講座291 「赤ちゃんらしさ」って何?
お母さん方に聞いてみました。
「『赤ちゃんらしさ』って何だと思いますか?」
一番多かった答えは「泣くこと」でした。
「泣く」は、まさに「赤ちゃん」ですよね。
「赤ちゃんらしさ」って何だと思いますか?
→ 泣くこと
単純なことのように思えますが、
実はこのことは大変重要な意味を持ちます。
今回は「赤ちゃんらしさ」について解説します。
2.先回りはNG!
3.「かまってあげる」とは
4.「タイミングをみてかまってあげる」とは
5.「赤ちゃんらしさ」とは
1.できる範囲で無視しない
赤ちゃんが泣いたらどうしますか?
何かしますよね。
抱っこしてあげることが多いですよね。
でも、すぐに対応できない時だってあります。
お料理してたり、洗濯物を干していたり、急には対応できない時もあります。
そういう時にどうしますか?
「ちょっと待っててね!」
「今、行くからね!」
「おなかすいたのかな?」などと、
手が放せないのでとりあえず声をかけることもあります。
これだって対応です。
できる範囲で無視しないで、やれる範囲で対応してあげる。
多分、これが現実的な対応でしょう。
実は、この「現実的な対応」が理想的な対応なのです。
赤ちゃんへの対応で大切なことは次のことです。
【重要】タイミングをみて、かまってあげること。
なぜこれが重要かというと、
赤ちゃんの成功体験になるからです。
泣いたら来てもらえたというのが赤ちゃんの成功体験です。
その積み重ねで「基本的信頼」を獲得します。
ですから、「できるだけ無視しない」というのは大切なことになります。
ここで大切なのは「できるだけ」が付くことです。
お母さんだって人間ですから気づかずに無視してしまうことだってあります。
完璧は不可能です。
でも、それが「ちょうどいい」のです。
泣いたのに来てくれなかった…涙
赤ちゃんにとっては、こうした失敗体験も必要です。
この失敗体験は「基本的不信感」と言います。
これがあるから信頼が生まれるのです。
100%成功だと成功した時の喜びは強化されません。
たまには失敗する。
来てくれないかも知れない。
そういう経験があるから、来てもらえた時の喜び(成功体験)は大きくなります。
理論的にはそういうことです。
ですから「できるだけ無視しない」が「ちょうどいい」のです。
2.先回りはNG!
この理屈の上に活用するお母さんもいます。
赤ちゃんが泣いてもすぐに抱っこしないで、
タイミングをみてから対応するお母さんです。
赤ちゃんの「泣き」を信号だとするならば、
その信号を発信させてから対応してあげるお母さんです。
これはどういうことかと言いますと、逆を考えればわかります。
【NG対応】先回りして泣かせないようにする。
NGなのは、泣かせないようにすることを優先する子育てです。
泣かないようにするために、先に先に授乳するとか、
泣かないようにするために、先に先にオムツを取り換えるとか、
目的が「泣かせない」になってしまっている子育てです。
これは赤ちゃんの「泣く」という能力を使わせないわけですからNGです。
NG(No good)どころか、SB(So bad)ですね。
ですから、このことを理解しているお母さんは、赤ちゃんをちょっとだけ泣かせてタイミングよく対応することができます。
【重要】タイミングをみて、かまってあげること。
ゴールが赤ちゃんにとっての成功体験だということがわかればこれができます。
そして、これを読んだ方はもう理解できると思いますが、
忙しくて対応できない時に、
「ちょっと待っててね!」
「今、行くからね!」
「おなかすいたのかな?」などととりあえず言葉をかけながら対応している姿も実は理想的なんです。
ですから結果的に(現実的に)、
「できるだけ無視しない」が「ちょうどいい」
となるわけです。
これは、お母さんも人間ですから、頑張って完璧をめざす必要はないということでもあります。
3.「かまってあげる」とは
ここまでは理論です。
エリクソンの発達段階理論と言います。
最後に、技術について補足します。
【重要】タイミングをみて、かまってあげること。
この「かまってあげる」の「かまってあげ方」という技術です。
「かまってあげる」とは、
①言葉をかけながら
②笑顔で
③対応してあげることをいう。
「あら~泣いてたのぉ~」と言いながら(①)
優しい表情で近づいて目を合わせて(②)
抱っこしてあげる(③)
こういうのが基本になります。
多くのお母さんがやっていることだとは思いますが、
広く、多くの人に伝えるためにはこのように技術化することは重要です。
若いお父さん方の中には、こうやって伝えて初めて理解できる人もいます。
父親教育には必要かも知れません。
4.「タイミングをみてかまってあげる」とは
言葉をかけながら、笑顔で対応してあげると赤ちゃんに何が起きるか?
