講座105 「いじめ」に負けないスキル・前編
「いじめ」はなくすことが可能です。
(1)学校の授業で「いじめ」の区別を知ること
(2)保護者をはじめ多くの大人が「いじめ」の区別を知ること
和久田学氏はこのことを公衆衛生学の三層構造に当てはめて「一次予防」と呼びました。
一次予防:「いじめ」の区別を知る
現在の教育はこの段階が手薄です。
そのために、二次予防、三次予防もスピード感に欠けています。
今回は、「いじめ」を区別するための2つのスキルを紹介します。
講座105(前編) 法律を知る
講座106(後編) 定義を知る
「法律」と「定義」が分かれば、いじめはなくすことが可能です。
というか、まだ試されていないのです。
多くの児童・生徒、大人が、この2つを知らないまま現在に至っているのです。
読者の皆さんは、知っているかどうか試してみてください。
2.どんな法律なの?
3.「いじめ」をしたらどうなるか?
4.家庭裁判所とは?
5.「いじめ」を区別できますか?
6.まとめ
1.「児童等」って誰?
「いじめの禁止」は平成25年に公布された「いじめ防止対策推進法」の中で定められています。
第四条 児童等は、いじめを行ってはならない。
ここでいう「児童等」は(1)~(4)の中のどれなのか知っていますか?
ちなみに「児童」という言葉だけでも法律によって対象がバラバラなので面倒な言葉です。
この法律ではさらに「等」がついているので、誰に言っているのかよくわかりません。
さあ、(1)~(4)のどれだと思いますか?
というか、知っていましたか?
正解は(3)の小中高校生です。
第二条に「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)をいう」と書かれています。
ですから、高校生も対象だということを高校生自身は自覚しなければなりませんし、
保護者をはじめ周囲の大人もこのことを知っていなければなりません。
ちなみに、幼児にはこの法律でいう「いじめ」は存在しません。
2.どんな法律なの?
この法律は、次の点で画期的でした。
学校と警察が連携できることになった。
第二十三条(いじめに対する措置)に定められています。
平成25年のことですから、もう多くの大人が忘れてしまっているところかも知れませんね。
3.「いじめ」をしたらどうなるか?
では、もし、「児童等」が「いじめ」をしてしまったら、どうなるのか?
「14歳以上」と「14歳未満」とで対応は分かれます。少年法の規定ですね。
「14歳未満」では、いじめを「発見」するのは、親や先生や周囲の大人、警察の役目です。
そして、通告先は児童相談所です。ここから家庭裁判所に送致される流れです。
しかし、「14歳以上」では全く違います。
14歳以上は刑事処分になりますから、警察が直接動きます。
「発見」ではなく「検挙」です。
検挙するにあたって学校に相談することなどありません。
授業中であっても突然乗り込んできて、生徒を連れて行きます。
そこから検察庁を経て、家庭裁判所に送致される流れです。
このように「14歳」というのは非常に大きな分かれ目なんですが、
子どもたちはこのことを知っているのでしょうか?
4.家庭裁判所とは?
家庭裁判所では、少年院や施設に送るか、保護観察処分にするかを決めます。
少年院は「12歳以上」、施設は「12歳未満」です。
保護観察というのは、少年院や施設には送らないで家庭に戻す処分ですが、
保護司という人が1年間くらい指導監督につくことになっています。
5.「いじめ」を区別できますか?
では、家庭裁判所では、「いじめ」に対してどのような審議・審判をするのでしょうか。
その基準になるのは「大人の犯罪」です。
「いじめ」も大人の社会では犯罪です。
①~⑩の犯罪が「いじめ」に該当し得るものです。
では、逆に考えてみましょう。
どんな「いじめ」が、どんな犯罪に該当するのか。
「いじめA」は何罪に該当するでしょう?
これは「暴行罪」と「傷害罪」です。
「いじめB」は何罪に該当するでしょう?
これは「暴行罪」です。「遊ぶふり」でも世の中では暴行罪になります。
これは「強要罪」と「強制ワイセツ罪」に該当します。
「嫌なこと」「恥ずかしいこと」「危険なこと」という3種類を知っておいてください。
これは分かりやすいですね。「恐喝罪」です。
「お金」でも「物」でも当てはまります。
「窃盗罪」と「器物破損罪」。
「隠す」「壊す」「捨てる」もこれに当てはまります。
そんなコトは子ども同士ならよくあることでしょ!と思われる方がいるかと思いますが、
重要なのは精神面です。
金品は弁償することも可能ですが、「隠されたり」「壊されたり」「捨てられたり」「盗まれたり」したときの子どもの心は元には戻りません。
その「心の傷」を一生背負うことになる場合も少なくありません。
考え方によっては大人の犯罪以上に被害が大きいと思います。
最後に「いじめF」の審判です。
これは「脅迫罪」「名誉棄損罪」「侮辱罪」が該当します。
もちろんSNSなどインターネットを使った行為も該当します。
家庭裁判所では、こうした審議に基づいて「児童等」の措置を決定するわけです。