講座128 「悪平等」給食の完食指導
「お残しは許しません!」「全部食べなさい!」
というのが給食の完食指導です。
この完食指導には
給食を全員同じ量に盛り付ける
という悪平等主義がセットになっています。
今回はこのことについて解説します。
2.学校給食法
3.悪平等主義
4.管理栄養士の意見
5.教師のやるべきこと
1.給食が原因で不登校になったケース
完食指導によって不登校になってしまうケースがあります。
私のクラスには、「きゅうしょく」という言葉を聞いただけで涙がツーと頬をつたう女の子がいました。
自分でもなぜ涙が出て来るのかわからないと言っていました。
でもこれは明らかに「過去の完食指導」が原因のPTSD(心的外傷)でした。
調べてみてわかったのです。過去にどんな完食指導が行われていたかが…。(詳しくは動画に)
2.学校給食法
ところで法律はどうなっているのか。
学校給食法を見てみましょう。
第一条にこうあります。
第一条 この法律は、学校給食が児童及び生徒の心身の健全な発達に資するものであり、かつ、児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすものであることにかんがみ、学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施に関し必要な事項を定め、もつて学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることを目的とする。
「児童及び生徒の心身の健全な発達に資するもの」って書いてありますよね!
この時点で不登校を生む完食指導は間違っています。
ただし、次のような場合はいいですよね。
その子に合わせて適切な分量だけ盛り付けて全員の完食をめざす。
これ!気持ちいいですよね!
全員が無理なく完食できるのですから。
3.悪平等主義
ところが、完食指導の中には
全員同じ分量だけ盛り付けて、それを全部食べさせる
という悪しき平等主義を実行する指導があるのです。
食の細い子にも、体のでかい子にも、「同じ量」を盛り付ける。
それが「平等」だと勘違いしている指導です。
その理由としてよくあるのが、
(1)世界的には食べ物がなくて餓死している子もいるんだから食べなさい!
(2)同じ金額の給食費を払っているんだから均等に盛り付けるべき!
という考えですね。
これが「健全な発達」になるのでしょうか?
このような考え方には「その子」の存在がないのではないでしょうか?
大事なのは、その子に合わせて、適切に指導することではないでしょうか?
だから、私は、たくさん食べたい子にはたくさん盛り付けていましたし、
苦手な子には配慮して盛り付けていました。
それが本来の意味での「平等」だと思います。
4.管理栄養士の意見
私はこの問題を管理栄養士に相談してみました。
皆さん、管理栄養士と栄養士の違いを知っていますか?
【管理栄養士】国家資格。健康な人+特別の配慮が必要になる人を対象にした高度な専門的業務。
【栄養士】自治体資格。健康な人を対象とした業務。
一定以上の大きな給食施設では必ず「管理栄養士」を設置することが義務づけられています。
さて、給食の完食指導に対する管理栄養士の意見は?
①給食はバランスを考えて作られる=平均値
まず、ここからですね。
給食は栄養バランスを考えてメニューや分量が決まってきます。
それはわかりますよね。
大事なのはここからです。
その「バランス」として出される数値は「平均値」だということです。
小学生にはこのくらい、中学生にはここのくらい、と計算されて出た数値は、
あくまでも机上の平均値。
そして、実際の学校には、その平均値より小さい数値が適量の子もいれば、
成長が盛んで、あるいは運動量が多くて、平均値より多い分量が適量の子もいる。
それが目の前の子どもの姿です。
②食品ロスを減らす=食に関する正しい理解と適切な判断力を養うこと
食品ロスを減らためにこそ、
・食べ物を粗末に扱わない感謝の気持ち
・自分に必要な分量を判断すること
が重要だと言います。
そうですよね。
悪しき平等主義で完食をさせるのではなく、
全体としてロスが減ることこそ、命を大切にすることです。
5.教師のやるべきこと
自分で分量を決めると言っても小学校低学年では難しいでしょう。
食べられないのに多く盛り付けてしまうことはよくあることです。
また、盛り付けを子どもたちに任せてしまうと「弱肉強食」が生じます。
わがままな子が好きなものを多く盛り付けさせたりするんです。
ですから給食の盛り付けは、教師がやるか、教師の管理下で行うべきです。
そうした教師の配慮のもとで、正しくロスを減らす。
それが本来あるべき給食指導だと考えます。
給食指導はほぼ毎日繰り返されることですから、
学級の実態を保護者の方々も把握しておくべきだと思います。