講座306 育児休業法が改正されました!

令和4年10月1日から「改正・育児介護休業法」が施行されました。

次の2点が新しくなりました。

①「産後パパ育休」の新設
②育児休業の分割取得が可能に

と言ってもわかりづらいですよね。

できるだけわかりやすい解説に挑戦します。

 目 次
1.改正・育児介護休業法
2.世界の育休環境ランキング
3.日本人男性の育休取得率
4.男の理由
5.育児休業給付金

1.改正・育児介護休業法

まず、「産休」と「育休」の違いについて確認しましょう(公務員は除く)。

ピンク色は母親、黄緑と水色は父親です。

母親は「産前6週」「産後8週」に休業を取ることができます。

これが「産前産後休業」略して「産休」と呼ばれる制度です。

父親は出産しないので「産休」はありません。

その代わりに8週目以内に取得できる「パパ休暇」という制度がありました。

また、「育児休業」は父親にも母親にも1歳までの期間に1回だけ認められていました。

保育園が見つからない場合などの延長については、1歳の時と、1歳半の時に限り認められていました。

ちなみに、世の中では「育休」という言葉をよく使いますが、この「育休」には「育児休暇」と「育児休業」の2種類があるので気を付けなければなりません。

育児休暇は、子どもが小学校に入学するまでの間に取得できる権利です。

ただし、これは企業の努力義務ですから必ず取得できるとは限りません。

一方、育児休業は、1歳未満になるまでの期間に使える権利です。

これは、同じ会社に引続き1年以上働いている労働者が対象で、国から給付金が出ます。

「有給育児休暇」とも言いますのでややこしいですね。

この解説で取り上げているのは「育児休業」の方です。

次は、今回の改正についてです。

「パパ休暇」が廃止になって「産後パパ育休」という制度が新設されました(ややこしいですね)。

要するに2回に分けて取得できるようになっただけです。

でも、当事者にとっては便利なことです。

生後2か月の間に一度出勤してまた休むことが可能になったわけです。

それから、育児休業が分割可能になりました。

これもかなり便利で、夫婦で交代しながら育休を取得することができます。

また、保育園が見つからない時などの延長についても開始時期が柔軟になったので、夫婦が交代で休めることが可能になりました。

改正育児・介護休業法(厚生労働省)

2.世界の育休環境ランキング

さて、ここで問題です。

日本人男性の育児休業環境(育休の取りやすさ)は世界の中でどの位置にあると思いますか?

では、世界ランクを見てみましょう。

1位は韓国の17.2週!

ではなくて、

実は、まだ「その上」があります!

なんと日本は、世界一長く、有給で、父親が、育休を取れる国なのです。

ユニセフは、日本を「父親に6カ月以上の有給育児休業を設けた唯一の国」として報告しています。

ということで、答えは①の「世界上位」なのです。

3.日本人男性の育休取得率

では、今度は「環境」ではなく、実際の育休取得率を見てみましょう。

実際に日本人男性が育休を使っている割合です。

参考までに日本の女性は約80%が取得しています。

男性の育休取得率は7.48%(2019年時点)です。

ということで、答えは④の約10%です(2021年に13.97%に上昇)。

これを他の国と比べてみましょう。

出ました!フランス、100%です!

詳しくは、講座284「フランスに『イクメン』がいない理由」をお読みください。

ここまでを整理しますと、

日本人男性の育児休業環境(育休の取りやすさ)は世界第1位!

しかし、

実際に使っている男性は最新調査(2021年)で14%程度!

というように「環境(制度)」と「実際」にギャップがあるのが現状です。

4.男の理由

では、日本の男性は、制度があるのにどうして育休を利用しないのでしょうか?

1位~7位まで、全部仕事のことですね。

その気持ちはわかります。

給料や迷惑やブランクが心配。

特に、最近の人手不足は深刻な問題です。

でも、その気持ちは、女性の育児を理解した上でのものなのでしょうか?

