A 赤ちゃん学

講座143 食事で変わる脳の発達

投稿日:

今回は、

食事や生まれたときの体重でIQや行動が変わる

という話です。

今回のブログ記事の内容のほとんどは京都女子大学・辻 雅弘先生の発表が元になっています。

こちらが元の動画(約27分)ですが、今回はブログで、この動画の解説をさせていただこうと思います。

 目 次
1.出生体重と青年期・中年期の知能
2.日本の現状
3. なぜ低出生体重児が増えているのか
4.どうすればいいのか
5.エビデンス(科学的根拠)とは
6.まとめ

1.出生体重と青年期・中年期の知能

では始めさせていただきます。

最近発表された2017年デンマークでの研究です。

19歳、28歳、50歳でIQを調べました。

標準的な出生体重を3000~3500gとしています。

で、それより少し小さい赤ちゃん、2500~3000gで生まれた人はIQが低くて、

それは28歳、50歳になっても追いつかなかったという結果が出ました。

その差は2.6とか、3.35とか、平均すると偏差値で3ポイントくらい差があります。

2500g以下だと、この差は「6」になるそうです。

これ、発達検査をやったことのある人だとわかると思いますが、結構な違いです。

IQの真ん中は「100」ですけど、偏差値でいうと「50」です。

この偏差値が「6低い」ということは「44」です。

偏差値44ということは、学校の先生なら実感できると思いますが、

勉強を教える時に「ちょっと配慮してあげる」必要のあるお子さんたちです。

しかも、このデンマークの研究の価値は、

それが青年期、中年期になっても「続く」というところにあります。

この意味わかりますか?

本来ならIQって生涯不変なんかじゃないんです。

「教育」によって伸びたり縮んだりします。

それなのに、その差が続いているということは、

「少し小さい赤ちゃん」はIQの差を生涯抱える可能性が高い

ということです。

この研究結果の社会的価値は、私が考えるに、次の3つです。

(1)子どもを産む時は低体重に気をつけよう!

(2)現在の家庭教育は子どもの知能を伸ばしていないんじゃないか?

(3)現在の学校教育は子どもの知能を伸ばしていないんじゃないか?

こういう問題提起だと思うんです。

2.日本の現状

この研究結果はデンマークのものでした。

では、日本ではどうなのか。


先進国での低出生体重児を調べたデータがあります。

日本、ダントツです。

「10人に1人が2500g以下」です。

つまり、「10人に1人」が「偏差値44」という差を生涯抱えるという数値です。

ちょっと待ってください!

これはどういうことでしょう?

さっきの問題提起(1)~(3)に戻りますよ。

(1)子どもを産む時は低体重に気をつけよう!

(1)は、もはやヤバイということです。

先進国ダントツですからね。

「気をつけよう」というレベルではなくて、「喫緊の課題」です。

(2)現在の家庭教育は子どもの知能を伸ばしていないんじゃないか?

(3)現在の学校教育は子どもの知能を伸ばしていないんじゃないか?

(2)と(3)はどちらも心配ですね。自信ありますか?

