講座378 「いじめ抑止」黄金の三日間
子どもたちの中には「学校に行くのが怖い」と思っている子がいると思います。
学校という世界には「いじめ」があるからです。
令和3年度の調査では、小学生の被害者経験は約8割です。
加害者経験は約7割です。
もはや、「学校に行ったらイジメに遭う」と考えなければなりません。
新年度、学校に行くのを不安に思っている子がいるはずです。
そこで考えたのが「いじめ抑止の授業」です。
今回はその授業の中身を紹介します。
2.いじめの「四層構造」
3.「それ以外の人たち」に出来ること
4.まとめ
1.定義をシンプルに
まず、いじめの定義を簡単に教えておきます。
いじめ防止対策推進法では、「相手が苦痛を感じているもの」をいじめと定義しています。
代表的なのはこの3つです。
それぞれ、何だと思いますか?
(1)は「悪口」です(陰口も含みます)。
(2)は「無視」です。
(3)は「暴力」です。
どれも「学校において生じる可能性がある犯罪行為等について(文科省)」の中に書かれています。
また、(1)と(2)については、この場合も含みます。
「インターネットを通じて行われるものも含む」と付け加えられています。
以上が、超シンプルないじめの定義です。
小学校低学年の子は、何でもかんでも「いじめ」だと考えてしまう傾向がありますが、
学年が上がった時のことを考えれば、致し方ないと思います。
学年が上がった時のいじめこそ深刻ですから。
2.いじめの「四層構造」
いじめには構造があります。
平成25年10月11日 文部科学大臣決定「いじめの防止等のための基本的な方針」の中にその構造が図示されています。
私の授業はこの構造と、「ストップいじめ!ナビ」副代表の須永祐慈氏のインタビュー記事を基にして作りました。
これが「いじめの四層構造」です。
被害者 < 加害者 < 観衆(ギャラリー)< それ以外の人たち
文科省の資料では「観衆」にカタカナ語は付いていませんが、「ギャラリー」と言った方が分かりやすいと考えて付け加えました。
また、文科省の資料では「それ以外の人たち」のことを「傍観者」と呼んでいましたが、イメージが悪いので私は敢えて「それ以外の人たち」という言い方を用語化させました。
なぜなら、この「それ以外の人たち」こそ抑止力を持っているからです。
3.「それ以外の人たち」に出来ること
「それ以外の人たち」には4つの役割(出来ること)があります。
ここが授業の中心です。
何だと思いますか?
①は「状況提供(オファー)」です。
これは「チクる」とは違います。
「話せる人に話す」ことです。
「先生に話したら私もいじめられるんじゃないだろうか?」と思う人は話さなくていいのです。
「話せる人に話す」ということです。
「家に帰ってお姉さんに話す」でもいいのです。
誰でもいいので話せる人がいたら話すというのが①の情報提供(オファー)です。
ですから、話せる人がいない場合はこれを選択しなくてもいいのです。
②は「応援(シェルター)」です。
学校帰りに靴箱の前で「今日、つらかったね」と声をかけてあげるだけでもいいのです。
家に帰ってからスマホを使って「つらいよね。話、聞くよ!」とメッセージを送るのもいいです。
いじめられているその時に、遠くの場所から手をお祈りポーズにして目だけで「がんばって!」と合図を送ってあげるのでもいいのです。
また、教室などでいじめられている時に「観衆(ギャラリー)」から一歩離れて「私は観衆ではありません」という意思表示をすることも大切です。そうすると観衆が孤立します。自分たちが観衆になっていることに気づき「マズイかも!」と思います。
このように、いつでも、どこでも、いいのです。
シュエルターになってあげてください。
観衆にはならないでください。
③は「スイッチャー」です。
加害者に近い人が、「もっとおもいろいことして遊ぼうぜ!」などと言って、加害者の気持ちをいじめから切り替えさせる方法です。
「もうすぐ先生が来ると思うよ!」とかでもいいでしょう。
「早く体育館行こうよ!」とかでもいいでしょう。
いじめはいじめをする側の人にとってもマイナスな行為です。
その人を加害者にさせない工夫も必要です。
切り替えさせることが出来る人はスイッチャーになってあげてください。
④は「記録する(メモする)」です。
多くの子どもたちは知らないと思うのですが大人の世界では記録がものを言います。
記憶は消えますが記録は残ります。
大きな事件になってしまった場合に記録が人を助けることがあるのです。
家に帰ってから紙にメモしておくとか、日記に書いておくとか、教室の離れた場所でこっそりメモするとか、とにかく書いておくと、後から思わぬ助けになることがあります。
メモする時のポイントは、日付・時刻・場所・人の名前を入れることです。
これは被害者を助けるだけでなく、大きな事件になる前に加害者を助けることにつながる可能性さえあります。
一人のちょっとした行動でも役に立つのです。
4.まとめ
いじめ問題で最も重要なのは、いかに「防止」するかです。
脅しやお説教では防止が難しいものです。
ポイントは「子供集団」にあります。
1.子どもは子供集団の中で生活しています。
2.そして、子供集団には教育力(抑止力)があります。
3.集団の抑止力を発揮させ、加害者も被害者も生ませない教育こそ防止の核心です。
そう考えてこの授業を作りました。
授業ですからクラス全員が「観衆」と「それ以外の人たち」という構造を知ります。
「それ以外の人たちの役割」も知ります。
クラス全員が「止め方・助け方」を知っているということが抑止力になります。
仮に、いじめが起きても被害者を孤立させない力が生まれるかも知れません。
ぜひ、この授業を家庭や学校で子どもたちにしてあげてください。
PowerPointのスライドはこちらからダウンロードできます。
最後に、向山洋一師の次の言葉を紹介して終わります。
教師の言うことには平気だった子も、クラスの友人の声には動揺します。
このように、「子供集団」には、教育力があるのです。(向山洋一『いじめの構造を破壊せよ』)
《この講座のYouTube動画》
【授業】いじめの止め方・助け方
パワーポイントスライドもありがとうございます。
記録するなら引っ込み思案な子どももできますね。誰にでもできることがあるのだと勉強になりました。