E 発達障害への理解

講座172 想定力

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教育には想定力が必要です。

1.想定力とは何か

たとえば、こうです。

三人きょうだいの長女として生まれた我が子(A子)。
幼い頃から体が弱く、入退院を繰り返した。

これだけの情報。

どんなことを「想定」しますか?

「体が弱いからなあ。大きな病気に罹らないように気をつけて育てなきゃ」

「他の二人に比べて発達が心配だから手厚く配慮しなきゃいけないかな」

親だったらそのくらいのことは想定するかもしれません。

でも、教師などの専門家はそれだけではないでしょう。

幼い頃から体が弱い→(   )

入退院を繰り返した→(   )

他の視点を持っているはずです。

たとえば、「知的発達についても気をつけて見なければいけないかも」などです。

2.分かれ道

母親は日常生活の動作や文字を覚えることに時間が掛かることを気にしていた。

これが幼児期のA子の状態だとします。

こういう場合、親の在り方は2つに分かれます。

(A)私が面倒を見てあげなくちゃ!

(B)どこかに相談できる所はないかした?

母親は生活に困らないよう一つ一つを根気強く教えた。

この母親は(A)を選びました。

親として自分がなんとかしなくちゃと考えたわけです。

これはこれで立派な態度です。

でも、見方を変えれば「自分で抱えた」ということでもあります。

小学校入学前などはよくありますよね。

学校に行ったら本人が困らないようにいろんなことを親が教える。

ちょっと心配だけど通常学級に入れたいので家庭で何とかしたい。

そう考える保護者は少なくありません。

A子は小学校は通常学級を選んだ

3.小学校での出来事

小学校に上がったA子はどうなったか。

三年生から勉強について行けなくなった。

こういうケースも少なくありません。

小学校の勉強は三年生くらいになると急に難しくなります。

漢字の量が増えます。

抽象的な言葉が多くなって来ます。

ついて行けない子は劣等感を抱き始めます。

もしかしたら、小学校一、二年生の段階で、すでに落ちていたのかも知れません。

4.逆のケースを想定する

逆のケースを考えてみて下さい。

小学校入学の時に特別支援学級を選んでいたら…。

一、二年の内容の中でも特に重要と思われる勉強を丁寧に教えてもらえたかも知れません。

ひらがな、カタカナ、漢字、計算、音読など。

そういう基礎学力はちゃんと身についていたかも知れません。

三年生になった時には、学力も自信も身につけて、通常学級に戻る子だっています。

それが支援です。

ところが「みんなと同じ」を熱望するあまり、

せめて低学年のうちは通常学級で受けさせたいという親の考えが優先されがちです。

特別支援教育には想定力があります。

長期的な目標を立ててその子の将来を考えます。

「小学校卒業までには四年生程度の読み書き計算ができるようにさせましょう」

「高学年になった時に通常学級に戻れるように支援しましょう」

教師や支援機関はそのような見通しを立てることができます。

ところが、保護者が抱えてしまうと、他機関につながらずに時間が過ぎてしまう場合があるのです。

5.遅かった決断

中学校では特別支援学級に。

A子は中学校でやっと特別支援を受けました。

私はこういうケースに何度も出会って来ました。

子どもによってはその選択なベターな時もあります。

しかし、辛い選択になる場合も少なくないのです。

思春期は心が傷つきやすくなります。

友だちと比較して自分を責めるようになりやすい年頃です。

小学生の時の自然に付き合ってくれた周りの友だちも、距離を置くようになりがちです。

A子の場合はどうなったのか。

同級生からいじめられることもあった。

辛い思いをしたということです。

何かの障害ではと思った母親が検査を受けさせると、知的障害があることが分かった。

ここでやっと検査です。

遅すぎます。

検査は支援の入り口です。

それが中学校に上がってからとは…。

専門家であれば、生まれた時に体が弱かったという時点で知能の発達を気にしたはずです。

保護者にその視点がなくても、支援機関とつながることはかのうです。

1歳半健診、3歳児健診、就学時の健診、それに日常の様々な窓口。

保護者が抱えてしまうと、つながりが持てないまま時間が過ぎてしまうという典型です。

6.高校教育

中学2年の途中から函館市の特別支援学校に転校し、高校卒業までを過ごした。  

支援の場所として特別支援学校が選ばれたということは、それなりの支援がもっと早い段階から必要だったということです。

高校の担任の先生はA子について、次のように語っています。

とても人なつっこい子だが、コミュニケーションや対人関係が苦手だった。
学校では主に調理作業や職場実習などをした。

明るい子だったのかも知れません。

でも、この証言から「ある事」が想定されます。

知的に低く、人なつっこい。

コミュニケーションや対人関係が苦手。

そうです。

人に騙されることが想定されます。

女の子です。

特に注意が必要です。

7.社会人になって

時が過ぎて、A子31歳。

就労支援施設に入っていた。

2020年3月3日昼ごろ。
調理作業をしていたA子は突然トイレに駆け込んだ。
生理痛だと思った。
午後4時過ぎ、外勤から戻った施設長は、A子がトイレから出てこないと聞き、慌ててトイレに向かった。ドアをたたき「出てこないなら強制的に開けるよ」と声を掛けると、ようやく、体が冷え、ぐったりとした状態で出てきた。トイレに入ってから4時間以上がたっていた。

A子は3002gの女の子を産み落としていた。

赤ちゃんは、小さく泣き声を上げ、手足を動かしていた。

A子は「どうしたらいいか分からなくて」便器の穴に押し込み、窒息死させた。

出産による出血で貧血状態になったA子はそのままトイレにこもっていたのだった。

警察は殺人の疑いで逮捕。

函館地検は鑑定留置の結果、責任能力があるとして殺人罪で起訴した。

乳児の父親は50代の元施設職員。

二人は「交際していた」と説明。

周囲は交際のことはもちろん、本人を含め妊娠に全く気付かなかった。

高校の担任は振り返る。

A子は普通の男女交際への憧れを持っていた。
しかし、性教育を受ける機会はなかった。

8.報道読解

以上、10/12(火) のYahoo!ニュース「施設のトイレで窒息死した乳児 事件は防げなかったのか 知的障害の女性が出産、元職員『性のはけ口に』」から紹介しました。

ニュースでは先に事件の説明があり、そのあとでA子の成育歴を付けています。

今回私はそれを逆にして紹介しました。

先に成育歴、最後に事件を紹介しました。

このような事件を目にしたことはあるでしょう。

決して珍しいことではありません。

メディアは事件を紹介します。

裁判所は責任能力の有無を問題にします。

多くの事件はこのような報道の形をとります。

事件は防げなかったのか?

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