低体重で生まれても、子育て環境が整っていれば、あとからいくらでも挽回できると思うのです。

思うのですけど、そういう環境(システム)が整っているかというと、自信はありません。

ちなみにうちの三女は母子手帳の発育曲線で超低出生体重児スレスレのエリアでした。

ポケットに入るくらいの小っちゃい子でした。

学年に100人いて一番前がずっと続きました。

でも普通に発達しましたよ。勉強は100人中1番か2番くらいでした。(^^)/

3. なぜ低出生体重児が増えているのか

なぜ低出生体重児が増えているのか。

辻教授は次のように言います。

いくつかありますが、一つは出産女性の「やせ願望」です。
極端な栄養障害じゃなくて少し栄養が少ないだけでも生涯にわたってIQが6も下がってしまいます。

そして、次のテーマが出てきます。

発達障害

生まれたときの体重が軽いほどADHDになりやすいという研究結果が出てきます。

この研究結果はフィンランドのものです。

辻教授は次のように説明します。

体重が小さければ小さいほど指数関数的にADHDになってしまいます。
つまり、ちょっとでも低いと、なる率がどんどんどんどん上がります。

これは人間を使った研究ですから臨床研究です。

多分、日本でも同じだと思います。

で、「なぜこんなことが起こっているか」という説明が続きます。

これも研究で説明がつくのですが、人間でやるわけにはいかないので動物実験となります。

その実験のやり方を説明します。

➀ラットの子宮につながる血管を少し縛って血液が少し足りないようにします。
②こうすると「栄養が少し足りない」状態になります。
③そうするとやはり「小さく」生まれてきます。
④生まれたラットを自由に行動させてビデオで追跡調査します。
⑤コンピューターで解析すると次の2つのことがわかります。
・低出生体重ラットは激しく動き回る。
・低出生体重ラットは自分以外のラットに興味を示さない
⑥このことから「多動性」と「社会性の欠如」が結びつく
⑦また、脳の形状を調べると大脳白質の体積が低出生では小さくなっていた。

4.どうすればいいのか

では、どうすればその低くなったIQや発達障害などを治せるのか。

辻先生は次のように言います。

栄養が足りなくてなったのだから、
治すのもやっぱり栄養で治せないかということです。

まずはアメリカの研究結果です。

妊娠中にお母さんが魚を食べると、生まれた子のIQが3.9上がる。

アメリカでは「週2回シーフード食べましょう」という啓発があるそうです。

でも、これは生まれる前の話なので、生まれてしまってからの研究が次に紹介されます。

今度はイギリスの臨床研究結果です。

母乳で育った子どもは、人工乳で育った子どもよりIQが8.3高かった。

8.3ってすごいですよね。

IQで8.3の差は偏差値でいうと5~6くらいだと言います。

これだと「-6」のリスクをクリアできますね。

ただし、研究って奥が深いんです。

辻先生はこう言います。

「母乳で育った子のIQが8.3高かった」のは事実なんですけど、
「母乳で育てたらIQが8.3高くなる」かどうかは別問題。

ここがキモです。

これ、わかりますか?

辻先生は言います。

これ、観察研究なんです。

観察研究は仮説を立てて因果関係を調べる方法ではありません。

偶然そうなっただけかも知れません。

事実は事実なんですけど、関係性が明らかじゃないんです。

・母乳で育てたお母さんの中には、食事に対して関心が高いお母さんもいる

・人工乳で育てたお母さんの中には、母乳が出なくて仕方なく人工乳で育てたお母さんもいる

比較する集団を分けていないんですね。

だから、「比べられない」というわけなんです。

そこで、今度はブラジルの研究です。2015年ですから割と最近です。

母乳群と人工乳群に対して、意図的に集団を分けて補正をしてみました。

様々な条件を付けて「母乳の場合」と「人工乳の場合」を比べてみたんです。

これを「コホート研究」と言います。

その結果がこれです。

「<1」というのは、母乳で育てた期間が「1ヵ月未満」、つまり「ほとんど人工乳」という集団です。

「≧12」というのは、「12ヵ月以上」母乳で育てたという集団です。

そうすると、母乳群の方がやっぱりIQが明らかに高かったという研究結果です。

で、辻先生は言います。

これでどうですかね?
これで「母乳で育てると子どものIQが上がる」と言えますかね?

数値だけを見ると「やっぱり母乳だ!」という感じになりますが、

実は、コホート研究も「観察研究」に過ぎません。

研究ってシビアなんです。観察だけでは説得できないんです。

説得力を持たせるためには「介入試験」が必要

ランダム試験ですね。

この研究の場合ですと、

・コインで表が出たら、あなたは母乳で育ててください!

・裏が出たら、あなたは人工乳で育てて下さい!

