講座41 発達障害・教師が困っていることランキング

 『TOSS特別支援教育』(東京教育技術研究所)2015年創刊号は「発達障害の子に教師が困っていることランキング」を発表しました。
 その10位~1位を紹介します。

 目 次
1.教師が困っていることランキング
2.四大発達障害
3.発達障害の子の割合
4.子どもたちが背負っているリスク
5.発達障害「環境のABCD」

1.教師が困っていることランキング

第10位 ずっと話をすること

第9位 授業中に口を挟まれること

第8位 学習意欲がないこと

第7位 負けや失敗を認めないこと

第6位 時間がかかること

第5位 書くのが苦手なこと

第4位 指示に従わないこと

第3位 暴言を吐くこと

第2位 乱暴をすること

 さあ、第1位は何でしょう?

「発達障害の子に教師が困っていることランキング」

ですよ。

 保護者の方は予想できないことが多いです。

 でも、学校の先生方の多くは、

「ある!ある!」

と、うなずきます。

 第1位は…

第1位 強くこだわること

 この「強くこだわる」とうのは、

ASD(自閉スペクトラム障害)

の子の特性の一つです。

 ランキングと特性を関連づけると次のようになります。

 いろいろありますが、これらをすべて覚える必要はありません。

2.四大発達凸凹

 代表的なのは次の四つです。

ADHD(注意欠如・多動性障害)
Attention Deficit Hyperactivity Disorder

ASD(自閉スペクトラム障害)
Autistic Spectrum Disorder

LD(学習障害)
Learning  Disorder

DCD(発達性協調運動障害)
Developmental Coordination Disorder

 これでもまだ難しいですよね。
 どんな特性なのかをザックリと説明します。

ADHD:理解力はあるのに行動面で困難を持つ

 頭ではわかっているのに行動できないという特性です。
 これは「コントロール系」の障害です。

ASD:勉強はできるのに対人関係に困難を持つ

 感情のコントロールが難しいので人とよくぶつかります。
 これは「コミュニケーション系」の障害です。

LD:他のことはできるのに特定の勉強に困難を持つ

 「特定の勉強」というのは、計算だけができないとか、音読だけが苦手だとか、文章を書くことが苦手だということです。
 これは「学習系」の障害です。

DCD:多くのことはできるのに不器用さを持つ

 手先が不器用とか、動作が遅いとか、運動音痴とかですね。
 これは「運動系」の障害です。

 大事なのは全部に「のに」が付くことです。
 この「のに」が付くばかりに、

障害だと理解されないケースがたくさんあります。

 「努力不足」だとか、「集中力が足りない」だとか、「やればできる」と思われてしまうんです。
 叱られることが多く、本人は困っています。

 

3.発達障害の子の割合

 発達障害の子どもたちは教室に約2割存在すると言われています。 

 この「約2割」は、多くの発達障害の子を診てきた医師の意見と長年現場を経験してきた私の実感です。公式とは言えないのかも知れません。
 しかし、他の多くの先生方に聞いても大きなズレはないと思います。
 このことをもう少し詳しく解説します。

 30名のクラスで言うと、2割=6名です。
 この6名のうち3名は、すでに何らかの支援を受けている子たちです。
 特別支援学級に在籍していたり、通級教室を利用していたりします。
 しかし、残りの3名は「支援なし」です。
 発達障害が疑われているんだけど支援を受けていない子どもたちです。

「支援あり」と「支援なし」の違い

 「支援あり」は、保護者も教師も「特性」を理解しようとします。
 これはその子にとっていいことです。
 頭ごなしに叱られるリスクが減ります。

 問題は「支援なし」です。
 次のケースが考えられます。

 ①保護者も教師も子どもの発達障害に気づいていない
 ②保護者は気づいているけど教師が理解していない
 ③教師は気づいているけど保護者が理解していない

 このような子どもたちが教室に「3名」というイメージです。

4.子どもたちが背負っているリスク

 「支援あり」は、保護者も教師も発達障害を「理解」しているという前提で話を進めます。
 そうすると、リスクを背負っているのは①~③の子どもたちです。
 どんなリスクがあるか。
 一番大きいのは「自己肯定感の低下」です。

 「~なのに」ということで叱られることが多くなるリスクです。
 「みんなはできるのに自分はできない」という自己否定のリスクもあります。
 叱られることも自分を否定することも自己肯定感を下げます。

 そうならないようにするために支援(理解)が必要なのです。

 最初に「教師が困っていることランキング」を示しましたが、
 「困っている」の中身が問題です。
 発達障害を理解した上で困っているのと、
 理解していないで困っているのでは天と地の差があります。
 「~なのに」が、
 「なんでできないの!(プンプン!)」とか、
 「オマエやる気があるのか!(怒)」
といった対応を生んでしまっていたら大問題です。

「困っていること」は「理解しなければならないこと」

 これが大前提です。

5.発達障害「環境のABCD」

 同じことが保護者にも言えます。
 発達障害の子どもにとって、保護者と教師は環境です。
 居心地のいい環境であれば成長・発達が期待できますが、
 理解のない環境は成長・発達を阻みます。
 子どもは自分を責めてしまいます。

 発達障害の子の環境は四つに分かれます。

 A 親も教師も理解している環境

 B 親は理解しているけど、教師が理解していない環境

 C 教師は理解しているけど、親が理解していない環境

 D 親も教師も理解していない環境

 望ましいのはもちろんAです。

 Bの場合は家庭から学校に働きかけましょう。
 一日でも早い方がいいです。
 子どもにとっては毎日のことですから。
 直接言えない場合は手紙に書いてもいいです。
 担任が理解してくれない場合は教頭先生に言いましょう。
 教頭先生は学校の窓口です。必ず動いてくれます。

 Cの場合は意外と簡単です。
 親が考え方を変えればAになります。
 先生が理解をしてくれているのですから、
 先生にアドバイスをもらうと連携ができて効果倍増です。

 Dは子どもにとって一番つらいケースです。
 子どもは自分を責め続けます。
 しかし、社会には、こうした状況をなくすために動いている人たちがいます。
 理解者を増やしていくことが大切です。
 発達障害の子にとって「社会」も環境です。
 社会を変えていきましょう。

 理解は、案外ちょっとしたことのすれ違いかも知れません。
 一人一人のちょっとした行動が大切なのだと思っています。

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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