講座384 乳児期のキーワードはミラーニューロン
三番目の孫が1歳になりました。
私は生まれてから週3回くらいのペースで孫の家に遊びに通いました。
その時に、ずっと続けていたことが3つあります。
今回はそのことをお話しいたします。
2.「驚く」という能力
3.「ほめる」という育て方
4.ミラーニューロンは集団にも影響を与える
1.「真似」という能力
一つは、家の中に入って最初に顔を合わせる瞬間です。
普通は持っている荷物を置いたり、ジャンバーを脱いだり、あるいは手を洗ったりしますよね。
私はそれらのことをする前に「あること」を必ずやり続けました。
部屋に入ると娘が「じじ、来た!」と言います。
そうすると孫がなんとなくこちらに注意を向けますよね。
その時に必ず、笑った顔で目を合わせることをしています。
新生児期からずっとしていました。
これを毎回続けているとどうなるかといいますと、赤ちゃんも笑うようになります。
これを「顔まね」と言います。
人間の脳には真似をする神経細胞が備わっています。
これをミラーニューロンと言います。
大人が笑いかける → 反応がなくても続ける → やがて真似をするようになる
これだけのことです。
でも、これで確実に脳の中のミラーニューロンは発達します。
反応がない時期を過ぎれば、ほぼ必ず笑い返してくれるようになります。
多分、多くの方がやられていることだと思いますが、これには意味があります。
ミラーニューロンというのは単に行動を真似するだけではなく、相手の感情を読み取る能力も持っているのです。
「共感力」とか「思いやり」ということです。
京都大学名誉教授の久保田競先生は次のように言います。
見よう見まねは、行動や言葉の学習、さらには人の気持ちの理解にまで関係しています。他人の表情を見て、その人が今何を思ったり感じたりしているかは、ミラー・ニューロンが働いてわかる―つまり、脳内で相手の表情をまねすることで、「こういう気持ちなんだな」と相手と同じ感情を抱いているのです。(城南進学研究社「脳科学コラム」)
「真似」という能力を発揮させることは、共感力の発達につながっているわけです。
2.「驚く」という能力
もう一つ続けてきたのがこれです。
驚いてあげる
赤ちゃんと一緒にいると、赤ちゃんが何かを発見することがあります。
その時に「あっ!」と声を出してあげます。
指をさして「あっ!」と言ってあげることが多いですね。
表情はもちろん「あっ!」と言って驚いた表情です。
大人が驚いてあげる → 反応がなくても続ける → やがて赤ちゃんも驚くようになる
今ではもう自分からあっちこっち指を「あっ!」とか「たっ!」とか言って指をさしています。
これもまたミラーニューロンの働きだと思うのですが、何を真似しているかと言いますと、これです。
知的好奇心
東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授の瀧 靖之先生は次のように言います。
子どもの将来にとって大切な能力の要素はさまざまありますが、特に大切なのはたった2つ。その2つとは、「知的好奇心」と「共感力」。この2つを育てるだけで、子どもの可能性は大きく広がる。(「最新の脳医学でわかった!“脳の鏡”ミラーニューロンに良いことを映すだけで、子どもの可能性はカンタンに、グングン伸びる!」ソレイユ出版)
知的好奇心というのは「なぜ?」「どうして?」「知りたい!」「やってみたい!」という気持ちのことです。
勉強の源です。学習意欲であり、生きる意欲でもあります。
そこにもミラーニューロンが関係しているわけです。
「あっ!」と驚いてあげることに、こんな重要な意味があるなんて驚きですよね。
3.「ほめる」という育て方
そして、三つ目が「ほめる」です。
どんな時にほめるかと言いますと、真似をした時です。
「パチパチしてくださーい!」と言って手をパチパチできたら、「じょうーず!」と言ってほめます。
「バンザーイしてくださーい!」と言ってバンザイできたら、「じょうーず!」と言ってほめます。
これも多くの方がやっていると思います。
先程、ミラーニューロンの大切さを解説しました。
「真似」に大切な意味があるわけですから、真似をした時にほめます。
それが三つ目に続けてきたことです。
ほめてあげると赤ちゃんでも自己肯定感が上がります。
喜びます。うれしくなります。
それは目の前の大人が喜んでいるからです。
これもミラーニューロンです。
こうやって、「喜ぶ」と「喜んでもらえる」は螺旋状に発達し、赤ちゃんの自己肯定感を伸ばすのです。
4.ミラーニューロンは集団にも影響を与える
サッカーワールドカップなどで日本人のマナーの良さが世界を驚かせたりしますよね。
実は、あれもミラーニューロンが影響していると言われています。
周りの大人の多くがマナー良いと、国民的にも「真似」が広がるということです。
東日本大震災の時の「助け合い」もそうですね。(参考:「ミラーニューロンから考える大人の役割」医療法人・こもれびの診療所)
地域や家庭でも同じことが言えます。
私が勤務していた北海道・中標津町立東小学校の子どもたちは、横断歩道で車が停止してくれると、横断したあとに渡った先で振り向いて頭を下げます。
学校にそういうきまりがあるわけではありません。
自主的にやるんです。
多分、上の学年の子がそうやっているのを見てミラーニューロンが働いているのです。
「ああいう風にするとカッコイイな」とか、「いいことだよな」とか思っているのかも知れません。
言わば「伝統」ですね。
伝統にもミラーニューロンが関わっているはずです。
そう考えると、我が家の伝統は、
①靴をそろえる
②虫を殺さない
③道端にごみを捨てない
でしょうか。
これらも「きまり」ではなく「ミラーニューロン」で育んだことです。
反応がなくてもいずれ真似するのですね。
やってみます!