講座344 離乳食のウソ!ホント?
子育ての世界では、何が本当かを見極めるのが難しいものです。
今回は「離乳食のウソ!ホント?」と題して、正しい離乳食の在り方に迫ります。
2.補完食と捕食
3.「捕食」の考え方
4.スプーンで食べさせる時も「捕食」
5.離乳食【総まとめ】
1.厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」
厚生労働省が「授乳・離乳の支援ガイド」を出しています。
このガイドは、「最新の知見や授乳・離乳を取り巻く社会環境等の変化を踏まえ」保健医療従事者向け作成されたものです。
各自治体の保健所や保健センターもこれを参考にすることでしょう。
しかし、このガイドに書かれている内容に疑問を持つ専門家も少なくありません。
かくいう私も「違うんじゃないかな?」と思っている一人です。
どこが疑問なのかを取り出してみます。
離乳とは、成長に伴い、母乳又は育児用ミルク等の乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するために、乳汁から幼児食に移行する過程をいい、その時に与えられる食事を離乳食という。(「授乳・離乳の支援ガイド」)
簡単に言いますと、「離乳食は補完食だ」という考え方です。
そして、これと異なる考え方が次です。
離乳食は捕食(食べに行く行動)だ
離乳食は「補完食」なのか?「捕食」なのか?
この二つは何が違うのか?
これが今回の大きなテーマです。
2.補完食と捕食
二つの違いはこの写真に凝縮されています。
知っている人はこの写真だけですべてを説明できるはずです。
補完食の代表として「八分粥」を出しました。
①お粥は米ですから炭水化物です。
②八分粥はペースト状になっています。
③スプーンを使って赤ちゃんの口に持って行くと思います。
捕食の代表はブロッコリーです。
①ブロッコリーは野菜です。
②ブロッコリーは固まりです。
③スプーンもお皿もありません。赤ちゃんは手でつかみます。
どうでしょう。
二つの違いが見えて来たのではないでしょうか。
「補完食」と「捕食」では考え方がかなり違います。
厚労省のガイドでは次のようにあります。
離乳の開始とは、なめらかにすりつぶした状態の食物を初めて与えた時をいう。
ですから、離乳食と言えばこんなイメージになります。
ここでもスプーンが出ています。
このスプーンは誰が使うと思いますか?
赤ちゃんではありません。
離乳食が始まる時期の赤ちゃんはまだスプーンを使えません。
スプーンが使えるようになるのは1歳~1歳半くらいです。
それに対し、離乳食は6ヵ月くらいから始まります。
ですから「補完食」では親が口元まで運んで食べさせてあげなければなりません。
ここです!ここが重要なのです。
次のことを確かめる必要があります。
もしかしたら赤ちゃんは自分で食べられるんじゃないのか?
デンバー発達判定法で調べてみましょう。
赤ちゃんが「自分で食べる」ようになるのは「6ヵ月」の時期です。
これは他の発達検査(津守稲毛式や遠城寺式)でも同様です。
赤ちゃんは生後6か月で自分から食べることができる
それなのに、世間の常識はこうなっています。
6ヵ月を過ぎたら離乳食をあげなくちゃ!
(ペースト状のものを作って、食べさせてあげなくちゃ!)
これって結構大変なんです。
料理と一緒で工夫して作ってあげなきゃなりません。
しかも、せっかく作った離乳食なのに、嫌がって食べない場合がよくあります。
そうなるとお母さんは挫折したり、イライラしたりします。
・赤ちゃんが食べてくれない!
・私はうまく食べさせられない!
そういった感情に襲われます。
これが「補完食」が抱えている問題点です。
3.「捕食」の考え方
赤ちゃんは生後6か月で自分から食べることができる
だったら、自分で食べられるものを用意しよう!
