講座44 発達障害は病気なの?

 目 次
1.発達障害は病気なの?
2.発達障害は治るの?
3.発達障害「それじゃあ何なの?」
4.あの人は発達障害?

1.発達障害は病気なの?

 病気というのは「治る/治らない」で考えるものです。
 口内炎という病気になったら「イヤだな」「治したいな」と思うでしょう。
 「治す」とか「治せる」とかを考えられるのが病気です。

 一方、障害というのは、日常生活に「制限があるか/ないか」で考えるものです。歩行障害のある人には「歩けない」という制限があります。視力障害のある人には「見えない」という制限があります。
 日常生活に「制限があるか/ないか」で考えるのが障害です。

 この二つは全く別物です。 

答え:病気じゃない!

 本当は「発達障害って病気なの?」という質問がおかしいのですが、世間の人は、つい知りたがっちゃうのです。
 もしも聞かれたら「病気じゃありません」と答えましょう!

2.発達障害は治るの?

 発達障害は「病気」ではありませんので、「治る/治らない」の問題ではありません。

答え:「治る/治らない」の問題ではない。

 これが答えです。
 もし、しつこく聞いて来る人がいたら、もう一度「障害」の意味を教えてあげましょう。障害とは「日常生活に制限があるか/ないか」を考えるものです。「治るか/治らないか」ということは考えません。

 ここまでを一度まとめておきます。

3.発達障害「それじゃあ何なの?」

「じゃあ、発達障害って何なの?」という話になりますよね。

 以前の動画で「発達障害の関係式」というお話をしました。
 「発達の凸凹」だけは「発達障害」とは呼ばない。
 「発達の凸凹」にプラスして「周囲とうまくいかない」という状況が発生した時に「発達障害」と呼ぶ。
 この状況が「日常生活に支障をきたす」=「制限される」ということになります。そして、そうならないためには「周囲の環境」が大切ですという話でした。「周囲の環境」とは「人」です。まずは大人の理解が大切です。

 もうこの関係式だけで説明できるようなものなのですが、これだけじゃ不安だという方のためにもう少し突っ込んで説明します。

 発達障害とは、その名の通り「発達の障害」です。
 発達が凸凹なのです。
 実際の年齢に比べたら、少しだけ不十分という感じでしょうか。
 でも「全く発達しない」というわけではありません。
 年齢が上になれば発達する場合もあります。
 運動・スポーツをすれば発達する場合もあります。
 生活習慣(早寝早起き・食生活)がちゃんとなれば発達する場合もあります。
 フロー体験といって何かに熱中する体験によって発達する場合もあります。

 私はASD(自閉スペクトラム障害)だと自分で思っています。
 今は「障害」までには至っていないと思いますが、子どもの頃は多分そうだったと思います。
 これまでの人生で「大きな変化」があった3回ありました。

 1回目は小学校5年生の時です。
 担任の先生に「帰りの会」で勉強のことをほめられました。
 そのことが自信になって勉強するようになりました。

 2回目は高校生の時です。
 運動部に入り、ランニングが日課になりました。
 走るのが好きで毎日5km、10km、時には20kmと走っていました。
 このときに内向的な性格が変わりました。
 積極的に後輩を指導するようになり、大学ではキャプテンも務めました。

 3回目は社会人になった時です。
 仕事が楽しくて、仕事に熱中しました。
 狂ったように研修し、授業の準備に打ち込みました。
 この時は「顔つき」まで変わりました。
 それまでのボンヤリとした表情が「ひきしまった表情」に変わりました。
 写真を見ると明らかに違います。

 年齢、運動、生活習慣、熱中体験…。
 どれが決定的な要因かは人によると思いますが、私は自分の人生を通して「発達」を実感してきました。

答え:発達するもの

 「それじゃあ何なの?」と聞かれた時、私は自分の実感から、「発達障害とは発達するものです」と答えたいです。

 ここをまでをまとめます。

4.あの人は発達障害?

 世の中には「発達障害」だと言われている大人がたくさんいます。
 ネットで検索すればたくさん出て来ます。
 野球選手、ミュージシャン、歴史上の人物、映画俳優、コスプレアイドル、オタク有名人、それに、なぜかお医者さんに多いと言われてますね。

 でも、そう言われている人たちは本当に発達障害なのでしょうか?
 私は、多くの場合、違うと思っています。
 有名人に限らず、社会で活躍している大人、社会人は自立しています。
 それはもう「周囲とうまくやっている」と考えていいと思います。
 凸凹(個性)は残っているでしょうが、もはや「障害」ではない。
 そういう人がいっぱいいると思うのです。 

 たとえば、坂本龍馬はADHDだと推測されていますが、亡くなった母親の代わりに育ててくれたお姉さんの「とめ」が、龍馬の理解者だったことが知られています。
 発明王・エジソンは母親のナンシーが理解者だったことが有名ですが、エジソンの実験回数も半端なく有名です。
 こうした「環境」や「体験」が発達に影響したのは間違いないと思います。

答え:世の中で「発達障害」だと言われている有名人はもはや発達障害とは呼べないのではないか。

 そんなことよりも、発達障害は病気などではなく「発達するものだ」という考え方を広めることの方がよっぽど重要なのだと考えます。

 以上、ざっくりと進めて来ましたが、こうしたシンプルな考え方を共有することが、まだまだ必要だと思っています。

参考図書:杉山登志郎『発達障害のいま』

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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