発達障害への理解

講座48 食事で発達障害を改善する

投稿日:2020年12月6日 更新日:

 神経と神経のすき間にある「つぶつぶ」が神経伝達物質です。
 これがちょうどいい数だと精神は安定します。
 バランスが崩れると、イライラしたり、不安になったり、感情的になったり、物事を落ち着いて考えられなくなったりします。

 発達障害のお子さんは、神経伝達物質の数が「足りなかったり」「多過ぎたり」というアンバランスになりがちです。
 そこで、今回は「食べ物」によってそのバランスを改善するためのお話です。

 目 次
1.セロトニンを増やす食べ物
2.ドーパミンを増やす食べ物
3.ノルアドレナリンを増やす食べ物
4.脳腸相関
5.白い麻薬
6.まとめ

1.セロトニンを増やす食べ物

 「安心感」を増やすセロトニンが多く含まれる食品です。

大豆食品(納豆、豆腐、味噌汁など)
・乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)
・ビタミンB6(玄米、赤身魚、バナナなど)

 でも、ただ食べているだけではダメです。
 これらの食品はセロトニンを作るための「材料」です。
 「材料」を体の中に入れたら、それをうまく分泌させる必要があります。
 そのためには「刺激」が必要です。

・日光に当たる
・運動する
・優しい行動をする
・感動する

  日中は外でたくさん遊んで、食事は納豆と味噌汁、というように、「材料」と「刺激」の両方を組み合わせることで、セロトニン分泌のコスパは上がります。

 また、人に対して優しい行動をしたり、ハグしたり、抱っこしたり、感動したりすると、オキシトシンという物質が出ます。このオキシトシンが出ることでセロトニンの分泌が促されますので、これらの行動も「刺激」になります。

2.ドーパミンを増やす食べ物

 「楽しい」気持ちを増やすドーパミンが多く含まれる食品です。

・大豆食品
・乳製品
・ビタミンB6
・タンパク質(肉、魚など)

 上の3つはセロトニンと同じですが、タンパク質が必要になります。
 やる気、元気のもとですから、やっぱり肉なんでしょうね。

 絵の中に「タケノコ」が入っていますが、タケノコは「チロシン」というアミノ酸を多く含んでいて、ドーパミンの材料として有名なので加えました。

 ドーパミンの分泌にも刺激が必要です。

・おいしく食べる
・成功体験
・フロー体験

 「おいしいなあ」と思って食べるとドーパミンが出ます。
 家族みんなでワイワイしながら食べるのは最高ですね。
 一人の場合は「今日はご褒美だ!」と言って好物を食べるのもいいですね。

 成功体験は「うまくいった」という体験です。
 その日の遊びや勉強などで「うまくいった」とか「ほめられた」という経験があると分泌がよくなります。

 フロー体験は「熱中体験」です。「集中して遊んだ」とか「集中して工作を作った」とは「夢中で本を読んだ」などの時間です。これも分泌を良くします。

3.ノルアドレナリンを増やす食べ物

 ノルアドレナリンは「集中」に関係する伝達物質です。
 ドーパミンから作られますので、材料はドーパミンと同じです。

 刺激となるのは「不安な環境」や「真剣な環境」などです。
 カレンダーを見て「ヤバイ!締め切り近いじゃん!」とか、
 テストをしている時の「シーンとした教室」とか、
 スポーツなどで真剣勝負する場面などです。

 ただ、気をつけたいのは、ASDのお子さんの中にはノルアドレナリンが過剰に分泌しやすいお子さんが少なくありません。ほんの少しのことでも緊張して、不安や心配の度合いが強まるのです。たとえば、学校という建物を見ただけで緊張する場合だってあります。

 そういう時は、「ノルアドレナリン過剰=セリトニン不足」ですから、必要なのは「安心(セロトニン)」ということになります。

4.脳腸相関

・セロトニン(安心)
・ドーパミン(楽しい)
・ノルアドレナリン(集中)

 三大神経伝達物質が含まれる食品の紹介は以上ですが、気をつけなければならないことが一つあります。

神経伝達物質は腸で作られる。

 活躍する場所は「脳」なのですが、食べ物から作られるので最初は「腸」なんです。

 セロトニンで言いますと、その90%は腸内に存在し、血液の中では8%、脳に届くのは2%しかありません。ドーパミンやノルアドレナリンでも50%以上は腸内にとどまると言われています。