・家で赤ちゃんと2人きりになると、急に孤独になった。(NHK「シブ5時」の声)

・助けてくれる人がいない。話す相手もいない。気持ちが暗くなった。(〃)

・自分はダメな母親なんだと思って本当に苦しかった。(〃)

・社会から取り残されていくような不安があった。(〃)

このような不安は分娩後のホルモンの変化で誰にでも起こり得るものです。

「産後うつ」の診断を持つ母親の割合は10%程度だと言われていますが、「その一歩手前」や「自分もそうなのじゃないかと思った」という母親の割合はもっと多いものです。

これは私の意見ですが、日本の男性は女性の「性」や「出産・育児」に関する理解が不十分だと思います。

なぜなら、そのようなことを学校で教えられていないからです。

家庭でも教えられていないですよね。

たとえば、男性は「生理の大変さ」や「授乳の大変さ」を理解しているでしょうか?

私自身の経験になりますが、私は学校の先生からも、親からも、そのようなことを教えられたことはありません。

「給料」や「職場への迷惑」や「仕事のブランク」といった心配もわかりますが、その前提に、出産や育児の大変さの理解があるでしょうか?

もちろん、その理解は男性個人の努力だけでは出来ません。

世の中に、理解のための仕組みが必要です。

日本の育児環境は世界一なのですから、まずはその「仕組みづくり」から始めるべきだと私は考えています。

5.育児休業給付金

お金のことが心配だというので、最後にお金のことについて触れて終わります。

育児休業中は国から育児給付金が出ます。

条件は次の2つです。

①11日以上働いた月が12ヶ月以上ある
②雇用保険に入っている

この条件に当てはまれば、非正規(パート、アルバイトなど)でも受給できます。

また、夫婦両方が同時期に育休を取った場合は両方に支給されます。

支給額は次のようになっています。

育休前の賃金の67%が支給されます(6ヵ月以降は50%)。

ちなみに、この金額は世界的に見ても「まあまあ良い」と思います。

しかも、育休中は社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)、所得税などが免除されるので、実質では、育休前の賃金の約80%が保障されることになります(6ヵ月以降は約55%)。

こうしてみると日本の育児制度は「期間」も「給付金」も世界最高レベルだと言えます。

しかし、それなのに、男性の利用率が低い。

理由として次の3つが考えられます。

①制度の認識不足
②人手不足
③育児に対する男性の理解不足

この中で私が取り組んでいるのが③です。

日本の義務教育では「子育ての仕方」を学校で習いません。

高校の授業でも扱いません。

日本では、ある日突然、「子ども」が「親」になるのです。

そして、その責任を女性に負わせてしまう空気が存在しています。

このブログでは「父親学」というカテゴリーを設けていますが、これからも、もっと踏み込んで、中学・高校の男子生徒に「性」や「出産・育児」に関する情報を提供したいと考えています。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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5件のフィードバック

  1. 畠山文 より:

    産後のみならず、産前にも父親が休めたらと思いました。臨月は体が思うようにならないので、家事、育児を分担してくれる人がいると助かります。

    或いは、赤ちゃん学をじっくり学んでもらいたい、できれば夫婦で。もし、学校での赤ちゃん学が普及したとしても、親になる直前に改めて学ぶと、より内容が理解でき、産後の負担が少しでも少なくなると思いました。

    • 水野 正司 より:

      フランスのように産前に3日間の休業はどうでしょうか。あった方がいいですよね。「赤ちゃん学」への期待ありがとうございます。①すべての高校生、②産前講習の2段階でやれたらいいなあ。

  2. ゆきちゃんママ より:

    職場の同僚が、雇用保険に入っているにも関わらず、事務の人の知識がなかったために育休中全くお金が入ってこなかったそうです。
    全ての職場の人事事務の方に育休の制度について知ってもらうためにはどうしたら良いか考えます。
    今のところSNSでバズらせる、CMで宣伝する、ということしか思いつきません。

  1. 2024年2月25日

    […] 詳しくは「講座306 育児休業法が改正されました!」をご覧ください。 […]

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