【A】不快・不安の解消
【B】快感と喜びの発生
6ヵ月未満の赤ちゃんが泣く原因の多くは「不快」ですから、それが解消されます。
6ヵ月以上になると要求で泣くことが増えますから、要求を満たされることで「不安」が解消します。
それと同時に「快感と喜び」が発生します。
次の刺激があるからです。
(1)コミュニケーション
(2)笑顔
(3)スキンシップ
「かまってあげる」という行為を分析すると以上のようになります。
そして、これに「タイミングよく」が加わると、赤ちゃんにとっての成功体験になるわけです。
それが「タイミングをみてかまってあげること」の中身です。
【重要】タイミングをみて、かまってあげること。
そして、多くのお母さんたちは既にこのことをやっているはずです。
今回はその解説をしたわけです。
最後に「赤ちゃんらしさ」についてまとめて終わります。
5.「赤ちゃんらしさ」とは
「赤ちゃんらしさ」の代表は「泣く」でした。
あと二つあります。
確認する
赤ちゃんは動けませんし、話せません。
ですから布団やベッドの中で天井を見ながら「確かめる」という行動をしています。
何を確かめているかと言いますと、
赤ちゃんにとって一番大切なものです。
自分の命にかかわる存在。
そう「母親」です。
お母さんがどこにいるかを絶えず確認しています。
追う
法律では「赤ちゃん(乳児)」は1歳未満ですが、
発達心理学では「赤ちゃん(乳児)」は1歳半までです。
これは「話せる」「歩ける」といった発達段階で区切っているからです。
「赤ちゃんらしさ」の行動の三つ目はこれです。
目で追う、ハイハイで追う。
話ができるようになるまで、立って歩けるようになるまではこの「追う」も大切な行動です。
以上をまとめると「赤ちゃんらしさ」は次の三つです。
(1)泣く:発信能力
(2)確かめる:確認能力
(3)追う:接近能力
これらは赤ちゃんの能力なんです。
能力を使うからこそ成功体験があるわけです。
そして、成功体験の一方には、少しの失敗体験も必要。
赤ちゃんは赤ちゃんらしく。
お母さんは人間らしく。
それが「赤ちゃんらしさを大切にする」ということです。
我が息子は5ヶ月。
最近私が部屋から出て離れると、悲しそうに泣くようになりました。
私はその泣きに、「洗濯干したらくるからね」「トイレだからね」など言葉をかけています。
そうすると、不思議と泣きやみ、一人で遊びだします。
言葉は分かっていないとは思うのですが、感じているのでしょうね。
赤ちゃんってすごいです。
感じているよね!
素晴らしい対応です!(^^)/
声かけの大切さがよく分かりました!
泣いてもすぐに対応できないことがよくあったのですが、解説を読んで安心しました
そして息子は3か月になりますが、自力で寝付いたり目覚めていてゴロンさせていてもあまり泣かず、「大人しい」とよく言われるタイプです。赤ちゃんはよく泣くはずなので、ちょっと心配です。でも「待つ」ことがよくできると考えていいのかなと思いました。あまり泣かないので、対応する機会が少なく気になっていましたが「タイミングよく」や成功体験を大切に関わりたいです
あまり泣かないのは性格かも知れませんね。
ASDの特徴でもありますが9割は個性です。
「泣く」だけにフォーカスせずに、「待つ」が得意だという考え方!なるほどです!
そうやって愛着形成を図っていれば、仮にASDだとしても障害には至らず定型発達が望めます。
ですから、今やれることとして間違っていません。
赤ちゃんが泣くと泣かせてしまったとかすぐに駆けつけてあげられなかったと思わなくて良いんだなと勉強になりました。
堂々と応答していこうと思います。
そういうことです!
テーマは「持続可能な子育て(サスティナブル・チャイルドケア)」です。
意図を汲み取ってくれてありがとう!