これが「捕食」の考え方です。
ペースト状のものはつかむことが出来ません。だから固形です。
スプーンはまだ使えんません。だから手づかみです。
自分から食べることを考えた離乳食が「捕食(捕まえて食べる)」です。
ですからメニューもこうなります。
「自分から食べることができる」というのは能力です。
この能力が6ヵ月くらいに備わります。
ところが、離乳食というとペースト状のものを出されることが多いので多くの赤ちゃんがその能力を発揮できずにいます。
「自分から食べる」という自主的・自発的・主体的・積極的な行動が抑えれれているのです。
一部の勉強熱心なお母さんたちだけがそのことを知っているというのが現状ではないでしょうか。
4.スプーンで食べさせる時も「捕食」
捕食の考え方はペースト状の離乳食を否定するものではありません。
根本にあるのは赤ちゃんの「自分で食べる」という能力を発揮させることです。
ですから、捕食の考え方はスプーンで食べさせる時にも表れます。
ポイントは口の中まで入れてしまわないことです。
唇を使って自分から捕食行動をするように促すのがポイントです。
スプーンを口の中まで入れてしまうと上唇を閉じる機能が育たずに「お口ポカン」の原因になります。
「お口ポカン」は、口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)と言って、口呼吸、睡眠時無呼吸症候群、集中力の低下、むし歯、細菌感染など、様々なリスクを生じさせることになります。
この「お口ポカン」を防ぐために、スプーンは口の中まで入れない。
自分から上唇を使えるように食べ物はスプーンの上に少しだけ乗せて、赤ちゃんが取り込んだらスプーンを真っすぐ引きます。
それがコツです。
また、赤ちゃんにとってスプーンを口の中に入れられるのは恐怖です。
心理的な面でも「捕食」は安心感を与えます。
ただし、スプーンを口元に近づけた時に舌で押し返すようなしぐさを見せる赤ちゃんもいます。
それは「舌挺出(ぜつていしゅつ)反射」と言って、まだ「自分から食べる」準備が出来ていない赤ちゃんです。
発達には個人差がありますから、この反射が消失した時が離乳食の開始時期です。
この時期には「お座り」が出来るようになっているでしょうし、授乳の形も横抱きではなく「縦抱き」になっていることと思います。
5.離乳食【総まとめ】
(1)離乳食は6ヵ月くらいから始められます
なぜならそれは、「自分から食べる」という能力が発達する時期だからです。
(2)離乳食には「捕食(捕まえて食べる)」という考え方が重要である
「自分から食べる」という能力を発達させるためです。
「自分から食べる」という行動は、生きる意欲(自主性・自発性・主体性・積極性)の土台です。
(3)「手づかみ食べ」は捕食の典型です
「手づかみ食べ」は手と口の協調運動を発達させます。
食べ物との距離感や位置関係をつかんで次第にうまく取って食べられるようになります。
また、手を自由に動かすためにお座りの姿勢を直したり、見て・触れて・つかん・口に入れて・味わうという「一連の動作」を繰り返すことでコントロール機能の発達を促します。
(4)「手づかみ食べ」は散らかるという覚悟
手づかみのメニューは作るのが簡単ですが、その代わりに散らかります。
次のような知識が必要です。
①手指の動きが未発達だという認識
②何でも口にくわえる時期なので、お皿などの余計な物は置かない(テーブルがお皿)
③興味が瞬間的に移って当たり前(気まま・移り気)
④本能的に手がベトベトしたら振り払ったりする
⑤食べ物と食べ物以外を区別できないので食べ物を投げることもある
⑥腕が動きやすいように座る高さを調節する
⑦腕が動きやすいように前掛けは布製のものにする
(5)「全部固形」「全部手づかみ」じゃなくてもいい
「手づかみ食べ」だけをさせると、上手に食べられないので口に入る量が少なくなります。
ですから、大人が食べさせてあげることも必要です。
そういう意味での「補完」は必要です。
(6)離乳食はお腹が減った時に食べるものではない
赤ちゃんの主食は母乳やミルクです。
赤ちゃんが「お腹が減った時」に欲しがるのも母乳やミルクです。
ですから、離乳食をあげようとしても食べなくて当たり前です。
お腹が減った時に離乳食をあげるのではなく、「機嫌が良くて集中できそうだな」とか、授乳から少し時間が経った時などに与えてみるというくらいの気持ちで挑戦するとストレスになりません。
(7)離乳食は野菜から
「野菜から始めると野菜嫌いにならない」と歯科医の中村はるか先生は言います。
誤嚥を防ぐために、噛み切れない・飲み込めないものにします。
ブロッコリーの芯、ゴボウ、白菜の芯、人参、大根などです。
最初は何でも受け入れられるので、美味しくないもの、味の薄いものから始めるのがいいようです。
お粥などは甘味がありますから1ヵ月くらい間を空けて与えて、更にその後に手羽元などのタンパク質へと種類を増やしていきます。
以上が離乳食に関する「総まとめ」となります。
どうですか?
一般常識とは違う点も多かったのではないでしょうか。
今回の記事を書くにあたっては、「たつのシティタワークリニック」の田角 勝(たつの まさる)先生の動画を参考にさせていただきました。
より詳しく知りたい方は動画をご覧ください。
拝読して、食べ物もおもちゃと同じ感覚で、子どもにさりげなく置いておくのが良いのかなと思いました。
頷きながら拝読しました。
2人目は、なかなか離乳食を食べてくれず、
食事の時間が苦痛でした。
3人目は、離乳食を始める前から中村はるか先生に教えてもらい、2人目との違いに驚くことだらけです。
自分の目で見て、色や大きさを認知し、
手で触り、温度や硬さを認知し、
口に運ぶ、この一連の動作を、離乳食のスタートから、赤ちゃんがすることで、
意欲的に食べるようになります。
2人目の時には、私が無理やり食べさせようとしていたので、
赤ちゃんの大事な学びの機会を奪っていたんだなと、今さら気づきました。
手を使うので、指先も器用になるのもいいです。
かじり取れるように、大きめに食材を切るので、調理が楽です。
親にとっても、子どもにとっても、
「子どもが自分で食べる離乳食」は、
いいことがいっぱいだなぁと実感しています。
コメントありがとうございます。
子育てに「失敗」や「手遅れ」はありません!
すべてが子どもの糧になります。
出会いは必然。
そこにきっと意味があると思います。