講座369 世代間伝達を断ち切るのは子ども自身

「生徒さんの中に親から虐待されている子はいますか?」

「親御さんが亡くなった生徒は?」

学校へ出向いて授業をさせていただく時にはそんなことも聞いています。

担当の先生がそういう点を気にされている場合があるからです。

お話を伺ってから、私は次のように言います。

「そうですか。でも、いつも通り授業をさせていただいていいでしょうか?」

「その子たちが自分自身で向き合っていく問題ですから」

今回は、ある中学校で実施された「赤ちゃん学」の様子を紹介させていただきます。

 目 次
1.S先生からの授業報告
2.私からのコメント
3.まとめ

1.S先生からの授業報告

子ども達が将来大人になった時に、子育てについて学んでいる大人であってほしい

そういう問題提起で、水野先生がTOSS授業技量検定を受検されたことを今も覚えている。

確か「家庭科の中で、最低でも”3時間”の時間を確保」という提案だった。

家庭科はもっていないけど、水野先生の考えに賛同し、

学年持ち回りの道徳で「生命の尊さ」領域で今年も「赤ちゃん学」の授業を実施した。

問題数は水野先生が修正してくださった6問バージョン。

子ども達はすぐに4人グループになり、

ああでもない、こうでもない、と積極的に話しあってくれた。

グループの解を出し合って、私とやりとりした後、水野先生の解説を視聴。

これを6回繰り返した。

時間を見ながら、テンポよく進めたつもりだったが、

ADHD君の言動に、グループ内の女の子が怒ってむくれてしまったり、

支援員の先生も、ADHD君に過剰に介入しすぎて、私がそこに介入したり、

前の時間のバスケでふてくされた男の子に応じたりした。

改めて、授業は様々なことに対応をしながら、それでも進めていくものだよなあ…と実感した。

そういうことはありつつも、クラス全体としては総じて明るく楽しい雰囲気をキープして盛り上げながら進めることができた。

最後の実技問題「お花咲いてるねえ」では、ふてくされていた男の子もジャージを丸め、赤ちゃん代わりにしてやっていたし、

ADHD児対応で過剰反応していた支援員さんもさすがの「ベテランお母さん」の演技を子どもの前で披露してくださり、拍手喝さいを浴びた。

そんなわけで、タイムマネジメントはかなり意識したけれど

最後の解説動画「共同注視」の途中で切り上げ、授業終了1分前に感想書きになってしまった。

それでも、他の先生の道徳ではなりがちな「停滞感」は全くゼロ。

水野先生とかつて同僚だった教頭先生もテレビ画面をじっくり見ていらっしゃった(笑)。

学年団の先生で家庭科の先生からも授業終了後「ありがとうございました」の声をいただいた。

翌日も、支援員の先生から道徳の授業にあった赤ちゃん映像が「うちの孫がちょうど、あの赤ちゃんの時期なの」と声をかけていただいた。

子ども達も授業後、「赤ちゃん、癒された~」「あの王様、ひでえな。」「王様、やばかった!」「オキシトシン!」などと授業後も発言していて反響があった。

水野先生、素敵な「赤ちゃん学」の授業をありがとうございました!

ただ、翌日、私のサポートをしているそのADHD君が

「うちの親は、あんな風に優しく俺を育ててくれてない。
 毎晩、酒を飲んだくれてばかりだ。」

と道徳の授業について、言っていました。

決して彼を見捨てたりはしないご両親だと思うのですが、時折彼は自分の母親を「飲んだくれ」と表現します。

また、お母さんとの面談でも、お母さんが

「うちは、他のうちのような子育てをしてなくて、絵本を読んであげたり、おままごとにつきあってあげたり、してないで大人扱い、放置してきたんです。」

とおっしゃっていたのです。

ADHD君は、グループ内では仲間割れの原因になっていましたが、どの問題も一生懸命考えて解答してくれて、いい答えもたくさん出してくれました。

今回の学びも含めて、魅力的なお父さんになってほしいと思います。

2.私からのコメント

学校に招かれてリアル授業をする時は、虐待を受けてる生徒や離別死別した生徒がいるか聞いてます。

そして、それでも授業をしていいか確認しています。

そして、ここが大切なのですが、

そういう子にとってこそこの授業が必要なことを話します。

なぜなら世代間伝達があるからです。

世代間伝達を断絶させるためには、

いつか誰かが

その悲しみを納得の上に

乗り越えなければならないからです。

その生徒さんもそういう体験になっていたらいいですね。

3.まとめ

この授業をすると次のような感想が書かれます。

今日学んだことを生かして将来に役立てたい

しかし、虐待を受けて育った子にとってはマイナスならのスタートとなります。

・自分は愛されなかったこと

・虐待シーンの記憶

・意識ではコントロールできない感情

様々な「マイナス」を背負って自分の子どもを育てていかなければなりません。

それでも、そういう生徒も書くのです。

今日学んだことを生かして将来に役立てたい

こうした生徒たちを支援するためにこの授業を作りました。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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4件のフィードバック

  1. つむちゃんのお母さん より:

    未来ある授業なのですね。
    復帰したらまた授業したいです。
    昨日聞いたボイシーの中でも、同じようなことをお話されている方がいました。

  2. タミー より:

    虐待とまではいきませんが、私自身も完ぺきな子育てを経験していないし、できていません。
    でも家族は様々な葛藤の中、私のことを一生懸命考えて育ててくれていたのだと思います。今の私もです。
    様々な子どもを想定して赤ちゃん学の授業を考えてくださったことに尊敬と感謝の気持ちです。

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