講座453 愛のゆくえ
今日は久々に本の紹介をします。
森口佑介さん(京都大学准教授)の『子どもの発達格差』という本を
私なりに5分で解説します。
2.「今を生きる」と「未来に向かう」
1. 将来を左右する要因は何か
この本の副題は「将来を左右する要因は何か」です。
なんだと思いますか。
愛情です。
愛着形成と言ってもいいです。
少し正確に言うとこうなります。
養育者への信頼
これが将来を左右するというわけです。
「泣いたら来てくれる」とか
「怖いけどお母さんが見てるから大丈夫」とか、
そういう信頼です。
最近の研究ではマシュマロテストにも信頼が関与していることがわかっています。
「15分我慢したらもう1個あげるわよ」と言った人が知らない人なのか母親なのかで結果を左右するということです。
信頼のある人から言われたなら、そりゃあ我慢してみようかなと思いますよね。
でも、知らない人から言われたら15分後に本当に来るかどうか怪しいですよね。
「信頼」というのは「我慢」に先行する大切なキーワードなんです。
そして、その信頼は愛情によって育まれます。
その「信頼」から3つの能力を身につけます。
それが生きる力です。
コントロール力(前頭前野の発達)
理解力(他者理解)
行動力(社会的行動)
学力という言葉がありますが、それはコントロール力に付随して表れる結果の一部だと思います。
世の中を生き抜くためには学力だけじゃ厳しいんですよ。
「他者理解」と「向社会的行動」が必要になります。
今後はますます求められると思います。
2.「今を生きる」と「未来に向かう」
この本のキーワードは「今を生きる」と「未来に向かう」です。
格差という現象をこの2つの言葉で整理したのが凄いところです。
「今を生きる」というのは、後のことを考えないで「今が楽しけりゃいい!」という考え方です。
勉強ができなくなっても、今、ゲームがしたい!
太るのはわかっているけど、今、このケーキが食べたい!
マシュマロテストは我慢すれば2個もらえるというテストでしたが、今を生きる子にとっては将来の2個よりも現在の1個の方が必要なんです。
それは「1個」を選んだ子がダメだとか、発達していないとか、そういうことじゃなくて、貧困環境にある子だったら生きるためには「1個」が最適解である場合もあるということです。
世の中にはすでに格差が存在するわけですから「今」を選択しなかれば生きられない子もいるということです。
もちろん、その背後には乳児期の愛着形成ができていたかどうかという視点はあります。
そこを改善するには世の中の仕組みが必要です。
それは必要ですが、今を生きる子もいるという視点が同時に必要なのが「今」ということです。
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