講座67 学級新聞

2年生を担任していた時に事件が起こりました。

教室の真上は5・6年生の教室でした。

その5・6年生が二階の窓から下にいる子どもたちに向かって、

ツバを吐きかけたのです。

子どもたちは私に苦情を言って来ました。

それに対して私は言いました。

「新聞を書け!」

そうして出来上がったのがこの「学校いろいろ新聞」です。

だいじけんです
6年せいがつばをとばすのです

【本文(表面)】

6年生がつばをとばすのです。
5年生がつばをとばすのです。
これはだめですね。
5・6年生はいいきぶんになってますね。
先生はわるいことにはだまっているなといいます。
ぼくもだまってはいません。2年生では、10人もかけられました。(似顔絵)

面白いですね。

見出しも「見出しらしい」です。

本文の「書き出し」が小気味いいです。

「一文を短く」というのは作文で教えていたので、そのせいでしょうか。

「悪い事には黙っているな」は学級集団づくりの影響です。

向山先生の集団づくりに憧れていましたから。

「10にんもかけられました」は具体的な数値ですね。

新聞は事実を報じるものですからね。

【本文(裏面)】

6/4 みなさんじけんです。

学校のかえりにびんたをされたのです。
りゆうもないのにたたくのです。
だれがたたくのかをいいます。
それにあるいてたらおす人、ける人がいます。
それは●●くんです。

なぜたたいたのでしょう。(似顔絵)

これまたすごい記事ですね。

暴力事件、今なら「いじめ」ですね。

今なら、学校や担任が動くでしょうね。

この時は、教師が動くんじゃなくて、子どもが動いています。

今なら考えられないですね。

今ならSNSでしょうか?

こそこそやったら逆に問題ですね。

しかし、正々堂々とやったら今こそ発信できるかもしれませんね。

子どもたちがSNSで稼いでいる時代ですからね。

大人と子どもの差がなくなりつつある世の中です。

問題はツールの使い方ですね。

この学級新聞は「公的」に出しました。

責任編集は担任です。

問題になるのはわかっていたのですが出しました。

若気の至りですね。

職員にも配りましたし、家にも持ち帰らせました。

校長の許可は取ったかどうか記憶にありません。

後から指導を受けるパターンかも知れません。

実名を出しちゃってるのがスゴイですね。

加害者は子どもですからね。

でも、新聞を出してるのも子どもですしね。

とにかく今なら「あり得ない」ことですね。

【だい2号(見出し)】

これが6年生

すごい見出しです。

今、見ても笑ってしまいます。

【本文】

6年の女の子から、とつぜん手がみがきた!!
●●くんからも、手がみがきた!!

2年生のみなさんに
よだれやつばをたらしたことをゆるしてください。
あと、人をはたいたことをゆるしてください。
●●

と、てがみがきていました。

2年生へ
2年生 6・5年生の男子がつばをとばしてごめんなさい。注意しなかった5・6年の女子もわるかったです。
反省しています。
こんどから、注意します。
水野先生、2年生のみなさん ごめんなさい。6年の女子より ゆるしてください!

と、手がみがきていました。

これが6年生

いやあ、すごいですね。

「これが6年生」と、褒めちゃうんですから(笑)。

そして、6年生の女子までが動くということ。

高学年女子らしい姿ですね。

多分、この時は私と5・6年生の担任の先生とが連携して動いていました。

5・6年生の教室でも「どうしたらいいか」が話し合われたのです。

それでもう男子集団は追い込まれた。

反省せざるを得なくなった。

そして、女子たちも「注意しなくちゃ」と立ち上がった。

そういう結末だったわけです。

この事件には職員の連携が不可欠でした。

そして、もう一つは保護者が黙って見守ってくれていた(というか応援してくれていた)という環境があります。

そういう時代だったと言えばそれまでですが、そういう環境があったという事実は何かしら意味があると思っています。

この事件は次の「第3号」をもって決着しました。

【だい3号】

水野先生のところにはんせいのてがみがとどきました。中には、わるいことには、ちゅういすると書いてありました。

5・6年生へ
5・6年生はもう、そんなことはしないで下さい。
りっぱな5・6年生になって下さい。

二年生より

自分たちのことはさて置き、「悪い事は悪い」と言ってしまう2年生もすごいなと思います。

世の中って、「人の事を言う前に自分はどうなの?」っていう風潮があるじゃないですか。

子どもの世界にそういうのって持ち込みたくないですよね。

向山学級のキーワードは「自由で平等」でした。

集団づくりのキーワードです。

当時の私はその世界に憧れていました。

そういう背景がこの新聞に出ていると思います。

関連図書:『新ちゃんがないた!』佐藤州男

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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