講座142 「対応力」のヒミツ
Kさんからの報告です。
1歳8ヵ月のM君のトイレトレーニング。
よかれと思ってを流すところを見せました。
![](https://win3.work/wp-content/uploads/2021/08/kids_toilet_training_toitore.png)
そしたら、その後、色んな物を便器に入れるようになったそうです。
ある日の「水没事件」の記録
■1回目
・絵本2冊
■2回目
・ママのサンダル(片っぽ)
・兄のサンダル(片っぽ)
・兄のスニーカー(片っぽ)
・本人のスニーカーA(片っぽ)
・本人のスニーカーB(片っぽ)
・本人のコップ
2回目は蓋がちょっと浮くくらいぎっしり詰まっていたそうです。
もし、我が子がこんなことをしたら…。
あなただったらどうしますか?
2.Kさんの行動
3.もし一人だったら? 目の前でやられたら?
4.対応力の秘密
5.まとめ
1.普通なら怒る
普通なら怒りますよね。
「どーしてこんなことしたの!」
通じないとわかっていても、怒りのやり場を子どもに向けちゃいますよね。
あるいは、
通じようが通じまいが、小さい時からの「しつけ」が大事だと思って、
本気で叱っちゃう親もいるかもしれません。
【Aタイプ】「怒り」のはけぐち
【Bタイプ】「しつけ」として叱る
50~80%以上の人がAかBに含まれるのではないでしょうか。
ところが、このお母さん(Kさん)は違いました。
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2.Kさんの行動
ぎっしり詰まったトイレを目にしたKさんがとった行動とは…
兄(小1)を呼んで爆笑した
「怒る」でも「叱る」でもなく、「爆笑」でした。
しかも、本人を呼ぶのではなく、お兄ちゃんを呼んでいます。
ま、本人を呼んで爆笑でもいいのですが、いたずらが余計ひどくなる可能性があるので注意が必要です。
Kさんはどうしてお兄ちゃんを呼んだのでしょう。
「これはスゴイ!」
「レアな光景だ!」
「誰かに見せたい!」
そっちに思考が行ったのですね。
本人を呼んで叱るという方向ではなく、別な人を呼んで笑うという方向。
これは最初から「本人を呼んで叱る」という気持ちがなかったんですね。
・1歳8カ月のMくんにこの事で叱っても仕方ない
・流すところを見せたのは失敗だった
最初から「そういう考え」を持っていて、「それよりコレ笑える!」と思ったのでしょう。
これを
子育てにおける「対応力」
と言います。
子育てって、何が起きるかわかりませんからね。
とっさの「対応」が必要になります。
「判断(考える)」では間に合いません。
考えている暇なんかありませんからね。その場で即行動です。
だから瞬時の「対応力」なんです。
今回はこの「対応力」がキーワードになりますから覚えておいてください。
話を進めます。
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3.もし一人だったら? 目の前でやられたら?
今回は、《これはスゴイ!》→《お兄ちゃんに見せよう!》
となったわけですが、もし、お兄ちゃんがいなかったらどうなっていたでしょう?
さらに言えば、もし、本人がいたずらをしている現場に出会っていたらどうなっていたでしょう?
意地悪な私はKさんにそのことを尋ねました。
Mが寝ちゃってたので怒っても仕方ないってのもあります。
何回もやられているので耐性ついているのもあるかと。
1人の時でMが起きてたら「駄目だよー」って言いながら片付けるかもしれない。
(夜寝る前にコップ2つやられましたそれは見つからないうちにこっそり片付けました)
目の前でやられて怒ったこともあると思います!怒ったというか叫んだというか「ぎゃー」って
叱るとしても「駄目だよー」ですから優しいですね。
目の前で出会ったら「ぎゃー 」ですから、「怒る」じゃないですね。
【Aタイプ】「怒り」のはけぐち
【Bタイプ】「しつけ」として叱る
Kさんの対応はAタイプでもBタイプでもありません。
【Cタイプ】「明るく」済ませる
まったく別なタイプですね。
しつこい私はKさんに聞きました。
「その寛大さはどこから来るの?」
そしたら、その回答がすごかったのデス!
私自身が幼少期に色々やらかしていたのですが、
家族が怒らないで笑い話にしてくれてたのも関係あるかもしれませんね。
母の大切な切手コレクションを家の壁中に貼ってしまったことあるんですよね。
でも、怒られた記憶はなくて、家族揃ってご飯食べる時に「今日K子がこんなことしたのよ〜」って笑われるという。大体小さい頃のいたずらはこんな感じです。
なんと、Kさん自身も母親から「明るく済ませる」で育っていたのです。
これ、関係あるんです。
Kさんの対応力の秘密はここにあるのです。
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4.対応力の秘密
「感情的に叱るのはよくありません。笑って育てましょう!」
みたいな事ってよく言われますよね。
育児書なんかにも、似たようなことはたくさん書かれています。
でも、どうですか?
