1歳半~6歳(幼児期)

講座52 タテの線とヨコの線「むずかしい」のはどっち?

投稿日:2020年12月17日 更新日:

 2歳のA君に線を書かせたお母さんからの報告です。

タテの線」と「ヨコの線」

 難しかったのはどっちだと思いますか?

 目 次
1.線を書かせる
2.模写
3.発達順序がわかると…

1.線を書かせる

 これがA君の書いた線です。

 「タテの線」と「ヨコの線」があるのがわかりますか?

2.模写

 そもそも「2歳児」に、タテの線やヨコの線は書けるのでしょうか?

 そこに疑問を持たれた方はセンスがいいです!

 実は、

模写(もしゃ)

をさせました。

 模写とは、「お手本を真似させる」という書き方です。

 もう一度見てみましょう。どれがお手本かわかりますか?

 ●印が付いているのが、お母さんが書いた「お手本」です。

 A君はお手本を見ながら書いたわけです。

 A君自身が書いた線が見えましたか?

 これ(↑)がタテの線です。10本くらい上手に書いていますね。

 そして、これ(↓)がヨコの線です。

 あれれ? ぐるぐる渦巻いてますね。

 そうなのです。ヨコの線はこんなに難しいのです。

 佛教大学の丸山美和子教授は「発達の筋道」を次のように書いています。

【1歳前半】同じ所のなぐり書き
【1歳半頃】ぐるぐる書き
【2歳】タテの線・ヨコの線
【3歳】閉じた円

出典:「教科学習のレディネスと就学期の発達課題に関する一考察」

 この論文には「タテ」と「ヨコ」のどちらが難しいかについては書かれていませんが、A君の挑戦を見る限り、難しいのは「ヨコの線」だと言えそうです。

 ところで、こうした発達段階を知ることにはどんな意味があるのでしょう。

3.発達順序がわかると…

 タテよりヨコが難しいと知っていれば次のことが出来ます。

(1)驚いてあげられる!

「A君すごい!ヨコの線が書けるようになった!」

「パパ見て!A君が閉じた円を書いた!」

 そん風に驚いてあげる(=ほめる)ことができます。

 発達段階を知っていれば、心からそう思うことができますよね!

(2)コミュニケーションが豊かになる

 多分ですね。A君のお母さんは線を書かせる時に、

 「タテ」とか「ヨコ」という言葉

 を知らず知らずのうちに使っていたと思うのです。

 もしそうだとしたら、A君のは「タテ」や「ヨコ」という言葉を

 耳にしたはずです。

 実はこれが重要なのです。

 《体験+言葉》

 言葉の数(語彙)を増やす最適方法です。

 丸山教授の論文名に「教科学習のレディネス」という言葉ありましたが、言葉の数が多いことは、学校の勉強をする時に「大切なツール」となります。

 そして、こうした言葉は、意識しなければ普段の生活であまり使われません。

 「お母さんと一緒に線を書く」という特別な場面だからこそ生まれた自然な体験(=それが2歳児の勉強)になっているのです。

(3)フロー体験が豊かになる!

 発達段階を知っていると「無理をさせない」ということができます。

 どういうことかと言いますと、

 2歳で「タテ・ヨコ」なのだと知っていれば、

「タテ・ヨコ」がまだ書けなくても仕方ないかな? とか、

「円」を書くのはそりゃ難しいよな! ということがわかります。

 そうするとですね、

 その前までの段階の書き方を十分体験させられるのです!

 酒井式描画指導法の酒井臣吾先生は言います。

(その前までの期間は)存分になぐりがきをやらせて目と手と脳を鍛えておくといいとローエンフェルド氏は説いています。だんだん円のような形になっていきますので焦らずに見守るといいですね。

 これはまさに「フロー体験」ですね。

 発達というのは、その前までの段階を「存分に体験した子」が「自分で」歩いて行く道筋です。

 たかが「線」ですが、奥が深いですよね。

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