講座279 不登校問題・学校教育は義務なのか?

今回は、不登校について、他ではあまり語られていない深い問題を解説します。

 目 次
1.学校教育は義務ではない!
2.学校に行かなくてもいいのか?
3.不登校の子がもっと増えたら?
4.オンライン授業の問題点

1.学校教育は義務ではない!

いきなり衝撃的な話ですが、学校教育って義務じゃないって知ってましたか?

順を追って説明しますね。

まず、日本国憲法第二十六条第1項です。

「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」

これは「教育を受ける権利」ですから大人も子供も教育を受ける権利があることを規定しています。

ただし、教育=学校教育ではありません。

それは第2項を読めばわかります。

「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」

これは保護者(親)が子供に「普通教育を受けさせる義務」ですね。

ここです!

「普通教育」って書いてありますよね。

「学校教育」じゃないですよね。

「普通教育を受けさせる義務」なんです。

ここまでをまとめます。

第1項:すべての国民は「教育」を受ける権利がある(学校教育とは書かれていない)

第2項:保護者は「普通教育」を受けさせる義務がある(学校教育とは書かれていない)

ここで問題になるのが次のことです。

①「普通教育」って何?

②「義務教育」とどう違うの?

これは憲法上に書かれていません。

学校教育法第十六条に書かれています。

「保護者は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」

この「九年の普通教育を受けさせる義務」を義務教育というのです。

9年間学校に行かせる義務とは少し違いますよね。

9年間「普通教育」を受けさせる義務なんです。

で、その「普通教育」というのは次のような内容を言います。

①社会生活力
②環境保全力
③国際理解力
④家庭生活力
⑤情報リテラシー力
⑥計算力
⑦科学的理解力
⑧健康安全力
⑨文化芸術力
⑩勤労力

この①~⑩は学校教育法第二十一条を私がシンプルに表したものです。

この①~⑩が元になって教科や教科書が作られているというわけです。

ですからもう一度まとめますと、

すべての国民は①~⑩のような内容を学習する権利があり、

すべての保護者は①~⑩のような内容の学習を我が子に受けさせる義務がある、

ということです。

で、ここからが今回の本題なのですが、

憲法を元に学校教育法を読むと、

「普通教育」という概念が上にあって、それを実現する手段として学校教育があるという解釈になります。

つまり、「普通教育=学校教育」ではなく、「普通教育を行うひとつの手段として学校教育がある」という考え方です。

2.学校に行かなくてもいいのか?

えっ!じゃあ、①~⑩のような学習をする場所があれば学校に行かなくてもいいの?

そうなりますよね。

どう思いますか?

普通教育をやってくれる場所があれば学校に行かなくても済むと思いますか?

これはですね。

済むことには済むのですが「敷居が高い」のです。

また順を追って説明します。

平成28年12月14日に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」というのが公布されています。

これを受けて令和元年10月25日に文科省から「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」が発出されています。

この通知の中の肝となるのは2-(4)「不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保」という部分です。

不登校児童生徒の一人一人の状況に応じて,教育支援センター,不登校特例校,フリースクールなどの民間施設,ICTを活用した学習支援など,多様な教育機会を確保する必要があること。また,夜間中学において,本人の希望を尊重した上での受入れも可能であること。義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において,指導・助言等を受けている場合の指導要録上の出席扱いについては,別記1によるものとし(後略)

大事なことが二つ書かれています。

①教育支援センター,不登校特例校,フリースクールなどの民間施設,ICTを活用した学習支援など,多様な教育機会を確保する必要があること

学校は、まず①のような努力をしなければなりません。

②学校外の公的機関や民間施設において,指導・助言等を受けている場合の指導要録上の出席扱いについては,別記1による

その上で、問題は②です。

出席扱いが認められているのは「公的機関や民間施設で指導・助言等を受けている場合」に限られます。

つまり、保護者が「家庭で普通教育をやってます!」と言っても出席扱いにならないのが現状です。

学校教育に代わるものとして認められるためには要件があります。

別記1「出席扱い等の要件
(1)学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
(2)当該施設は教育委員会等が設置する教育支援センター等の公的機関とする
(3)当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること

どうしても学校に行きたくない場合の「抜け道」としては、

各市町村に設置された当該機関に通所という形で少しでも通っていつつ家庭で過ごす

というやり方しかありません。

そうは言ってもほとんど外出できない子供もいますから「在籍している」という形だけで学校が認めてくれるかどうか。その責任は校長にありますから校長先生次第というところでしょうか。

最近はコロナ禍の影響やオンライン学習の普及もあって「積極的不登校」という形をとる保護者も増えて来ています。

学校教育の現体制と齟齬が生じてきているようにも感じられます。

ただ、教師の世界には「出席第一」に考える人は未だに多いです。

また、保護者にも罪悪感を感じる方が多いですので、子供も罪悪感を感じることになります。

3.不登校の子がもっと増えたら?

2020年度の不登校の児童生徒数は19万6127人です。(文科省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)

この数がもっと増えると社会問題になりますよね(というかもうかなりの問題ですけど)。

・学校に通えない子がいる

・学校に通いたくない子がいる

・学校に通わせたくない親がいる

そうした時の救済策としては、先程の「抜け道」を各自治体が弾力的に運用するのが手っ取り早いと考えます。

学校(校長)の判断だけに任せるのではなく、

①「当該施設に通所又は入所」の条件を緩やかにする(月1回以上など)
②民間施設を増やす

地方行政がこうした取り組みをすれば救われる子が増えるはずです。

そのためにも次の認識が必要です。

「普通教育を受けさせる義務」は国にもある!

普通教育を受けさせる義務って親だけじゃないんです。

国にもあるんです。

○「義務を負う」
  親には、憲法以前の自然権として親の教育権(教育の自由)が存在すると考えられているが、この義務教育は、国家的必要性とともに、このような親の教育権を補完し、また制限するものとして存在している。(「昭和22年教育基本法制定時の規定の概要」文部科学省)

義務教育は「親の義務」でもあり、「国家的必要性」でもあるというわけです。

「子は国の宝」ということですね。

従って、

①「当該施設に通所又は入所」の条件を緩やかにする(月1回以上など)
②民間施設を増やす

という環境整備は国の責任でもあります。

4.オンライン授業の問題点

コロナ禍によって学校でもオンライン授業がかなり行われるようになってきました。

でも、オンライン授業には大きな問題点があるのをご存知ですか?

オンライン授業は「授業」として認められていない

実は、学校のオンライン授業は「授業時数・授業日数」にはカウントされていません。

クラス全員が受けていてもです。

指導要録の備考欄に別記されるだけなんです。指導要録様式2(文科省)

これは令和3年2月19日の「感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」による措置なんです。

でも、ですよ。

コロナや災害だけではなく、不登校の問題とも重なって来ると思います。

不登校の子が在宅で授業を受け、出席扱いにされる日が来たら教育を受ける機会が広がり助かる子がいるはずです。

現場の実態を考えれば、

コロナや学級閉鎖でで休んでいる子も、不登校で休んでいる子も、

同時に授業に参加できるわけで、

教師にとっても一石二鳥です。

この機会に不登校対応の選択肢がもっと増えることを願っています。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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