講座65 「教え方」は家庭教育でも必要になる!

さて、前回の「感謝の手紙」には秘密がまだあります。

しかも、重要な、有料級の秘密です!

 入学前の子が「ひらがな」や「カタカナ」を使っていますよね。

 珍しいことではないかも知れませんが、よく見てください。

 字が割と整っていますよね。

 「い」も「り」もちゃんとはねていますし、

 「つ」や「の」などのカーブもきれいに書けています。

 しかも、写真では分かりませんが「書き順」も正しいはずです。

 その理由は、このお母さんが「教え方」を持っているからです。

 目 次
1.「最初」にさせること
2.教材によって全く違う!
3.子どもの第一行動
4.まとめ

1.「最初」にさせること

 たとえば、カタカナの「カ」を教える時に、皆さんだったらどうやって教えますか?

 練習帳はこれを使うことにします(教材Aとします)。

 もっとハッキリ言います!

 このページを開いたとします。

 さあ、自分の子どもに、最初に何をさせますか?

 読み方の練習は抜かします。書けるようになるための練習です。

(1)最初に何をさせますか?

 この答えを「知らいないお母さん・お父さん」は結構います。

 学校の先生でも「知らない先生」が結構います(教員採用試験には出ませんし、教員養成大学でも教えられてないからです)。

 ですから「若い先生」は、ほとんど知らないでしょうね(残念ながら)。

 さあ、最初にさせることはなんでしょう。

 自信を持って、明確に答えられますか?

2.教材によって全く違う!

 その答えを出す前にもう一つ別な教材を見てみましょう(教材Bとします)。

 この教材は有名ですし、お店にもたくさん並んでいるのですが、最初に示した教材とは「教え方」が全く違います。

 この教材を与えてしまうと、最初にやるべきことをすっ飛ばしてしまいます。

 AとBでは「教え方」が全然違ってしまうのです。

 もっと言うと、

 AとBでは「子どもの学習習慣」(学習意欲や学習方法も含めて)違ってきます。

 教材Aと教材Bの違いを見抜けましたか?

 AとBでは、子どもの「第一行動」が違ってくるのです。

3.子どもの第一行動

 教材Bの第一行動はこれです。

 数字の順に「ヤ」を一つ書いてみる

 そういうことですよね。

 でも教材Aは違います。

 

 書き順を見て指で書いてみる

 ①の所に「かきじゅんをみてゆびでかこう」って書いてありますよね。

 これを「指書き」と言います。

 ちなみに、鉛筆を持ってお手本をなぞる練習は「なぞり書き」と言います。

 教材Bは最初に「なぞり書き」をさせる教材です。それに対して、教材Aは最初に「指書き」をさせる教材です。

ここが全く異なる点です。

 「全く」と付くには理由があります。

①Bは「いきなり」鉛筆を持たせる。Aは鉛筆が要らない。

 どちらが取り組みやすいか、わかりますよね。

 幼少期の子どもにとっては「鉛筆を持つ」というだけでハードルがあるのです。鉛筆の持ち方を確認しなければならなかったり、「いざ始めよう」と思った時に机の上に鉛筆がなくて「探すところから」始めなきゃならなかったり、意外と大変なのです。

 特に、ADHDのお子さんですと、「注意を教材に向ける」のと、「注意を鉛筆に向ける」のとでは「別々に必要な注意」となるわけで、勉強のスタートでつまずく場合が出て来るわけです。

 それに比べて「指」は用意が要りません。体についています。サッと行動に移すことができます。

 また、DCD(発達性協調運動障害)を持ったお子さんは「不器用さ」を持っていますので、鉛筆をうまく使いこなすことが苦手です。それが「指」だと大助かりとなります。

②Bは鉛筆の先から刺激が来る。Aは指の先から来る。

 ペンフィールドのホムンクルスという言葉をご存知ですか?

