講座157 小さい時の体験がその後に役立つ!
文科省が凄い調査をしました。
2万人以上の子供を0歳から18歳まで追跡調査したのです。
そのデータを用いて、子供の頃の「体験」がその後の成長に及ぼす効果を分析しました。
調査対象になったのは「平成13年生まれの子どもたちとその保護者」です。
その親子を18年間追跡調査したというのですから凄いですよね。
しかもデータはちゃんと統計処理がされた根拠のあるものです。
今回はその結果を紹介したいと思います。
2.どんな体験か
3.どのように追跡したのか
4.「6歳までに1000の体験」との違い
5.その他の資料
1.明らかになった結果
まず結果から紹介します。
「そりゃそうだろう」と思うかも知れませんが、
一番のポイントは「それをはっきりさせた」という点です。
今までは、「体験が成長によい影響があるんじゃないか」「いや、あるでしょう」
という程度だったのです。
それが今回の調査で「はっきりした」ということです。
で、その「体験」とはどんな体験なのか?
どんな「良い影響」があるのか?
そこを見ていきたいと思います。
2.どんな体験か
「体験」については、「自然体験」、「社会体験」、「文化的体験」、「遊び」、「読書」、「お手伝い」の大きく6つの点に着目した。(報告書より抜粋)
もうちょっと大きくまとめるとこんな感じです。
「自然体験」と「社会体験」はわかりやすいですよね。
そこに「生活・文化体験」が加わったというイメージです。
「生活」には「放課後の遊び」「家でのお手伝い」などが含まれます。
こういうのも「体験」というわけです。
ちなみにもう少し細かく分類したものがこれです。
私たちは「6歳までに1000の体験」というサイトをアップしましたが、それと似ていますね。
3.どのように追跡したのか
0歳~5歳にかけての調査、6歳~12歳にかけての調査、12歳~18歳にかけての調査。
そして、それぞれの時期にどんな質問をしたかが書かれています。
「意識等」の欄にあるのが「良い影響」の項目です。
簡単に言うと、意欲的で、外向的で、自信を失っていなくて、感情を調整できる子。
そして、挫折にも強い。
そういう「良い影響」が明らかに有意だったということです。
これらが「父母の収入」にかかわらず相関していたという結果も出ています(結果②)。
グラフが3つ出ていますが、
家庭の収入にかかわらず「右肩上がり」ですよね。
これは、「体験」が多い子ほど高校生になっても自尊感情が高かったことを表しています。
4.「6歳までに1000の体験」との違い
私たちのプロジェクトでは大まかに次のような分け方をしました。
【2歳】は「ごっこ遊び」
【3歳】は「外遊び」
【4歳】は「生活体験」
【5歳】は「自然体験」「社会体験」「学習体験」「運動体験」
これらの分け方に明確な根拠があるわけではありません。
多くの育児書や子育ての経験などに基づいて分けただけです。
「6歳までに」というのをひとつのゴールに設定しているので、
「それまでにはこのような体験を」という意味です。
ちなみに、なぜ「6歳までに」なのかというと、
教師としての経験ですと小学校入学時点で、すでに「良い影響」を受けた子とそうじゃない子の特徴が見えてくるからです。
そして、その差は「その後の学校での活動・勉強」という場面で、なおはっきりと出て来るのです。
そういう意味で「6歳までに」というのを設定しました。
あと、学校が始まると、友だちとの遊びも増えて、親子で出かける機会が少なくなるので、
「その前までに」という意味もあります。
また、もう一つ大切なのは「父親の出番」です。
「自然体験」や「社会体験」はお父さんが外に連れ出す絶好のチャンスですし、
3歳を過ぎるとお母さんが一緒に行かなくても動きがしっかりしてくるので、
お母さんには家で一人でのんびりしてもらいたいという願いもあります。
5.その他の資料
今回の文科省の報告の中で、気になる資料があったので最後に添付しておきます。
0歳~5歳にかけての調査の一つです。
「しつけをしていない」に着目しましょう。
40%超えは2項目。
①「食事の後自分の食器を台所に運ぶ」
②「テレビやコンピュータゲームをする時間は決めている」
この2つがあまりされていないんですね。
①は逆に言うと、ちゃんとしつけられた子は「しつけのいい子」になるチャンスですよね。
みんなあまりしていないのですから。
②は放置した方が楽だからでしょうか。
決めても守らせるのが難しいというのもありますね。
これを取り上げると長くなるので今回は解説しません。
次の資料です。
お手伝いの中身ですね。
参考になります。
放課後の遊ぶ場所です。
「空き地や路地」「自然の場所」は少ないのがわかります。
このことからも、意図的に「自然体験」をさせる必要があると思います。
この資料からは分かりませんが、調査では、いろんな人と遊ぶ経験が有意だとなっています。
「遊び」については、特に遊び相手の多様性(年上、年下、家族以外の大人と遊ぶか)と意識等との関連性がより明瞭に見られ、これら多様な相手と遊ぶ機会があった者の方が、その後様々な意識等が高いという結果になっている。このような結果はヒアリング調査の結果とも整合的であり、「多様な他者」との交流が重要であることが示唆される結果となっている。(報告書より抜粋)
以上で報告書の紹介を終わります。
一番のポイントは、
小さい時の体験がその後に良い影響を与えるということが明らかになった
ということでした。
こういう事が周知され、保育士のスキル、賃金、園全体の質の向上に繋がると良いなと感じました。
親も知識として知り、子供に体験させる事を意識することは重要だと思いますが、それが難しい家庭もあるのかな?と。
そこで、社会の幼児教育というか、幼児の育つ環境への意識が向上し、園の質の向上へ繋がると良いなと、思いました。
高等教育も大切かと思いますが、私は幼児教育こそ、大事だと考えます。こういう記事、良いと思います❗️
幼児期の教育で、社会も、その頃の一生も変わることがわかっています。超重要ですね。