講座145 中高生の性教育

講座144 性教育はいつからか?」の続きです。

前回の内容を簡単にまとめます。

・小学校の性教育は4年生で扱う
初経、精通などは教えるけど性交は扱わない

ということでした。

性交に関しては「歯止め規定」というものが存在するという話もしました。

・「妊娠の経過(どうやって妊娠するか)」は取り扱わないものとする
学校全体で共通理解を図ること
保護者の理解を得ること

こういう歯止めがかかっているので、

小学校で性交について教えるのはほとんど無理という話でした。

では、中学・高校ではどうなのかというのが今回のテーマです。

 目 次
1.中学校での性教育
2.生殖に関わる機能の成熟 (中1)
3.感染症の予防 (中3)
4.高校での性教育
5.まとめ

1.中学校での性教育

中学校での保健の授業って「3年間」で「48単位時間程度」実施することになっています。

中身を見てみましょう。

[保健分野]の内容
(1) 健康な生活と疾病の予防
 (ア)健康の成り立ちと疾病の発生要因
 (イ)生活習慣と健康
 (ウ)生活習慣病などの予防
 (エ)喫煙,飲酒,薬物 乱用と健康
 (オ)感染症の予防
 (カ)健康を守る社会の取組
(2) 心身の機能の発達と心の健康
 (ア)身体機能の発達
 (イ)生殖に関わる機能の成熟
 (ウ)精神機能の発達と自己形成
 (エ)欲求やストレスへの対処と心の健康
(3) 傷害の防止
 (ア)交通事故や自然災害などによる傷害の発生要因
 (イ)交通事故などによる傷害の防止
 (ウ)自然災害による傷害の防止
 (エ)応急手当の意義と実際
(4) 健康と環境
 (ア)身体の環境に対する適応能力・至適範 囲
 (イ)飲料水や空気の衛生的管理
 (ウ)生活に伴う廃棄物の衛生的管理

たくさんありますねえ。

この中で「性教育」に関係するのはどれだと思いますか?

感染症の予防

これは関係ありそうですね。3年生で習います。

生殖に関わる機能の成熟

これは1年生で習います。

この2つをそれぞれ解説してみましょう。

2. 生殖に関わる機能の成熟 (中1)

これを勉強するのは中学生になったばかりの中学1年生です。

ここではもう「受精」「妊娠」「性衝動」などについて勉強するのですが、

ご存知の通り「歯止め規定」が書かれています。

妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から,受精・妊娠を取り扱うものとし,妊娠の経過は取り扱わないものとする。また,身体の機能の成熟とともに,性衝動が生じたり,異性への関心が高まったりすることなどから,異性の尊重,情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについて取り扱うものとする。

受精や妊娠は取り扱うのに「性交」については触れないことになっています。

「えっ?」っていう感じですよね。

しかも、最初に書いてあります。

「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まる」から

そうですよね。体は変化してますよね。

おまけに「性衝動が生じたり」するからとも書いてあります。

それなのに「妊娠の経過(性交)」は扱わない。

これが中学校1年生の性教育です。

そして、もちろん次の2つもちゃんと書かれてあります。

指導に当たっては
学校全体で共通理解を図ること
・保護者の理解を得ること

学習指導要領に書かれてあること以外は「ほぼ出来ない」仕組みになっています。

3. 感染症の予防 (中3)

義務教育最後の学年です。

どんなことを習うのでしょう。

後天性免疫不全症候群(エイズ)及び性感染症についても取り扱うものとする。

詳しく見てみましょう。

エイズ及び性感染症の増加傾向と青少年の感染が社会問題になっていることから,それらの疾病概念や感染経路について理解できるようにする。また,感染のリスクを軽減する効果的な予防方法を身に付ける必要があることを理解できるようにする。例えば,エイズの病原体はヒト免疫不全ウイルス(HIV)であり,その主な感染経路は性的接触であることから,感染を予防するには性的接触をしないこと,コンドームを使うことなどが有効であることにも触れるようにする。 なお,指導に当たっては,発達の段階を踏まえること,学校全体で共通理解を図ること,保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である。

「感染経路」や「性的接触」や「コンドーム」を扱うということは「性交」も扱ってよいのか?

あの「歯止め規定」はないのか?