というように強制的に「介入」をするということです。

こうすることによって初めて「比べられる」というわけです。

エーっ!そんなことできるの⁈

となりますよね。

倫理的にどうなの?ってなりますよね。

それがあるのです。

ベラルーシの大規模無作為割付試験です。

実は、この研究には工夫があります。

群を分ける時にですね、

A:あなたは「自由に選べる人のグループ」です
B:あなたは「母乳で育てたい人のグループ」です

と言って強制的に介入したのです。

これ、Aになった人は自由に選べますから倫理的に問題ないですよね。

で、Bになった人は「母乳で育てたい人のグループ」ですから育てなくてもいいのです。

「~たい」ですから。

ただし、ここに工夫があって、Bになった人には母乳育児の良さを積極的にアピールします。

母乳はこんなに優れていますよってことを教育するわけです。

ただし、「~たい」ですから最終的には「それでも結構です」と辞退して構いません。

しかし、結果的に「母乳にします!」と自ら進んで母乳を選んだ人が多く出て、

研究が成立したというわけです。

そして、気になるその結果ですが、

母乳群の方がIQで5.9高かったということです。

辻先生は言います。

これで決まりです。
納得せざるを得ないんです。

母乳の有効性が証明されているということです。

科学研究としてはこれでもう決まりですよね。

5.エビデンス(科学的根拠)とは

せっかくですから辻先生のお話を「エビデンス・ピラミッド」に照らし合わせて確認してみましょう。

介入研究ってめちゃくちゃエビデンスが高いですね。

動物実験がずっと下の方にあります。

で、せっかくですからもっと凄いピラミッドも紹介させてください。

凄いですね、このピラミッド!

一番下は「個人の感想」です。

下から二番目はテレビに出ているような「コメンテーターによる話」です。

真ん中くらいに、ニュース番組が大好きな「専門家の意見」が出ています。

これで見ると「ランダム化比較試験」の高さが一層よく伝わります。

6.まとめ

長くなったのでそろそろまとめます。

少し話を戻しますと、

低くなったIQや発達障害などを栄養で治せるのか

という話でした。

辻先生のお話を伺うと、その秘密が母乳に含まれる栄養素にあるという展開になります。

それに関する内容を知りたい方は辻先生の動画をご覧ください。

今回の私の記事タイトルは「食事で変わる脳の発達」でした。

食事や生まれたときの体重でIQや行動が変わる

この命題に対する結論は既に出すことが出来たと思います。

まず、生まれたときの体重で変わることが分かりましたよね。

生まれたあとの食事(母乳)の影響も分かりました。

うちの三女が「小さかった」という話をしましたが、

実は出生時の体重は3000gちょっとあったんです。

しかし、「母乳が出ない」という事態と「人工乳嫌いの赤ちゃん」という事態が重なって、

小っちゃいままに育ったんです。

運がよかったのは、この子が「魚介類大好き」だったところです。

ちなみに三女は勉強を頑張って管理栄養士の資格を取りました。

栄養学の勉強を一通りマスターしています。

ですから、私の「個人的な感想」ですが、

母乳以外にも、生まれた後の食事で発達は変わる

ということが言えると思います。

発達障害の食事が気になる方は、過去に私のYouTube動画でまとめていますので参考までにご案内しておきます。

辻先生の発表と違ってエビデンスは低いですけど、内容はだいたい適正だと思います。

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-A 赤ちゃん学

執筆者:


  1. 畠山文 より:

    とても興味深いですね! 娘は2900g代、3000gまであと少しという出生体重でした。しかし、その後は完母で成長曲線の上をずっと行く成長です。

    3歳の時の発達検査のIQは高めでしたが、5歳の今、ちょっと注意力が低い気が、、、関係あるのか?興味深いです。

    母乳は、栄養以外にも、必ず肌と肌が触れあうのと、母乳育児がうまく行くと、母親のホルモンバランスも安定し、心が安定して、それらが子供の発達に良い影響を与えるのかな?とも思いました。

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