感覚です。
バランスをとることや眼球運動にも影響する感覚です。
次のような遊びがあります。
・シーソー
・ブランコ
・滑り台
・ハンモック
・トランポリン
・バランスボール
・網目状のアスレチック
・足場がグラグラする遊具
・でんぐり返し
・ダンス
そして、これらの感覚を脳が調整するわけですが、その機能を「感覚統合」と言います。
人は感覚統合によって、その場に応じて注意を向けたり、自分の身体を把握したり、道具を使いこなしたり、人とコミュニケーションをとったりするといった行動がうまくとれるようになります。
ここでもう一度「遊びの発達ピラミッド」に見てください。
「感覚遊び」は一人で行うものですが、その体験をさせるのは養育者です。
私の孫の家の前には「砂場」が設置されています。
そうした環境が子どもの「体験」を保障します。
意識して様々な体験をさせることが養育者の役目となります。
5.「遊び」の発達順序②(模倣遊び)
私の孫は今、模倣遊びの最適期です。
何をしているかと言いますと「お人形遊び」です。
使っているのは、「ライオンさん」と呼んでいるライオンのぬいぐるみと、「ぽっくりさん」と呼んでいる馬のぬいぐるみと、アンパンマンのぬいぐるみです。
この3つがあれば私と二人で1時間以上遊べます。
今、「私と二人で」と書きましたが、ここが重要なところです。
模倣遊びは「1対1」の遊びです。
子どもが一人で遊ぶのではなく、大人が相手をします。
人形などを使って様々な会話をして遊ぶわけです。
《子ども・養育者・人形》
模倣遊びはこの「三項関係」による遊びです。
したがって、次のような発達が期待できます。
①自分と他者の心の動きは違うことが理解できる
②気持ちを共有し、他者を思いやる力を育める
③言葉で伝え、表現する力を育める
参考:「お人形遊びは女の子にも男の子にも “メリット” だらけ! 研究で分かった「やさしい心」と「言葉」の育て方」ママリ(mamari)
簡単に言いますと「思いやりの心」が育つわけです。
この「お人形遊び」と似た遊びに「見立て遊び」があります。
私はこの「見立て遊び」も孫とよくやります。
簡単に言いますと、積み木のような人間でも動物でもない物を「人物」に見立てて遊ぶ方法です。
「ああ、おなかすいたなあ」とかって、私が「積み木」を手に持って孫と会話するわけです。
こうした「見立て」は1歳児から可能です。
積み木に心なんて無いわけですが、でも幼児は積み木に心を感じて会話をするのです。
これも一種の「思いやり」ではないかと私は感じています。
ついでに言いますと、こうした模倣遊びの段階をあとにやって来るのが「ごっこ遊び」です。
ごっこ遊びは、子どもが「お母さん」になり切って立ち振る舞うとか、アニメのキャラクターになり切ってしゃべるとかという遊びです。
これも2歳児から1対1で可能ですが、人数を2~3人に増やすこともできます。
その意味で、その上の段階にある「集団遊び」の橋渡しになります。
集団遊びは集団ですから、3歳以降、まさに幼稚園などの集団生活で体験する遊びになります。
つまり、その前の段階で、「感覚遊び」→「模倣遊び」→「ごっこ遊び」を経験しておくことが大切だということです。
そうして子どもは自律心(自分で自分をコントロールする力)を身につけていくわけです。
6.まとめ
今回は「早教育」について解説しました。
早教育とは、脳の仕組みにもとづいて、適切な時期に必要な教育を実施する子育ての仕方です。
「適切」ということは、子どもにとって「無理がない」ということです。
その意味で「早期教育」とはニュアンスが異なるわけです。
適切な時期に必要な教育を実施すると、子どもの負担は少なくなります。
その上、その子が持っている可能性を伸ばすことができます。
まさにwin-win-winの「幸せの子育て」です。
世代を超えて好循環します。
しかし、まだまだこのことへの理解は広がっていないように思います。
これからもこのブログを通して発信を続けていきたいと思います。