講座100 知的好奇心の燃やし方
学校の先生と保護者の皆さんに共有していただきたい情報です。
2.わ!さっきのが80点で、今のは95点!
3.燃やし方①「教室で燃やす」
4.燃やし方②「自分で燃やす」
5.「教材研究(授業の準備)」って何?
6.まとめ
1.これ何色かわかる?
5月9日の日曜日に我が家の桜が開花しました。
子育てのSNSで「これ何色かわかる?」と聞いてみました。
Tさん:桜色?
Mさん:桜色。桃色。ピンク色。
私:二人とも、ぶー!
Kさんの長男S君(小2)が参戦して来ました。
長男に見せて聞いてみたら、「白ピンク色」だそうです!
私は何と言ったか。
「S君のが一番おしい。」
たったこれだけです。
これだけでS君は熱中した。
S君のお母さんの報告です。
わわっ!惜しいことをSに伝えたら、「じゃあ、うす桃色」と再チャレンジしました。
S君はなぜ「再チャレンジ」したのでしょう。
これだけで面白いテーマになります。
実は、私が使った言葉は「再チャレンジさせる方法」の一つなんです。
「一番おしい」は「一番」と「おしい」に分解できます。
「一番」は相対評価です。
SNSで、すでに何人かが挑戦した中で「一番」おしかったわけです。
しかも、相手は大人。
大人を相手に一番おしかったわけです。
これは「やる気」に火を点けます。
次に「おしい」です。
これは絶対評価です。
正解は教師(私)が持っています。
その正解(ゴール)に対して「近い」というわけですから、
燃えます。
こうして、S君は再チャレンジをしたわけです。
(私は再チャレンジを仕掛けた)
2.わ!さっきのが80点で、今のは95点!
再チャレンジして来たS君に対して私はこう返しました。
「わ!さっきのが80点で、今のは95点!」
これは「個別評定」という授業スキルです。
点数をつけるだけなので誰にでも簡単にできるように思えますが、
実は「教師の専門スキル」なのです。
今回は、そこを解説してみますね。
言うまでもなく、評定には根拠が必要です。
適当に点数を付けているわけではないのです。
さっき:「白ピンク色」(80点)
今:「うす桃色」(95点)
私の頭の中では「ピンク」だと50点くらいです。
まあ、とりあえず「答えた」というだけで50点といった感じです(何も言わない人は0点)。
(「答えただけで評価される」ということは「挑戦したこと自体を評価する」ということです。こうした仕組みはこれからますます大切になると思います。)
ここでS君は、ただのピンクではなく「白ピンク」と答えました。
すごいですねえー。
すごいと思いませんか?「白ピンク」ですよ。
大人の固い頭ではなかなか出せない答えです。
写真を「素直に」見たということですね。
偏見のない「素直な」答え。それが80点の理由です。
3.燃やし方①「教室で燃やす」
これが教室の中だと、もっと面白いことができます。
授業の中では「その点数の理由」を告げる場合もあるし、告げない場合もああります。
それは「燃やし方」なんです。
子どもが先生の所にノートを持って来た時、
先生は、わざとみんなに聞こえるような声で「80点!」とか言うんです。
「その理由」を告げる時もあります。
そして、それを聞いた子どもたちが、そこでさらに燃えます。
そこは「燃やし方」なんです。
「わ!さっきのが80点で、今のは95点!」
これが教室だとしたら、S君は95点をもらって悔しながら自分の席に戻ります。
他の子は「なんでだ?」となり、
席に戻ると「ノート見せて!」と群がって来ます。
そんな光景になる場面なので、この場合は「なんでだ95点になったのか」という理由は告げません。
その方が燃えますからね。
これが「燃やし方」です。
4.燃やし方②「自分で燃やす」
「燃やし方」にはもう一つ大事な要素があります。
それが「自分で燃やす」という要素です。
京都大学の神田啓治先生は著書『知の構築法』の中で次のように書いています。
「知的快感に勝る快感はない。」
「やった!と、飛び上がりたくなるときがある。」
そっか!「白」が「おしいんだな!」
何も言わなくてもS君は「自分で」気づいたのです。
だから次に持って来た答えが「うす桃色」の「うす」になったわけです。
そして、私はこれに95点を付けました。
「うす」を自力で導き出したからなんです。
そして、S君にすれば「自分で」導き出したから楽しいし、興奮するわけです。
この「快感」「飛び上がりたくなるとき」を授業の中でつくるのが教師の仕事です。
適当に点数を付けているわけじゃないんです。
「燃やし方」というのは学校の先生にとって超重要な授業スキルとなんです。
5.「教材研究(授業の準備)」って何?
さっき:「白ピンク色」(80点)
今:「うす桃色」(95点)
その「燃やし方」の背景を深掘りしますよ。
S君は「白ピンク」の次に「うすピンク」ではなく「うす桃色」と答えました。
「白」を「うす」に、
「ピンク」を「桃色」に変えて再チャレンジしたわけです。
「ピンク」を消した。
ここが凄いんです。
実は、桜の色は「和色(日本の色)」で表すことになっています。
ピンクは英語ですよね。
だから正解にはしません。
「桃色」は和色です。
だから「ピンクを消した」という点で解答としてレベルが上なのです。
そして、こういう評定をするためには、
教師が子ども以上に勉強していなければなりません。
このような教師の勉強を「教材研究」と言います。
教材研究は教師の仕事の中心です(本来は)。
学校の先生というのは、教材研究という授業の準備をしているからこそ「先生」なのです。
さっき:「白ピンク色」(80点)
今:「うす桃色」(95点)
さて、今度はこの「桃色」に着目しましょう。
桜が「桃色」ではおかしいですよね。
おしいんです。
だから「あと5点」なんです。
そして、授業では、このことを告げる時もあるし、告げない時もあります。
告げるとしたら、
「この写真は桜でしょ」とか、
「桃かあ。おしいなあ」とか、
そういうセリフを発するかも知れませんね(ギリギリまで自分で発見させるために)。
それが「燃やし方」です。
さて、
「わ!さっきのが80点で、今のは95点!」
と告げたあとのお母さんからの報告です。
寝る前に長男に聞いたら、ドハマりしてしまいました!
「気になるなぁ。95点かぁ」とニヤニヤしながら眠りました。
この時はもう夜の9時を過ぎていたので、このやり取りは終了となりました。
正解はこちら。
6.まとめ
①「一番おしい」は「一番」と「おしい」に分解できます。
②正解は教師が持っています。
③再チャレンジさせる方法
④素直に見る
⑤教室で燃やす
⑥自分で燃やす
⑦挑戦したこと自体を評価する
⑧「教材研究(授業の準備)」って何?
⑨教材研究は教師の仕事の中心です(本来は)
⑩「やった!」と飛び上がりたくなるような体験を意図的につくる。
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