 カナダの脳外科医ペンフィールドが描いた「体のどこが脳とつながっているか」を表した図です。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 大きく描かれている部分ほど、脳との関係が強くなります。

 顔や手は敏感だということがわかりますよね。

 その「手」の中でも、最も脳とつながっているのが「人差し指」です。

 こんな絵もあるくらい脳との関係が強いのです。

出典:池谷祐二著『進化しすぎた脳』

 言わば、人差し指は「第二の脳」です。

 そして、「指書き」は、まさにその「人差し指」を使う学習法です。

 鉛筆でも、正しく持てば「人差し指」に刺激が来ます。

 ですから鉛筆の持ち方は重要なのです。

 時々、人差し指を全く使わない持ち方の子がいますが、多分脳への刺激量は少ないのではないかと思います。

 ともあれ、「指書き」は練習帳の紙の上に人差し指くっつけて練習します。

 そして、その指は多くの場合が「人差し指」なのです。

③教材Bは「いきなり」鉛筆で書く。Aは「その前に」指で書く。

 ここも小さいようで大きな違いです。

 教材Bにも教材Aにも数字で書き順が示されています。

 しかし、これが全く違うのです。

 教材Bは「いきなり」鉛筆から始まるので、子どもは「はみ出さないように」なぞることを意識します。

 書き順ではなく、なぞることに意識が向くわけです。

 それに対して教材Aは「指書き」によって書き順の練習を独立させているので、書き順を心配することなく、なぞることに集中できます。

 逆に言えば、書き順については「指書き」の段階でマスターしておくことが重要になります。

 「指書き」というシステムは、すべての子どもに、「書き順」と「なぞり書き」がやさしくできるように設計されているわけです。

④教材Bの練習回数は5回。Aは無限(4回以上)。

 Bは「変な形」をしたマスが5個ありますから練習回数は5回です。

 それに対してAは3マスしかないように見えますが、この3マスをやる前に「指書き」をしています。

 実際にやってみればわかるのですが、「指書き」は「なぞり書き」よりも短時間で済みます。

 苦も無く何度も取り組みやすいのです。

 「指書き」の基本として、練習する時には「書き順」を唱えます。

 「ヤ」の場合は、「いーち、に」と書き順を口で唱えて練習します。

 「カ」の場合ですと、「いーいち、に」と唱えて練習します。

 (違いがわかりましたか?)

 少なくとも二、三度は唱えて練習するでしょう。

 難しい字の場合は(たとえば「ヲ」)10回くらいすることもあります。

 とにかく最低でも4、5回はするでしょう。

 このように練習回数が実は違うのです。

 Bは5回、Aは無限なのです。

 違いはまだまだあるのですが、あと1つにしましょう。

⑤教材Bは文字の練習だけ。Aは文字の「練習の仕方」も練習。

 当たり前ですが、教材Bは「ヤ」というカタカナを覚える教材です。

 「かきかたをおぼえよう」って書いてますよね。

 それに対して、Aは文字を覚えることを通して「文字の練習の仕方」も練習する教材です(このような教材を「スキル」と言います)。

 右の①②③がそれです。

 覚え方のシステムです。

 しかも、このシステムは「ひらがな」でも「カタカナ」でも「漢字」でも同じです。

 普遍の練習法。日本の伝統的な練習方法なのです。

4.まとめ

 どうでしょう?「全く違う」の意味を共有することができたでしょうか?

 「感謝の手紙」の背景には、

 このような「教え方」というシステムがあったのです。

 この子のお母さんは「教え方」のプロです。

 実は、もっとすごい工夫もしています。

 「指書き」をさせる前に、お母さん自身が、「指書きのお手本」を子どもに「やって見せて」いるのです。もちろん「いーち、に」と唱えて。

 それからこの子も同じように「指書き」を始めました。

 やさしいですね。

 就学前ですからこんな工夫もされたわけです。

 今後、学校教育が担う部分は、どんどん縮小していくと思います。

 コロナ禍でその動きは加速されました。

 いつ、何が起きても困らないように、家庭教育にもスキルが必要だと思います。

 そう考えて「教え方」の一つを公開しました。

 共有していただけましたら幸いです。

参考図書:『小学校の国語 つまずきのポイントを一日で攻略』向山 洋一 , 谷 和樹, 松山 英樹

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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1件の返信

  1. 浅尾 三吉 より:

     「講座65」読みました。
     納得できます。
     「指書き」の重要さを再度確認できました。

     「子育てWIN3計画」を、友人に勧めました。
     4児のお母さんで、今年教員採用試験に受かった方です。
     これらの講座、きっと役立ててくれると思います。

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