講座101 特別支援学級の保護者の方へ

今回は特別支援学級の保護者の方にとって、とても重要なことを書きます。

在籍の変更を考えていらっしゃる保護者の方にも役立つと思います。

 目 次
1.計画を立てていますか?
2.「個別の教育支援計画」って何?
3.連携を具体化する
4.学校の支援を評価する

1.計画を立てていますか?

この4月、5月に、担任の先生と一緒に「計画」を立てたと思います。

「個別の教育支援計画」という計画です。

これは法律で義務付けられていますから、立てていなかったら完全にアウトです。

大事なのは「担任の先生と一緒に」という点です。

学校任せではありません。

合同で立てることになっています。

「契約を結ぶ」という感じです(「合意形成」とも言います)。

たとえば、

「7月までにかけ算九九を言えるようにする」とか、

「12月までに『サシスセソ』の発音が言えるようにする」とか、

そういう具体的な計画(目標)です。

参考までに、小学校の6年間で身につけさせたい学力の一覧表を載せておきます。

さっぱり思い浮かばない時は、こういうものを参考にするとよいです。

お子さんが中学生の場合も、小学校の学力が身についてなければ、ここに戻って身につけさせるべきです。

2.「個別の教育支援計画」って何?

これは私が勤めていた学校の「個別の教育支援計画」です。

大事な所だけを説明します。

●学校生活への期待や成長への願い(本人/保護者)

この欄は、「本人(子ども)の願い」と「保護者の願い」を分けて書くことになっています。

両者で違う場合もあります。

そのことを担任の先生が把握しておくための欄です。

●長期目標:担任記入、家庭訪問等で保護者確認

書くのは先生です。しかし、「保護者確認」となっています。

必ず、保護者が確認することになっています。

これが「担任の先生と一緒に」という部分です。

長期の目標を家庭と学校が共有する仕組みです。

このことは平成30年8月に出された文部科学省の通知(第756号)に書いてあります。

大事な点がもう一つあります。

【目標設定期間    年  月~  年  月頃】

「目標設定期間」を書くことになっています。

これはつまり「いつまでに達成するか」という期限を設けるということです。

計画ですから実現はできないかも知れません。

ですが、目標を立てなければ前に進みません。

その期限を家庭と学校で共有するということです。

●短期目標:担任記入、家庭訪問等で保護者確認

目標は「長期」と「短期」に分かれています。

この「長期」と「短期」の区別は市町村や学校ごとによって異なります。

私の勤めていた学校では「特別支援教育の全体計画」の中に定めてあります。

見つけられますか?

「1回目の面談」「2回目の面談」「3回目の面談」でそれぞれ何をするかが書かれています。その1回目の面談の(5)ですね。

(5)本校では様式3の長期目標を2年、短期目標を1年とする。

と書かれています。

たとえば、今3年生のお子さんだとして、

【長期目標】5年生までには通常学級に在籍変更できるようにする。

それが「長期目標」になります。2年かけて支援するわけですね。

そして、そのための「短期目標」を

【短期目標】今年度の7月までに「かけ算九九」を覚える。

というように組み合わせるわけです。

ここで大切なのは、

担任の先生が変わっても引き継がれる

ということです。

2年間の目標ですから担任が変わることだってあり得ます。

でも、立てた計画は、引き継がれ、改善され、ずっと続きます。

小学校から中学校に上がっても引き継がれます。

これが「個別の教育支援計画」の特長です。

3.連携を具体化する

その他の特長としては、

目標達成のために「学校は何をするか」「家庭は何をするか」を明記する。

という点があります。

あいまいな言葉で、

「一緒にがんばりましょう」とか、

「連携していきましょう」などと誤魔化すのではなく、

それぞれがお互いに何をするかを具体化させるわけです。

4.学校の支援を評価する

そして、最後の欄がこうなっています。

ここは年度末に記入する欄です。

担任の先生が記入しますが、保護者が確認することになっています。

何を確認するかというと、

その学年での「成長の様子」と「次の学年へ引き継ぐこと」です。

これはつまり、その学年での「学校の支援」を評価することになります。

「目標を達成できたか」あるいは「どのくらいできるようになったか」ということを評価するわけです。

キツク言えば、「学校の支援」は適切だったかどうかの評価です。

学校としては、自分たちの支援に対する評価です。

学校教育というのは「結果」を出すことが難しい仕事です。

しかし、そのことから逃げていては教育は成り立ちません。

年度ごとに結果を評価する仕組みはどうしても必要になります。

特別支援教育の場合は、この「個別の教育支援計画」がそのためのツールとして重要になります。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. まき より:

    具体的な書式と共に示してくださり、非常に分かりやすかったです。
    異動して初めて個別の指導計画に出会い、訳も分からず、目標と成果を記入していました。
    恥ずかしながら、学級のことで手一杯で、個別の指導計画をうまく活用することができていませんでした。
    わすか20名程度のクラスに支援を要する子が5人ほどいました。
    今思えば、特別支援コーディネーターと連携して、数値目標や具体的な姿を明記した目標を立てる必要がありました。
    特別支援の知識や経験が浅い若い教師には、個別の指導計画がただの書式になってしまいます。
    学校全体のシステムとして、定期的に評価する場を設け、コーディネーターからアドバイスをもらい、次に進めるようになると良いです。(すでにやっている学校は多いのかもしれませんが)

    • 水野 正司 より:

      ①通常級の担任としてこと
      ②「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の違い
      今回はこの2つには触れませんでした。
      ①については、現在はまだ「努力義務」なので。
      ②については、前者に力を入れるべきだという考えからです。

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