講座33 2020年に読んだ本「私のベスト3」第1位
金谷武洋 『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』(飛鳥新社)602円
これは衝撃的でしたねー。
33年間、子どもたちに「ウソ」を教えていたことがわかりました。
私は教員時代、「国語」を教えるのはひそかに得意だと思っていました。
その自信が一気に崩れ去りました。「サヨナラ~」です。
どうして「日本語」じゃないの?
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ドイツは「ドイツ語」、イギリスは「英語」、フランスは「フランス語」、って言うのに、どうして日本は「国語」なの?
今まで何も疑問に思っていませんでした。
日本語を習うのは日本に来た外国人くらいだと思っていました。
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そう言えば日本人は「日本語」を習ってないな!
学校で習う「国語」って、あれは日本語なの?
大丈夫じゃなかったんですねー。残念ながら。
もし、私が生まれ変わって、また教員になったら、今度は必ず「国語」じゃなくて「日本語」を教えます!
恥ずかしい! 悔しい! やり直したい!
2.日本語を使っていると心が優しくなる!
3.日本語が「謙虚」な理由
4.まとめ
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1.日本語が簡単な理由
日本語はスゴイですよ!
日本語を使っていると優しくなるのです。
たとえば、外国の方って自己主張が強いというか、ハッキリしてるというか、そういう印象ってありますよね。
そういう外国人が日本語を覚えると、日本人のように優しく、穏やかに、遠慮深くなるというのです。
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私はこの番組の大ファンなんですけど、「日本人よりも日本人らしい外国人」がたくさん出てきます。
加えて「日本語がうまい」んです。
びっくりするくらい普通にしゃべるんです。
どうしてそういう外国人がたくさんいるのか?
この本を読んでわかりました。
(1)日本語は他の言語に比べて覚えやすい!
(2)日本語を使っていると心が優しくなる!
私は誤解していました。
日本語って難しいんじゃないかなと思っていたのです。
ところが違いましたね。
日本語は世界的にみると「簡単な言語」なのです。
YOUたちが、「えー!そんなに簡単なの!」と絶叫するくらい簡単なのです。
本の中からその理由をいくつか紹介します。
①文法が簡単!
「動詞の変化」とか「人称変化」という面倒な文法がない。
②発音が簡単!
英語の音素(発音のもとになる音)は45、フランス語は36あります。
音素がたくさんあると、その組み合わせも複雑になります。
それに比べて日本語はシンプル。
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日本語の音素は、この表のアルファベットにG、Z、D、B、Pの5つを加えて19しかありません。これは世界的に見て少ない方だといいます。
③基本文が3つしかない!
英語は「S+V+O」とかを中学校でやってましたよね。5文型です。
それに対して日本語は3文型。
動詞文:よく笑う。
形容詞文:かわいい。
名詞文:赤ちゃんだ。
これだけです。
S(主語)やO(目的語)がなくても「文」になるのです。
「文には主語が必要だ」と教わったのは間違いだったのです。
「YOUは何しに日本へ?」の中には、同じ外国人でも「日本語の下手な外国人」と「めちゃめちゃ上手な外国人」が出てきます。
その違いがどこにあるか知ってますか?
A:あなたはいつ日本へ来ましたか?
B:いつ来たの?
「日本語の下手な外国人」はAをやっちゃいます。
英語のクセが抜けないので主語を入れちゃうんです。
ところが、日本語をちゃんと勉強した外国人は知っています。
「いつ来たの?」だけの方が自然だということを。
つまり、
日本語に主語はいらない
ということを「日本語を勉強した外国人」は学んでいるわけです。
逆に、日本人はそういう日本語の特徴を習っていませんから、「主語がないと文にはならない」と思い込んでいます。
なにしろ小学校の二年生で次のように習いますから。
下の文の中で「ひよこが」「ぼくは」のように、「何が」「なには」にあたる言葉を主語といいます。また、「生まれる」「かわいい」「ひよこだ」のように、「どうする」「どんなだ」「なんだ」にあたる言葉を述語といいます。
こうした文法はいつから始まったかと言いますと、
明治になってからです。
欧米をお手本に!
日本は、文法までも無理やり欧米にに合わせちゃったんです。
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2.日本語を使っていると心が優しくなる!
英語は主語がないと文ではありませんから「I」とか「You」とかが明確に出てきます。しかも文の最初に。
「私はこう思う!」
「お前の考えはこういうことか?」
そんな感じで、「自分と他人を区別すること」が文法的に必要なのです。
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日本人なら「富士山が見えるね!」という会話が成り立ちますが、
英語だと「I see Mt. Fuji!」とか、「You can see Mt. Fuji!」となります。
何が違うかというと、
日本語は「相手と共感」
英語は「自他を区別」
という文法上の宿命があるのです。
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「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいる暖かさ(俵万智)
俵さんの短歌では相手が同じことを言ってますが、日本語では別に返事をしなくても「共感」できます。
「寒いね!♡」
これだけで共感しちゃう!
でも、英語だと、ぎこちない言い方になります。
「私は寒い」
「私たちは寒い」
「今日は寒い朝だ」
「あなたは寒いですか?」
どんなに頑張っても日本語の「寒いね」をうまく表現できません。
「おはよう」を表す「Good morning」も、元をたどれば、
I wish you a good morning this morning.(私はあなたにとってこの朝がよいものであるように祈っています)
というように「私」と「あなた」を区別してしまいます。
一方、日本語の「おはよう」は「お互い早いね!」という共感です。
外国人が日本語を使うと「優しくなる」秘密はここなんです。
自他を区別する思考が薄まり、相手と共感する思考が濃くなる。
すんごい言語ですね!日本語って!
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3.日本語が「謙虚」な理由
外国から来た方は電車の中でも平気で大声で会話する傾向がありますよね。
そもそも「マナモード」という言葉は日本だけにあるそうです。
しかし、そうした「文化の違い」だけではなく、「言語の違い」も関係しているようです。
日本語は周波数が低い
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日本語は、最高レベルでも英語の最低周波数より下です。
しかも「桁」が違います。
楽器で言えば、英語は「バイオリンの高い音」か「シンバル」という感じ。
日本語は「バスドラム」。
発声法で言えば、英語は「頭のてっぺんから」声を出す「オペラ」。
日本語は「腹から」声を出す「能」みたいな感じ。
周波数まで違うなんてびっくりです。
こんなことは「国語」では教わりませんよね。
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4.まとめ
開国前の日本は「子どもの楽園」と言われていました。
そのことは、幕末から明治初期にかけて日本を訪れた数多くの外国人が記録を残しています。
世界各国を探検して回っていた外国人が、
「日本の子どもは世界一幸せだ」
と称賛したのです。(渡辺京二『逝きし世の面影 』)
きっと「子育ての仕組み」が外国とは違っていたのではないでしょうか。
でも、それだけではなく、
日本語が「共感の言語」だったから
というのも、その理由の一つなんじゃないか!
この本を読んで、私はそう思いました。
ちなみに、「その国の言語が人格の形成に関係するのではないか」という考え方を「サピア=ウォーフの仮説」というそうです。
最後に、金谷先生の主張を紹介して終わります。
日本では日本語の授業を「国語」と呼んでいます。しかし、母国語の授業を「国語(National language)」と呼ぶ国は日本以外にありません。アメリカでは英語の授業を「イングリッシュ」と言いますし、中国でも「中国語」と表現します。国語と呼ぶ限り、それは国内だけの意識にとどまり、母語を世界に発信しようとする力に欠けてしまいます。(『致知』2021年1月号)