すぐに実行できますか?
できませんよね。
普通はできないものなんです。できなくて普通です。
どうしてかというと、それは「知識」だからです。
「感情的に叱るのはよくありません。笑って育てましょう!」
これ、知識です。
「怒りたくなったら6秒待ちましょう」
これも知識です。
知識を使って考えるのは、脳の中の前頭前野(おでこの裏)です。
ここは「考える脳」です。
そして、「考える」っていう行動は意識的なものです。
人は、意識して考えるのです。
「あ!今ここで怒ってはいけない!6秒待つんだ!」
などと理屈で考えますよね。
この理屈が「知識」です。
ところがですね。
対応力って意識じゃないんです。
無意識なんです。
目の前でコップを便器に入れられても「ワーオ!」と明るく対応できるという行動は、
無意識
なんです。
考えてやっているんじゃないんです。
知識を使っているんじゃないんです。
自然に、瞬時に、何も考えずに、対応できてしまうのです。
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自動車学校の教習中の運転だと、知識を使っていろんなことを意識するはずです。
「ここでバックミラー確認!」とか、
「一時停止は2秒以上!」とか…。
でも普段のドライブだと運転技術を意識しませんよね。
自転車もそうですが、方法記憶という長期記憶によって「おでこの裏」を使わずに無意識に行動できるのです。
(意識しなさ過ぎて捕まることもありますが…)
【Cタイプ】「明るく」済ませる
Kさんの「明るく済ませる」も無意識なんです。
とっさに出たので多分そうです。
「幼少期の経験が関係あるんじゃないか」というのも無意識のことです。
無意識は知識ではなく経験からつくられるんです。
Kさんの子どもの時の経験は無意識レベルで影響しているはずです。
お母様からバトンを渡されていたんです。
ですから、他のお母さんたちが「明るく済ませる」という育て方をマネしようと思っても簡単にはマネできません。
「怒らない」「怒らない」
「明るく!」「明るく!」
と頭の中で唱えても、カレンダーに書いても、それは知識です。
経験ではないので、対応力にはなりません。
対応力というのは無意識レベルなんです。
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5.まとめ
【Aタイプ】「怒り」のはけぐち
【Bタイプ】「しつけ」として叱る
怒りのはけぐちになってしまってる人、
叱る癖がついている人、
「しつけ」として叱ることが「身について」しまっている人は、
ほぼ無意識にそうやってしまっているのだと思います。
『新ネットワーク思考』で有名なノースイースタン大学のバラバシ博士は、
人の行動の80%以上は無意識という習慣に従っていると報告しています。
日常の行動の多くは「対応」だと言っていいでしょう。
毎日が「教習」だったら大変ですよね。
![](https://win3.work/wp-content/uploads/2021/08/pose_kesshin_woman.png)
でも、「自分を変えたい」とか「自分の行動を改善したい」と考える人もいますよね。
そういう場合はどうしたらいいのでしょう。
東京大学の池谷裕二教授は2つのことをアドバイスしています。
(1)無意識の自分をコントロールするのは難しいと開き直る
(2)よい経験を増やす
(1)について池谷氏は「ヒトは自分自身に対して他人」とまで言い切っています。
脳は勝手に自動判定(対応)してしまいます。
無意識に勝つのは容易ではないということです。
でも、だからと言って変えることは不可能ではありません。
最初は知識の詰め込みだった車の運転も、慣れたら無意識に対応できるようになります。
自転車もピアノもスポーツも同じです。
Practice will not betray.
練習は裏切らない。
練習すれば可能です。
「よい経験」を一つ一つ重ねていけば、いつかは無意識になれます。
私は教師として「楽しそうに笑顔で授業をする練習」を重ねて来たので今では無意識にそれが出来ます。
Kさんは、「明るく済ませる」という経験をお母様から受け継いでそれを自分のものにしていました。
Kさんの子どもたちも、きっとその経験を無意識に受け継いでいくことでしょう。
Kさんとは違って、そのような経験を受け継いでいない人はどうするか。
新たな世代を育てるのが壮年期のテーマです。
我が子に「新しいバトン」を手渡してあげてください。
そのことが「家族の未来」を幸せにしてくれます。
参考:潜在記憶 Implicit memory(イケダマリカ)
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わが家の事件簿を取り上げて頂きありがとうございます。
親からありがたいバトンを受け取っていたのですね。確かに兄も弟がやらかしても笑うことが多いです。受け継いでくれているのかな?
うちは田舎なので小さい子には無条件で可愛がる文化が残ってます。
おじいちゃんおばあちゃんが小さい子が何をしても可愛いね〜っていうあの感じです。
とても大切なことを学べました。
ありがとうございます。