講座47 「早寝早起き」の 「早寝」って何時?
2.大人に合わせてはイケナイ!
3.睡眠不足が子どもに与える影響 【5選】
1.「早寝」って何時?
みなさんに問題です。
「早寝早起き」という言葉を聞いたことがあると思いますが、
その「早寝早起き」の「早寝」って何時のことだと思いますか?
ヒントはこのグラフです。
(大熊輝雄 1977 「睡眠の臨床」 医学書院を改変)
問題では6歳(小1)の子となっていました。
6歳の子に必要な睡眠時間は「10時間」と言われています。(『未就学児の睡眠指針』愛媛大学医学部附属病院睡眠医療センター)
個人差もあるので「10時間前後」としておきましょう。
一年生ですから学校に行きますよね。
学校はたいてい8時くらいまでですから、7時には起きますよね。早い子は6時頃起きるかもしれません。
一年生の必要睡眠時間は10時間ですから、逆算すると夜の9時には睡眠状態になっていなければなりません。
6時に起きる子なら8時には眠ってます。
答え ②9時 または ①8時
③の10時だと「10時間」は確保できないので、答えは①か②です。
2.大人に合わせてはイケナイ!
ここで大切なのは次のことです。
大人と子どもでは必要な睡眠時間が異なる。
当たり前ですが、必要な睡眠時間は年齢が小さいほど長くなります。
このデータは愛媛大学の睡眠医療センターが厚生労働省の補助を得ておこなった信頼性の高いものです。多くの医療機関や教育機関が目安にしています。
大人の場合は「7時間」でしたから、大人に合わせてはいけないということが明らかだと思います。
大人に合わせてはいけない!
昔から、「子どもは早く寝なさい!」とか「子どもは寝る時間です!」と言ってきましたが、この言葉は現代でも必要な言葉なんですね。
ちなみに、赤ちゃんは眠ったり目覚めたりをくり返しますし、お年寄りは朝早く目覚めて、日中にも眠くなります。
ここで、「大人に合わせてはイケナイ」理由をもう一つ紹介します。
グラフはOECD各国の睡眠時間を示したものです。
赤いのが「日本」。日本の大人は世界一の睡眠不足です。
その大人に合わせたら、日本の子どもは世界一の寝不足になってしまいます。
ちなみに睡眠不足の第2位は韓国、第3位はメキシコです。
メキシコが第3位なのはこの国が長時間労働の世界一だからでしょう。
睡眠不足の国は概して「働き過ぎ」なようです。
ちなみに、アメリカや中国はちゃんと寝ています。見つけましたか?
3.睡眠不足が子どもに与える影響 【5選】
一つ目は「低身長・肥満体質」です。
子どもの身長を伸ばす「成長ホルモン」は夜の10時~2時という時間帯にだけ分泌されると言われています。
しかも、眠ってから2時間後に分泌が始まるというシステムです。
ですから一番効率よく「4時間まるまる」分泌させるためには8時に眠っている必要があるわけです。
10時に眠った子は2時間後の12時~2時まで分泌されるので量は半分です。
寝る子は育つ
この言葉は科学的にも証明されています。
二つ目は「経験(記憶)の不足」です。
記憶は夜、眠っているときに作られます。
日中に体験したことを頭の中に定着させるためには「睡眠」が必要です。
「体験」と「経験」は違う
と言われます。
体験は「やったことがある」という意味です。
経験は「やったことが体の中に残っている」という意味です。
体験が体の中に残るためには1回じゃダメだと言われています。
西島脳神経外科病院の藤井聡先生によると、その回数は「3回以上」で、プラス「質のよい睡眠」が条件です。
せっかく「いい体験」をしても、夜にちゃんと眠らないと脳の中に保存されないわけです。
「一夜漬け」ってやったことがありあますか?テストの前日などに頑張って勉強しますよね。次の日のテストまではなんとかなっても、テストが終わると「覚えたこと」はどこかへ消えてしまいます。体の中に残らないわけですね。
これはほかの場面でも同じです。小さい子が公園で友だちと上手に遊んでお母さんにほめられたとしましょう。その体験は夜にちゃんと眠ることで、脳が記憶として定着させようとします。ですから、そういう経験を3回くらいくり返せば、ほかの公園でほかの子と遊んだ時に応用できたりするわけです。
三つ目は「知能の発達不足」です。
知能というのは、勉強するときに必要とされる能力です。
たとえば、「三角形を自分のノートに写してごらん」と言われたときに、その指示に従って、お手本をよく見て、自分の手元にあるノートに、だいたい正しい形で三角形を書ける能力です。
睡眠がうまくとれていない子は、規則正しく睡眠している子に比べて、こうした作業がうまくできないと言われています。
学校の中心は授業であり、授業は小・中・高と12年間も続きます。
規則正しい睡眠ができない子は「勉強で苦労する可能性」が高いわけです。
四つ目は「自律神経の乱れ」です。
自律神経の乱れは様々な問題を引き起こします。
こうした問題がなく、夜にちゃんと眠れる子は「健康な子」です。
健康であることは、幸せなことです。
自律神経の乱れは、病気と言ってもいいことですから、医師に相談することも大切です。不眠は「メラトニンの不足」も一因です。サプリもありますが、体内でも作られます。メラトニンを作るためには「朝日を浴びること」が大切です。そのためには「早起き」が欠かせません。「早寝」と「早起き」はつながっているわけです。
五つ目は「発達障害の療育不全」です。
医学博士の宮尾益知ドクターは「発達障害の子は疲れやすい」と主張されています。
ADHDの子は、日中全力で、一生懸命に活動しているので体力的に疲れます。早寝が必要です。おそらく、布団に入ったらすぐにぐっすり眠れるでしょう。
ASDの子は、日中に不安や緊張と闘っています。午後や夕方には精神的に疲れています。その上、入眠が苦手です。眠りやすい環境づくりが大切です。
そのほか、DCDの子は不器用なので動くことで疲れています。
感覚過敏の子は普通の生活の中でストレスを感じています。
発達障害の子は疲れやすい
発達障害を理解するために、この視点はとても大切なことになります。
発達障害は「発達」の障害です。
発達させる工夫が大切です。
その工夫の中で最も大切なことは何でしょう。
医学博士の杉山登志郎ドクターは「療育」だと主張されています。
療育の基本は「規則正しい生活習慣」です。
今回はその一つとして「早寝早起き」について解説しました。
次回は「食事」と「運動」について解説する予定です。
参考図書:杉山登志郎『発達障害の子どもたち』
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[…] それについては、講座47「早寝早起き」の 「早寝」って何時? に詳しく書きましたのでぜひご覧ください。 […]