講座234 教科書スラスラ読めていますか?

お子さんが国語の教科書を読んでいるのを聞いたことがありますか?

どのくらいのスピードでしたか?

このスピードによって将来が決まると言っても大袈裟な話ではありません。

声を出して文章を読むことを「音読」と言いますが、

この音読のスピードが算数や社会や理科など、他の教科の勉強にも影響してきます。

勉強だけではありません。

本を読んだり、動画のテロップを読んだり、書類に目を通したり…。

生活そのものに影響してきます。

今回は「音読のスピード」について解説します。

 目 次
1.「スラスラ」ってどのくらい?
2.お子ちゃま読み
3.学年ごとの基準
4.一斉音読

1.「スラスラ」ってどのくらい?

文章はスラスラ読めた方がいいですよね。

では、その「スラスラ」ってどのくらいのスピードだと思いますか?

ちゃんと基準があるのです。

音読研究の専門家である埼玉大学名誉教授の市毛勝雄先生が公表されています。

すらすら音読(1分間350字) 「物語教材指導の定型化の試み

イメージできますか?

小学校の先生方なら体で覚えているはずです。

30秒間で175字

10秒間で60字くらいです。

声に出して読んでみてください。

80代のおばあさんが言うには「病気で入院したときも、80代のおばあさんと70代のおばあさんではお見舞いに来る家族の対応が違う」のだそうです。

これで70字です。

大人だったらこうした文章を10秒くらいで読むのが「スラスラ」です。

これを20秒も30秒もかけて読むのは「スラスラ」ではありません。

何らかの理由があって、読むのに苦労していると考えられます。

2.お子ちゃま読み

大学で教育指導教授をされている駒井隆治先生は次のように言われています。

いわゆる小学校で蔓延している「教室節」は、読解のためには有益ではない。あんまりゆっくり読んでいると読み終わった部分を忘れてしまう。大意がつかめない。

「教室節」の音読を聞いたことがありますか?

むかし むかし あるところに

普通の大人だったら、これを読む時に「昔々、ある所に」って読みます。

ところが「教室節音読」はそうじゃありません。

幼稚園児が読む姿を想像してみてください。

幼稚園でのお遊戯発表会で「はじめのあいさつ」なんかがありますよね。

「みなさん。きょうは。どうも。あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す!」

などというあいさつです。

独特の区切り方、アクセントがあります。

それと同じで、「むかし⤵ むかし⤵ あるところに⤵」と、いちいち下がって区切るのです。

大人のように続けて普通に読まないのです。

それが「教室節音読」です。

そして、これが小学校に「蔓延」していると駒井先生は言われているわけです。

私もそう思います。聞いたことがあります。

私はこの読み方を「お子ちゃま読み」と呼んでいます。

小学生になったら「お子ちゃま読み」から卒業させてください。

そうでなければ音読の力は身につきません。

3.学年ごとの基準

私が勤めていた小学校では音読のスピードを学期ごとに通知表でお知らせしていました。

学年ごとにスピードも定めていました。

これがその基準です。

1~3年:調子よく音読

4~5年:すらすらと音読

1,2,3年生はまだ「スラスラ」じゃなくてもいいのです。

「調子よく」なんです。

「調子よく」というのは「、」や「。」で区切って、リズムよく音読するという意味です。

やってみればわかりますが、これは意外と難しいんです。

たとえば、

80代のおばあさんが言うには

というように「、」で区切られていたとしましょう。

そうなると「、」までは区切らずに読むということになります。

80代の⤵ おばあさんが⤵ 言うには

じゃダメなんです。

「80代のおばあさんが言うには、」と、読点までひと息で読むのが正しい音読です。

1年生:文節や句読点で句切った音読ができることを基準とする。

やればわかりますが、これは決して曖昧な基準ではありません。

「できている/できていない」が、はっきりわかります。

教育士の岸本裕史氏はこれを「完璧読み」と名付けて実践されていました。

完璧かどうかがわかるからです。

先生もわかるし、本人も、教室にいる他の子どもたちもわかります。

当然、親が自宅で読ませてもわかります。

ですから嘘の通知表は書けません。

それが「学力の保証」というものです。

4.一斉音読

参観日に国語の授業を見たことがありますか?

先生はどんな授業をされてましたか?

音読の場面は見られましたか?

子どもたちに音読の力をつける方法は昔も今も変わっていません。

一斉音読

これです。

国語の教科書などを全員で声をそろえて読む方法です。

もちろん先生が手本を示す段階も必要です。

ところが、先生方の中には、音読で手本を示せない方がいます。

句読点で句切って「調子よく読む」が出来ないのです。

ひどい場合は、子どもたちの「お子ちゃま読み」を放置しています。

国語の授業の名人と言われる野口芳宏先生は次のように書かれています。

一、二年生でうまく読めない子は、そのハンディキャップを引きずったまま進級していく。一、二年生でうまく読めない子は、ずっと、読み方が下手なまま大きくなりやすいということである。『授業で鍛える』

学年末です。

心配な方は、お子さんの音読力をチェックしてみてください。

練習方法はシンプルです。

①親が短く区切ってお手本を示す(この場合の「短く」は句読点を無視して構いません)

親:「80代の」
子:「80代の」
親:「おばあさんが」
子:「おばあさんが」
親:「言うには」
子:「言うには」

これを「連れ読み」とか「追い読み」と言います。

②少しずつ長くする

親:「80代のおばあさんが」
子:「80代のおばあさんが」
親:「言うには」
子:「言うには」

③文節や句読点まで区切る

親:「80代のおばあさんが言うには、」
子:「80代のおばあさんが言うには、」

④句点(。)まで追い読み

親:「80代のおばあさんが言うには、『病気で入院したときも、80代のおばあさんと70代のおばあさんでは、お見舞いに来る家族の対応が違う』のだそうです。」
子:「80代のおばあさんが言うには、『病気で入院したときも、80代のおばあさんと70代のおばあさんでは、お見舞いに来る家族の対応が違う』のだそうです。」

⑤一人で読んでみる

子:「80代のおばあさんが言うには、『病気で入院したときも、80代のおばあさんと70代のおばあさんでは、お見舞いに来る家族の対応が違う』のだそうです。」

これで「調子よく」の完成です。

この「調子よく」を何度もくり返していると「スラスラ」になります。

学校でも同じです。

本当は学校の授業で、みんなで声をそろえて音読するのが最も効果的です。

なぜなら、学級全員で声をそろえて読むと、気持ちがいいからです。

おそらく「脳によいホルモン」が出ているはずです。

これはオンラインでは実現できません。

一斉音読は学校に登校した時にしかできない貴重なレッスンです。

しかも、低中学年が敏感期です。

高学年になると声を出すことが恥ずかしくなります。

また、いつまでも音読が必要なのではなく、黙読が最終ゴールです。

大人も本や文章を読むときは黙読ですよね。

6年生のゴールは黙読です。

ですから5年生までには「調子よく」「スラスラ」読めるようにさせてあげましょう。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. タミー より:

    練習方法を、読むスピードの目安を、具体的に示してくださりありがとうございます。
    我が子に教室の子どもに実践していきます。

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