ない

ないんです。

あの「歯止め規定」は、小学校と中1には「内容の取扱い」という規定の中に書かれていますが、

中学3年の内容である「感染症の予防」に対しては書かれていません。

つまり、中3になってようやく「性交」についても具体的に取り上げて学習することができるようになっています。

ただし、次の2つは相変わらず残っています。

指導に当たっては
学校全体で共通理解を図ること
・保護者の理解を得ること

4.高校での性教育

高校の「保健」は1年生と2年生の2年間で実施します。

扱う内容はかなり広いです。

もはや性教育はどこ?って感じです。

どこだと思いますか?2ヵ所が該当します。

「保健」の内容
(1)現代社会と健康
 (ア)健康の考え方
 (イ)現代の感染症とその予防
 (ウ)生活習慣病などの予防と回復
 (エ)喫煙,飲酒,薬物乱用と健康
 (オ)精神疾患の予防と回復
(2)安全な社会生活
 (ア)安全な社会づくり
 (イ)応急手当
(3)生涯を通じる健康
 (ア)生涯の各段階における健康
 (イ)労働と健康
(4)健康を支える環境づくり
 (ア)環境と健康
 (イ)食品と健康
 (ウ)保健・医療制度及び地域の保健・医療機関
 (エ)様々な保健活動や社会的対策
 (オ)健康に関する環境づくりと社会参加

「現代の感染症とその予防 」が該当しそうですね。

もう1ヵ所あります。

それは「生涯の各段階における健康」という勉強です。

それぞれ、どんな内容なのかを見てみましょう。

まず、感染症についてです。

感染症は,時代や地域によって自然環境や社会環境の影響を受け,発生や流行に違いが見られることを理解できるようにする。その際,交通網の発達により短時間で広がりやすくなっていること,また,新たな病原体の出現,感染症に対する社会の意識の変化等によって,腸管出血性大腸菌(O 157 等)感染症,結核などの新興感染症や再興感染症の発生や流行が見られることを理解できるようにする。 また,感染症のリスクを軽減し予防するには,衛生的な環境の整備や検疫,正しい情報の発信,予防接種の普及など社会的な対策とともに,それらを前提とした個人の取組が必要であることを理解できるようにする。その際,エイズ及び性感染症についても,その原因,及び予防のための個人の行動選択や社会の対策について理解できるようにする。

これはまさに「新型コロナ」ですよね。

つまり、O157なども含めたすべての感染症について、社会的な意味での理解が中心になります。

「エイズ」と「性感染症」も出てきますが、おまけのような感じで出ています。

次に、もう一つ該当している「生涯の各段階における健康」を見てみましょう。

思春期における心身の発達や性的成熟に伴う身体面,心理面,行動面などの変化に関わり,健康課題が生じることがあることを理解できるようにする。その際,これらの変化に対応して,自分の行動への責任感や異性を理解したり尊重したりする態度が必要であること,及び性に関する情報等への適切な対処が必要であることを理解できるようにする。 なお,指導に当たっては,発達の段階を踏まえること,学校全体で共通理解を図ること,保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である。

ここへ来て「性情報へ適切な対処」が書かれています。

小学生や中学生にも必要だと思うのですが、どうなんでしょう。

しかも、例によって「学校全体で共通理解」「保護者の理解」が付いています。

これって結局、センシティブな内容は扱わないようにってことですよね。

この歯止めがある限り、踏み込んだ内容(本当に必要な内容)は授業で扱うのが難しいと思います。

解説がもう一ヵ所書かれているので抜粋します。

結婚生活と健康 結婚生活について,心身の発達や健康の保持増進の観点から理解できるようにする。その際,受精,妊娠,出産とそれに伴う健康課題について理解できるようにするとともに,健康課題には年齢や生活習慣などが関わることについて理解できるようにする。また,家族計画の意義や人工妊娠中絶の心身への影響などについても理解できるようにする。また,結婚生活を健康に過ごすには,自他の健康に対する責任感,良好な人間関係や家族や周りの人からの支援,及び母子の健康診査の利用や保健相談などの様々な保健・医療サービスの活用が必要であることを理解できるようにする。 なお,妊娠のしやすさを含む男女それぞれの生殖に関わる機能については,必要に応じ関連付けて扱う程度とする。

う~む。もう、なんだか分からなくなって来ました。

もう、どうでもいいや!って感じです。

さっさとまとめに入りましょう!

5.まとめ

そもそもの始まりは「性教育っていつからなの?」という素朴な疑問でした。

親が教えればいいのかも知れませんが、ちょっと恥ずかしいなとか、抵抗あるなあっている親だっていますよね。

それはともかく、じゃあ学校ではどうなってるの?ってことを知っておきたいですよね。

それで今回調べてみたわけです。

ザックリまとめましょう。

【小学校】
・小学校の性教育は4年生で扱う
初経、精通などは教えるけど性交は扱わない

【中学校】
・中1で「受精」「妊娠」を教えるけど性交は扱わない
・中3で「エイズ」「性感染症」「コンドーム」について教える

【高校】
・「性情報へ適切な対処」を教える
・「人工妊娠中絶の心身への影響」を教える

学校が「性交」を扱うのは中学3年生ということですね。

それも指導に当たっては「保護者の理解を得ること」という但し書きが書かれています。

ということは、

性教育の主催者は保護者?

ってことでしょうか?

親がやるなら子どもが何歳でもいいわけですよね。

でも、私は、学校と何かしらの連携をしたいのです。

こうした縛りがある中であっても、本当に今の子どもたちに必要な情報を与えたいのです。

今後も勉強していきたいと思います。

関連ページ:男子中高生向け「男の授業」

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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