講座120 街で見かけた理不尽な叱り方・第6話
水族館のお土産もの売り場で、肩からチラリと刺青(入れ墨)の見えているお母さんが小学生の男の子に言っていました。
「お土産買ってやるけど、家に置いとおけよ。
施設にはもっていっちゃだめだぞ。
施設の人には水族館へ来たこと言うなよ。」
想像しただけで怖そうですね。
こうした「乱暴な言葉づかい」は虐待にあたると思いますか?
どんな影響があると思いますか?
今回はこのことについて解説します。
2.「言い方」や「刺青」だけの問題ではない
1.「虐待」と「乱暴な言葉づかい」
手っ取り早く「虐待防止法」を見てみましょう。
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者がその監護する児童について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
「言葉」に関係があるのは「四」の「著しい暴言」「著しい心理的外傷」ですね。
ここを詳しく見てみましょう。
厚生労働省は「心理的虐待」について次のように解説しています。
・ ことばによる脅かし、脅迫など。
・ 子どもを無視したり、拒否的な態度を示すことなど。
・ 子どもの心を傷つけることを繰り返し言う。
・ 子どもの自尊心を傷つけるような言動など。
・ 他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする。
・ 配偶者やその他の家族などに対する暴力や暴言。
・ 子どものきょうだい、一~四の行為を行う。
このお母さんの言葉が虐待に当たるかどうかは、それが「ことばによる脅かし」に該当するかどうかという問題です。
「お土産買ってやるけど、家に置いとおけよ。
施設にはもっていっちゃだめだぞ。
施設の人には水族館へ来たこと言うなよ。」
広瀬すずちゃんみたいな可愛い人が「置いとけよ!」とか「だめだぞ!」と可愛らしく言うのとはわけが違います。
どうみてもこれは「脅し」ですよね。
「脅し」がどうしてダメなのかはもう皆さん知ってますよね。
そうです。脳を傷つけるからです。
福井大学教授の友田明美先生は次のように発言されています。
言葉の暴力は、身体の表面には傷をつけないが心や脳に傷をつけることを看過してはならない。
母親から「ゴミ」とか「死ね」とか、「お前なんか生まれて来なければよかった」などと言われると、
側頭葉の発達に異常をきたし、知能や理解力の発達にも悪影響が生じると言われます。
出典:心理学ワールド 80号「体罰や言葉での虐待が脳の発達に与える影響」
2.「言い方」や「刺青」だけの問題ではない
この「脅し」というのは言い方だけの問題じゃないんです。
「言葉」の問題(言葉の内容自体)の問題なんです。
「来たこと言うなよ」は言葉の内容が「脅し」ですよね。
極端な話、このセリフを刺青の母親が怖そうに言っても、広瀬すずさんが可愛らしく言っても、
脳にはストレスとして届くのです。
先日、私もやってしまいました。
孫はおじいちゃんである私を大好きです。
遊びに来ると、いつも私と一緒におもちゃで遊びます。
先日、おもちゃを手に持って「戦い」の場面になりました。
お互いにおもちゃを持って戦うわけです。
その時の戦いは孫が圧倒的に優位でした。
私の側は、もう追い込まれています。
私は手にしているおもちゃを通して、「お母さんに言うぞ」というセリフを使いました。
その時です。
孫の体は急に固まって、目からは涙がポロポロ。
楽しい遊びの真っ最中であっても、「脅し言葉」はこんなにも影響力があるだなと、
私は人の事が言えないなと、反省した場面でした。
念のために書いておきますが、孫の母親は決して怖い母親ではありません。(^^;
見た目や言い方が優しくても、脅し言葉は影響があるとは驚きです。
私は歯磨きをいやがる時、虫歯になってもいいなら、しなくても良いよと伝えますが、これも脅しなのでしょうか?
他に気になる事として、義母、つまり子どものおばあちゃんが、○○なら、○○は無しよや、夫が痛いことしたらかもう遊ばない、などと言うことがあります。
そのせいか、子どもは遊ばないなら叩くなど言います。私にはあまり言わないのですが、義母や夫に対して、脅しを使った交渉をします。気になります。
すべて「脅し」に当てはまります!(^^)/
違う言葉にした方がいいですね。
ちょっと考えてみますね。