講座112 学校は身近な「秘境」

 目 次
1.参観日ガード①
2.参観日ガード②
3.親以外も「普段」を見ることはできない
4.学校現場は「秘境」
5.教員養成制度の現実

1.参観日ガード①

保護者の方は「普段の教室」「普段の我が子」を見ることはできません。

先生も我が子も「意識」するからです。

子ども:「見られているからちゃんとしよう」

先生:「ちゃんとしているところを見せよう」

先生と子どもの目的が一致します。このガードは強固です。

2.参観日ガード②

参観日は保護者が我が子の様子を見に来るイベントです。

保護者:「うちの子はちゃんとやってるのか?」

先生:「できるだけ子どもの出番を増やそう」

そこで先生は、

「子どもたちが発表し続ける授業」とか、

「子どもたちがものを作り続ける授業」などをします。

これは先生にとってラッキーです。

「自分」が見られる時間が減るので、助かります。

教師中心の授業だと自分が見られて緊張しますからね。

これもまた、「普段の授業」「普段の教室」ではないわけです。

3.親以外も「普段」を見ることはできない

たまに、教育委員会とか議員の方が視察に来ます。

当然ながらそのときも「普段」ではありません。

先生にも子どもにも「ちゃんとしているところを見せよう」という意識が働きますからね。

普段は立ち歩いている子でも最初から席に着いて待っています。

教科書だって、その日にやるページを開いて、手でアイロンをかけて準備してます。

まだ休み時間なのに(チャイムが鳴っていないのに)全員そろっていたりなんかします。

このように「普段の教室」を見ることは、とても難しいことなのです。

(しかし、見る人が見れば数秒でわかります。そのクラスがどんな状態か。先生はどのくらいの腕か。わかるのに1分も要りません。)

4.学校現場は「秘境」

私は教員時代に軽く100回以上の授業を参観をしてきましたが、

教室の雰囲気は次のように分かれます。

A:子どもも、教師も、特別な雰囲気(約9割)
B:子どもも、教師も、普段通りの雰囲気(約1割)

10:1くらいの確率で「普段通りの教室」に出会います。

Bの理由は単純です。

「普段通りの授業」をするからです。

お客さんが来ているからと言って特別な授業をするのではなく、

「いつも通りの授業」を「いつも通りに」始めるからです。

それが子どもに伝わります。

「あ、いつも通りやればいいんだな」と。

逆に言えば、Aの教室は「いつも通り」じゃないんですね。

まだ休み時間なのに、先生が黒板の前に立っている。スーツまで着ちゃってる、とか。

まだ休み時間なのに、多くの子が席に着いている。自分も席につこうかな、とか。

教室に一歩足を入れればわかります。

いや。廊下を通っただけでわかります。「守り」に入っているな、と。

ですから、一般の人が「普段の教室」を見ることは、とても難しいことなんです。

テレビカメラなどの取材が入ったら、なおのことです。

あれはフィクションです。しかも編集や演出が入ります。

私も何度か取材を受けたので実感しています。

学校現場は秘境

身近な所にあるのに、普段の様子を知ることが難しい。

見ようと思っても見ることができない。

そのくらいの認識を持っていただいて構わないと思います。

5.教員養成制度の現実

前回までに「2時間目・算数」の解説をしてきました。

算数の授業の最初の「55秒間」です。

皆さんはこの「55秒間」をご覧になって、どのように感じましたか?

・立ち歩いている子がいる
・教科書を準備していない子がいる
・なんだか騒がしい
・変な声を出していた
・誰も参観者を気にしていない

それは「普段の授業」だからです。

①教科書を机の上に出せない
②ページを開けない
③問題番号を見つけられない
④ノートに写せない
⑤終わった後に何をしたらいいか分からない

こういう子がいるのが「普段の授業」「普通の学校」です。

したがって教師には、このような子に対応するための授業技術・授業スキルが求められます。

しかし、多くの教師はそうした技術、スキルを身につけないまま現場に立たされます。

それが日本の公立学校の現状です。

だからどうなっているか。

①教科書を机の上に出せない

「出していない子は休み時間なしです」
「先生!○○君が教科書を出さないまま遊びに行きました!」
「呼んで来なさい!」(子どもの間で警察と犯罪者が生まれる)
「先生!逃げちゃいました!」
「わかりました。放送で呼び出します!」

②ページを開けない

先生はその子に気づかないまま授業を始めてしまいました。
「先生、何ページですか?」
あとから聞いて、叱られます。
「ちゃんと話を聞いてなさい!」

③問題番号を見つけられない

(いいや。テキトーにやっちゃえ!)と思ってやったら、違うところだった。
もうやる気しない。

④ノートに写せない

机の左に教科書、右にノート。
教科書とノートが遠い時には、見やすいように配置を工夫する。
覚えきれない時は言葉のかたまりごとに頭に入れて(作業記憶を使って)書き写す。
線は定規を使って、落ち着いて、ていねいに、書く。
そうした学習技能を低学年の時に経験していないので、「写す」ことさえ困難、面倒さを感じてしまう。

⑤終わった後に何をしたらいいか分からない

ひとつ終わったらボーっとしてしまう。
ひとつ終わるごとにボーっとしてしまう。
先生はその子に声をかけずにどんどん進んでしまい、
気づいた時には全然進んでいない、ということになる。
「○○君だけ休み時間もやってなさい!」と叱られる。

①~⑤のような子が存在するのが「教室」です。

そのような子たちに対応する技術、スキルがない教師は、

ここに書いたような不適切な対応に陥るリスクを多分に持っています。

それでも、なんとかなるのです。

見られる時は「特別」ですから。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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3件のフィードバック

  1. 畠山文 より:

    授業についての数回に渡る記事、先生には必要なスキルがあるのに、教師になるまで教えてもらう機会が無いのは驚きでした❗

    私はどちらかというと、言われたことをすぐできない、机の中はぐちゃぐちゃで、授業に必要なものがすぐに取り出せない、いつも、回りからワンテンポ遅れている、そんな子供でした。挙げ句、宿題はやらない(笑)

    先生を随分困らせたなと思っていますが、先生にスキルがあれば、お互い、そこまで困らずに済んだのかなと感じました。

    そして、なぜか、小学校6年間のうち、ほとんど、新卒や教師歴が短いと思われる若い先生が担任になることが多かったです。余計、お互い困っていたかもしれませんね。

  2. 畠山文 より:

    回り ではなくて 周り でした。
    ついでに、小学校低学年のうちは、忘れ物も毎日していました(笑)

  1. 2021年6月2日

    […] 講座112で「学校は秘境」ということを書きました。 […]

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