講座220 江戸時代の育児書
2.「かける言葉」まで書かれていた
3.畳語
1.江戸時代の育児書
数ある江戸時代の育児書の中から一冊取り上げてみましょう。
香山牛山の『小児必用養育草』です。
「しょうに ひつよう そだてぐさ」と読みます。
今で言えば「子育て必携」みたいな、何から何まで書いてある本です。
第一巻の書き出しが凄いです。
およそ人の親の子を愛する事や、天理の自然にして、あえてあててする事にしもあらず。上はかしこくも天子・皇后より、下はあやしの賤の男、賤の女にいたるまで、ひとつにみな替わる事なし。
簡単に言うと、
「親が子を愛するのは自然なこと。あえてどうこう言うことではない」
という感じでしょうか。
それでいてこの本には、赤ちゃんの取り上げ方から、乳母の選び方、産毛の剃り方など、
実に細かい解説が載っています。
現代でも、こんなに詳しい本は少ないと思います。
それでいて、この書き出しですからね。
香山牛山、かっこいいです。
2.「かける言葉」まで書かれていた
ただ、出て来る漢字が難しいんです。
江戸時代の人の方が学力が上だったのではないでしょうか。
匍匐
これ読めますか?
二百四十日。匍匐することを教えべし。
「二百四十日くらいになったら、ほふく(ハイハイ)することを教えなさい」ということです。
次はわかりますよね。
三百六十日。歩行することを教えべし。
ここで問題です。
この「歩行することを教えべし」の時に言葉をかけなさいと出て来ます。
しかも、細かいんです。
立とうとする時にかける言葉と、
歩こうとする時にかける言葉は別なんです。
私の子育て講座では、ここでお隣同士話し合うのですが、
ぴったり正解を言える人は、ほぼ出ません。
惜しい人は何人か出ます。
今風に言えばこんな感じですよね。
惜しいんですけど正解じゃないんです。
60点くらいでしょうか。
そんなに難しい言葉ではありません。
赤ちゃんに言うのですから。
3.畳語
正解はこれです。
ポイントは「くり返し」です。
同じ言葉がくり返されて使われる言葉、これを「畳語(じょうご)」と言いますが、
畳語になっているかどうかが最大のポイントなんです。
「ぶーぶー」とか、「バイバイ」とか、「なでなで」とか、
「おめめ」も畳語に含まれるそうです。
そして、驚くべきことに、最近の研究では「畳語を使った方が赤ちゃんの脳は活性する」ことがわかっています。
江戸時代の育児書!凄いですね。
親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する(Yahoo!ニュース)
「幼児語」が赤ちゃんに良い理由(Catherine E. Laing – The Conversation)
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