講座388 76年経っても「ひらがな」の教え方さえ確立されていない(前編)

以前にも書きましたが、「ひらがな」の教え方は学校によってバラバラです。

先生によっても違います。

小学校一年生が学校で「ひらがな」を習うようになったのは昭和22年だと言いますから、それからもう76年経っています。

それなのに、「一年生に平仮名を教えるにはこの方法がよい」というものが確立していません。

76年経った今も先生方は試行錯誤しながら「ひらがな」を教えています。

一体この76年間、日本の学校教育は何をしていたのでしょう。

令和の時代になって教員の働き方が社会問題になっています。

「ひらがな」の教え方さえ確立していない世界ですから、そりゃあ先生方も大変でしょう。

私はこれまでに一年生を6回担任しました。

つまり、「ひらがな」の指導を6回経験したことになります。

今回は、その6回の経験から「この方法がよい」と実感した指導法をまとめてみます。

 目 次
1.黒板に「ひらがな」を書く前に知っておきたい知識①
2.黒板に「ひらがな」を書く前に知っておきたい知識②
3.黒板に「ひらがな」を書く前の配慮
4.次回予告

1.黒板に「ひらがな」を書く前に知っておきたい知識①

多分、小学校一年生の先生は黒板を使うと思います。

黒板に「あ」とか「し」とかって、その日に教える「ひらがな」を書くでしょう。

先生は多分、大きく書くはずです。

これは「よく見えるように」という配慮です。

私もそうしていました。

また、視力に問題のある子は座席を前の方にするなどの配慮もあるでしょう。

これらは「視力の問題」です。

学校で授業を受けるための視力は「0.7~1.0くらいが必要」と言われています。

では、小学校一年生の視力って、どのくらいか知ってますか?

だいたいの子は4~6歳で「1.0」に発達します。

ここで大切なのは「発達」という言葉です。

4~6歳に「1.0」を獲得するためには、それ以前での発達が大切ということです。

つまり、1~3歳頃の「目の使い方」です。

スマホを見るのがよくない!というような偏った話ではありません。

近くも見るし、遠くも見る。

絵本を見たり、台所を見たり、窓の外を見たり…。

家の中であちこち見ることも大切ですし、外で遊んで遠くを見ることも大切です。

「目を使う」というのは運動ですから、体と同じで、様々な運動をするのが大切ということです。

だから、スマホばかり見るのはよくないわけです。

しかも、視力は 6 歳頃までに完成すると言われています。

6歳を過ぎると視力は改善しなくなるため早めの治療が必要だと言われています。(参照:子どもの弱視治療

2.黒板に「ひらがな」を書く前に知っておきたい知識②

ところで、学校で黒板を見るためには「1.0」くらいの視力が必要という話でしたが、

「1.0未満」の子どもの割合は増えていると思いますか?減っていると思いますか?

文科省は調査をしています。

小学生のグラフを見てみましょう。

毎年少しずつ増えています。

「3人に1人が1.0未満」などと報じているメディアもあります。

言われてみれば「多い」のかも知れません。

このグラフは平成26年度からの数値ですので、もう少しスケールを広げてみましょう。

作成:リセマム

昭和54年度から追っていくと「増えてる感」が増しますね。

子育てにおける「視力の発達」にも注意を向ける必要があるかも知れません。

私が住んでいる地域は酪農が盛んなので牧場がたくさんあります。

家が酪農をしている子どもの中には、ものすごく視力のある子がたまにいます。

アフリカのマサイ族の視力は8.0とか10.0と言われています。

ミャンマーのモーケン族は3.6~9.0だと言います。

一体、どんな見え方をしているのでしょうか!

3.黒板に「ひらがな」を書く前の配慮

話を戻します。

学校で黒板を見るためには「1.0」くらいの視力が必要という話でした。

ですから、メガネをかけても1.0に満たない子には配慮が必要です。

「3.7.0方式」というのは学校保健法施行規則で定められている視力調査の判定基準です。

0.3、0.7、1.0の3つを基準にしてABCDで判定する方法です。

学校ではこれに基づいて教室での座席を配慮しているわけです。

ですから、入学する前の年の秋に「就学時健康診断」というのを市町村が実施します。

その時にの視力検査で、メガネをかけていて、左右どちらか片方でも1.0未満であれば眼科受診を勧めていると思います。

そうした情報は入学する学校にも届きますから、担任の先生は座席に配慮します。

教室には様々な子がいます。

ですから、座席も配慮しますし、黒板に書く文字も見やすくします。

たったこれだけのイラストですが、

黒板の前に立つ教師にはこうした配慮が求められているわけです。

4.次回予告

今回は「ひらがなの教え方」についてまとめるつもりだったのですが、

黒板に「し」を書く以前の話で終わってしまいました。

今回は「視力検査」について書きましたが、「ひらがな」を習うために必要なのは視力だけではありません。

先生が黒板に「し」を書いたとします。

その「し」を見て視写するためには、三つの機能が必要になります。

①入力機能
②認識機能
③出力機能

①②③がそろってはじめて「し」を書くことができるのです。

視力は①の入力機能の一部にしか過ぎません。

入力機能には視力のほかに「眼球運動」という能力もあります。

細かく言えば、眼球運動にも「追従性眼球運動」と「跳躍性眼球運動」があります。

追従性眼球運動は、国語の教科書を読むときにタテに目を動かす能力です。

跳躍性眼球運動は、黒板とノートを交互にパッと見る能力です。

これらが①の入力機能です。

でも、入力機能だけでは「ひらがな」の勉強は出来ません。

次回はそのあたりについて解説したいと思います。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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5件のフィードバック

  1. 畠山 文 より:

    今、支援に入っている一年生のクラスに、字を書くのがとても苦手な子がいます。彼は、渦巻きを書くのが苦手なようです。見え方なのか、書くのに必要な手の動きが苦手なのか、、、?本人は左利きなのが原因だと思っているようですが。

    水野先生のブログや動画を参考に、一緒になぞり書きをして、オノマトペを使って書き方を伝える他、本人の希望でノートや教科書の端にお手本を書いてあげることで、書けています。

    次回のブログも楽しみにしてます。

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