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講座323 向山家の子育て【法則①】先人の知恵に学ぶ

投稿日:2022年11月14日 更新日:

法則① 先人の知恵に学ぶ

向山洋一先生の弟さん(向山行雄先生)は、小学生の時、毎日給食を残していたといいます。

一日も欠かさず毎日です。

コッペパンの中味だけを食べて、そこにおかずを入れて、それをランドセルに突っ込んで帰宅していたというのです。

当然、ランドセルは汚れるでしょう。

しかし、お母さんは弟さんを「一度も叱らなかった」と向山先生は記憶されています。

叱るどころか、本人が気づかないようにランドセルを毎日そっときれいにしていたというのです。

どうしてそのことがわかるかというと、本の中に次の描写があるからです。

通夜の席で母の妹が、このことを話した。弟はキョトンとしていた。
「俺、そんなことをしていたの」というのだ。
(『向山家の子育て21の法則』p.4)

私が注目したいのは次の点なのです。

・叱らなかった
・毎日そっときれいにしていた

どうでしょう。

そんなお母さんが身近にいますか?

毎日給食を残して、毎日ランドセルを汚して、

それでも毎日そっときれいにしてあげる。

今の世の中にそのようなお母さんはどれくらいいるのでしょう?

多くのお母さんは怒鳴っちゃうんじゃないでしょうか?

「何やってんの!」「また汚して!」「自分でやれよ!」

怒鳴らないまでも、何かしらアクションを起こして注意をするのではないでしょうか。

それが普通だと思うのは私だけでしょうか。

しかし、向山先生のお母さんは叱らなかった。

叱るどころか、毎日そっときれいにした。

どうしてなのでしょう?

多分、向山先生のお母様にとってはそれが普通だったのだと思います。

1945年、日本はアメリカなどの連合国軍と戦争をして敗れました。

1952年にサンフランシスコ講和条約が発効するまでの6年8ヵ月間はGHQの占領下でした。

GHQが行ったのは「日本人の民主化」「日本人の再教育」です。

子育ての仕方も大きく変わりました。

「甘えさせない」

「自立させる」

母子手帳の中身まで書き換えられました。(講座214知ってますか?「昭和の母子手帳」

占領期間は6年8ヵ月でしたが、日本人を教育するには十分な時間だったようです。

世界価値観調査で使われた次の質問があります。

親が子供のために犠牲になるのは仕方ないと思いますか?

「仕方ない」と思う人は、世界平均で73.3%だったそうです。

ところが日本は38.5%で、世界73ヵ国中72番目(下から2番目)。

親が犠牲になりたくない国なのです。

そうなっちゃったのです。

「日本人の民主化」「日本人の再教育」が見事に成功したわけですね。

欧米化政策によって「自由」や「個人」や「権利」といった言葉が大切にされた一方で、

「親なら当然」といった思考には蓋をかぶせる風潮が生まれました。

向山先生のお母様はどうして叱らなかったのでしょう?

なぜ、毎日そっとランドセルをきれいにしていたのでしょう?

私の想像ですが、多分「それが当然」だと思われていたのだと思います。

そこには「我慢」とか「犠牲」という言葉はなかったのではないでしょうか。

頑張ってやっていたわけではなく、当たり前のこととして普通にやっていたのだと思うのです。

そして、この「普通」という言葉が示すとおり、

多くの日本の母親が、「叱らずに」「そっと」、そういうことをしていたのだと思います。

そういう国だったのです。

そういう文化があったのです。

南太平洋に西サモアという国があります。

東京都くらいの面積の小さな島国です。

そこに20万人くらいの人々が暮らしています。

この西サモアにはユニークな文化があるといいます。

いつも機嫌よく接すること

これが文化なんです。

「しつけ」と言ってもいいと思います。

子どもを育てる時に、絶えずこのことを教えるわけです。

ですから西サモアでは、他人に対して不機嫌な顔をするというのは許されません。

バッドマナーです。

他の国の人間がとやかく言う必要はないと思うのですが、いい文化だと思います。

こういう国があってもいいし、こういう文化を大切にして欲しいと思います。

でも、日本は戦争に負けて自国の文化を失いました。

西サモアを例にするなら、

「いつも機嫌よく接するのは辞めなさい!禁止です!」

日本は、ある日、突然そうなったわけです。

そして今では、むしろ、強制するのはよくないことだからそれでいいじゃん!という考えの方が強くなったわけです。

「えっ!だって嫌いな人だっているでしょ!」

「別に迷惑かけるわけじゃないんだから自分の表情なんて自由でしょ!」

多分、そういう考え方の方が多数だと思います。

これは、どっちの考え方がいいとか悪いという話ではありません。

ある国の文化が、ある日を境に、失われてしまう。

そういうことがあるのだということです。

向山洋一先生が生まれたのは1943年です。

その2年後に日本は敗戦します。

そして、何百年と受け継がれて来た日本の子育て文化は「時代遅れ」として否定されてしまいます。

「これからは個人を大切にする時代です」

「添い寝はやめましょう」

「甘やかして育ててはいけません」

子育て文化の大転換に多くの日本人がなびきました。

戦争の反省があったからです。

しかし、日本のすべての母親が伝統を捨てたわけではありません。

大転換の渦中にあって、昔ながらの「当たり前」を守り続けた母親もいました。

その一人が向山洋一先生のお母さん「向山まさ」さんです。

毎日給食を残して帰宅する我が子に、

一度も叱らず、そっと当たり前のようにランドセルをきれいにしてあげる。

私は、このエピソードに触れるたびに、日本の子育て文化の素晴らしさを思い出し、

この時代に生きる私たちが、

これからに合った形で上手に引き継がなければと思うのです。


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執筆者:


  1. タミー より:

    母として教員として人として大切なことだと思います。
    いつも笑顔でいると、みんなニコニコになる。
    話しかけたくなる。
    昌さんのような、そんな人をめざします。

  2. まき より:

    子どものやったことをおおらかに見守れる向山まささんのような子育て、憧れます。
    うちの子も毎日のように、泥汚れのついた服で帰ってきますが、そっと下洗いをするようにしています。
    先人の子育ての知恵を学び、受け継ぐべきところを受け継いでいきたいです。

  3. 畠山文 より:

    当たり前という言葉にハッとしました。怒らないなんてできないと思っていましたが、怒ることが当たり前になっているのだと納得しました。

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