講座523 子育ては「人」の行為
2.「幼児らしさを使い切る」
3.乱暴な行動
4.向山先生の対応
5.子育ては「人」の行為
1.遊ぶのが仕事
昨日、孫が遊びに来ました。
家に入って、ジャンバーを脱ぐと、すぐに「おもちゃ」のある場所に行って「おもちゃ」を出します。
これまで何十回と家に来ていますが、毎回同じです。
2歳10カ月。
遊び盛りです。
遊ぶのが仕事です。
もう頭の中は遊ぶことしか考えていない、という感じです。
朝になって目が覚めたら遊び、夜になって疲れ果てて爆睡し、
夢の中でその日の体験を反復する。
そんな時期です。
孫を見ていると、一日中「フロー状態」にあるような気がします。
時々、何か考え事をしているような表情を見せますが、
そういう時は、頭の中で一所懸命に何かを想像しているのでしょう。
そうやって毎日どんどん脳のネットワークを強化しているのだと思います。
2.「幼児らしさを使い切る」
幼児期の発達課題は「幼児らしさを使い切る」です。
幼児期に「幼児らしさ」を使い切った子は小学生になった時に「子供らしい子」になります。
「子供らしい子」というのは、
子供らしく素直であること
子供らしくズル賢いこと
子供らしいく自信満々であること
子供らしく泣き虫であること
子供らしく好奇心旺盛であること
子供らしく元気であること
そういう子供です。
その逆は、
どこか影があったり、
どこか大人びていたり、
どこかひねくれていたり、
どこかびくびくしていたり、
どこか陰湿だったり、
どこか生きる気力に欠けていたり、
そういう悲しさを背負った子供です。
3.乱暴な行動
孫は「おもちゃ」を並べ始めると次にするのは私を遊びに誘うことです。
家に入ってから3分後くらいにそうなります。
その後、私は2階に連れ出されます。
2階にはお気に入りの「ぬいぐるみ」があるので、それを使って「ごっこ遊び」をするわけです。
私は1時間くらい「ごっこ遊び」の相手をします。
ある時は「リッラクマ」になり、
ある時は「ウイルス」になり、
そうかと思えば急に「ジイジ、こっち来て!」と指示されクローゼットの中で横になります。
ずっと続くので「終わり」がありません。
もういい加減、疲れて来たところで私が誤魔化して「ごっこ」を終わらせます。
しかし、最近はその「誤魔化し」が通用しなくなりました。
昨日は、遊びをやめようとすると、ちょっとした隙に私の眼鏡をあっという間に取り外し、
部屋の中に隠してしまいました。
「返して」と言っても返してくれません。
「目が見えなくなっちゃった」と困ってみせてもダメです。
とっても意地悪です。
この「あっという間の行動」は、ある意味「暴力」です。
乱暴な行為です。
幼児が人に対して乱暴な行動をするのは、しばしば見られることです。
そういう時、親や保育者が取る行動は3つに分けられます。
①無理やり抑えつけたり、無理やり取り返したりする
②怒る
③それ以外の対応をする
4.向山先生の対応
東京に私の師匠の向山洋一先生がいらっしゃいます。
向山先生には3歳になる「あおちゃん」という女の子のお孫さんがいらっしゃいます。
ある日、向山先生があおちゃんと遊んでいる時に、お兄ちゃんとの小競り合いが始まって、
よくわからない状況の中であおちゃんが向山先生の手をピシッと叩きました。
乱暴な行為です。
その時に向山先生が咄嗟に言った言葉は、
「仲良くしよう」でした。
強い言動は微塵もなく、その雰囲気もありません。
あおちゃんは走ってその場から去ってしまいました。
5.子育ては「人」の行為
幼児が人に対して乱暴な行動をするのは、しばしば見られることです。
人の脳は大雑把に言って「二階建て」です。
動物脳の上に人間脳が乗っかっています。
幼児期の人間脳(前頭前野)はまだ未発達です。
ですから、感情脳にスイッチが入ってしまうとそれを制御するのが簡単には出来ません。
それも「幼児らしさ」の一面です。
そんな時、親や保育者はどんな行動を取るべきか。
無理やり抑えつけたり、無理やり取り返したりする行為は「乱暴」を強化します。
怒ったり、怒鳴ったりする行為はそのまま「お手本」になります。
京都大学の森口佑介氏は1月10日のダイヤモンド・オンラインで次のように述べています。
親のかかわり方の中でも、子どもの攻撃性に影響するのは、言葉を使ってではなく、身体的に子どもを管理しようとする接し方です。たとえば、親が子どもを掴んだり、押したり、叩いたりなどのかかわり方をすると、子どもの攻撃性が高まると考えられています。これは、親が身体的に子どもを管理する様子から、子どもは身体的に他者を管理することを学ぶため、身体的な攻撃性が高まると考えられています。出典:「年長~小学生男児の攻撃性が女児よりも高い2つの理由、親の責任は重大だった!?」
経験的によくわかります。
私は小学校一年生の担任を6回経験しました。
教師に表れる子供達の姿は保護者の言動と重なって見えます。
汚い言葉を使うお子さんは、同じような言葉を保護者の方が使っているように思えました。
それとは逆に、丁寧な言葉を使うお子さんの後ろには、そうした家庭の様子が目に浮かぶものでした。
その後、私は若いお母さん方への「子育て講座」をするようになりますが、
だからと言って、「そんな言葉を使わないように」とか、
「力づくで対応してはいけません」などと言ったことは一度もありません。
なぜなら、お母さんが「我慢」しなければならないからです。
一日中家の中で「幼児」の相手をしているお母さんにとって、「幼児らしさ」は時にストレスとなります。
いつでも理想的な対応をすることは出来ません。
子育てにとって最も重要なのは「お母さんが明るく元気」ということです。
無理はいけません。
そして、その「無理さ加減」は人によって様々です。
すぐに怒ってしまうタイプのお母さんに対して「すぐに怒らないように」と言ってもハードルが高過ぎます。
いろんなお母さんがいて、それぞれのお母さんに「抱えてるもの」があります。
ですから、「知識」としては紹介しますが、
それを「実行」しろとは言いません。
子育てwin3計画の理念は「親によし!子によし!世の中によし!」です。
どれかが欠けた子育ては、どこかに「無理」があるのです。
どれが欠けても正解ではありません。
子育ては人間がするものですから「人間らしさ」が欠かせません。
人の発達段階は、人間が人間らしく成長していく階段です。
そんなことを考えながら孫と一緒に遊んでいます。