 こうしたデータは「脳腸相関」とか「腸内フローラ」などのワードで検索するとたくさんの資料が出て来ます。

脳に届くのは数%

 神経伝達物質は、脳にとっては貴重な材料なのです。

 その貴重な材料を作る工場が「腸」なのですが、人によってその工場のコストパフォーマンスはバラバラです。効率よく作ってくれる工場もあれば、ブラックで効率の悪い工場もあります。

その良し悪しを決めているのが「善玉菌」と「悪玉菌」です。

 善玉菌は、食物繊維や発酵食品が大好きです。
 運動することによっても整えられます。

 一方、悪玉菌は、高脂肪の食べ物、食品添加物などが大好きです。
 ストレスによっても優位に立ちます。

 この他に、「日和見菌(ひよりみきん)」というのがいて、あるときは善玉の応援をし、あるときは悪玉の応援をします。

3つの菌の割合は、「2:7:1」が基準

 このバランスが崩れることを「腸内環境が良くない」と言います。
 腸内環境が良くないと、神経伝達物質の生産活動も鈍くなり、脳に影響を与えるというわけです。

 ちなみに、善玉菌と悪玉菌は赤ちゃんが産道を通って来るときに、お母さんから譲り受けると言われています。
 また、乳幼児期の食事によっても種類や割合が決まって来ると言われています。「遺伝」とは別ですが、おなかの環境というのは、こうやって決まってくるのですね。

5.白い麻薬

 最後に、ここまでの話とはまったく別の食べ物を紹介して終わります。
 その食べ物をとり過ぎると、「眠気」「疲労感」「イライラ」「集中力低下」などを引き起こすと言われています。
 別名「白い麻薬」です(中毒症状がある)。
 その食べ物の名前を知っていますか?

それは「砂糖」です。

 朝ご飯に「ごはん」を食べた子と、「甘い菓子パン」を食べた子とで比べてみましょう。

 ごはんは「でんぷん」です。
 でんぷんはおなかの中でゆっくり消化・吸収されて、ブドウ糖となって脳に届きます。ここで大事なことを覚えておいてください。

脳の栄養は「ブドウ糖」だけ

 グラフは血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)です。
 ゆるやかに上がって、4時間目でも100mg/dl前後ですね。

 次に、「甘い菓子パン」を食べた子の血糖値です。

 急に上がって、急に下がっていますね。
 これは「血糖値スパイク」という現象です。

 砂糖はすぐに分解されてブドウ糖になるので一気に血糖値が上がります。
 スポーツ選手が試合の合間に甘い物を食べたりしますよね。あれは砂糖に即効性があるからです。

 でも、グラフを見るとブドウ糖の数は急激に減っています。
 ブドウ糖が4時間目までもたないので、やる気が低下しています。
 この原因を知っていますか?

 これは「低血糖症」「血糖値スパイク」と呼ばれる症状です。

 人間の体は血糖値が上がり過ぎたときに、すい臓からインスリンという物質を出します。インスリンは血糖値を下げる働きをします。

 朝ご飯の「甘い菓子パン」は急な血糖値の上昇をもたらします。おまけにジュースやコーラなどの甘い飲み物を飲んだら大変です。
 体は急いで大量のインスリンを分泌します。
 それで血糖値は急下降します。

 結局、3~4時間目は脳のエネルギーであるブドウ糖が減ります。
 デンプンの時と比べると大きな差です。

「早寝・早起き・朝ご飯」という言葉がありますが、朝に食べれば何でもいいわけではありません。子どもは勉強をするために学校に通っているわけですから、ブドウ糖は不可欠です。ブドウ糖は、友だちと遊ぶときも感情的にならずに仲良く遊ぶことを補助します。

 私の尊敬する料理研究家の星澤幸子先生は「ご飯」+「一汁一菜」を提唱されています。残り物でもいいので、「ご飯」に「一汁一菜」だと大豆食品がとれそうです。また、どうしても時間がない時は「玄米半分のおにぎり」だけでも午前中はもちます、と星澤先生は話されています。

6.まとめ

 セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの生成には「材料」となる食品(大豆食品、乳製品、ビタミンB6など)、生活の中での「刺激」、そして、「腸内環境」を整えることが必要でした。

 また、脳そのものを動かすには「ブドウ糖」が欠かせません。
 そのためには「朝ご飯」を見直す必要があるかもしれません。

 こうしたことは発達障害の子に限ったことではありませんが、発達障害を持っているお子さんにとってはとても重要な支援になります。

睡眠・食事・運動

 この3つは療育の根幹です。
 次回は「運動」についてお話しします。

参考図書

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