講座516 シャドーイング

今回は《授業力がすぐにアップする練習方法》について解説します。

 目 次
1.練習したことありますか?
2.《話し方》の技能
3.参観日での第一声
4.メルマガ「谷和樹の教育新宝島」
5.シャドーイング
6.シャドーイングのコツ
7.まとめ

1.練習したことありますか?

そもそも皆さんは《授業力をアップさせる練習》というのをしたことがありますか?

「練習」ですから、イメージとしては、野球で言えば《素振り》とか《走塁》の練習みたいなことです。大谷選手がよくやってますよね。

野球選手にとっての本番は試合。

目標は《勝つため》です。

教師にとっての本番は授業。

目標は、子供達が《わかる!》《できる!》《勉強楽しい!》ってなることですよね。

そのための「練習」ってやったことありままか?

今日はその練習方法をひとつ紹介します。

2.《話し方》の技能

それは「シャドーイング」という練習方法です。

具体的にいうと、授業の上手い先生の言い方をそっくり真似して言う練習です。

学校の中に《授業の上手い先生》っていませんか?

その先生はどうして授業が上手いかということを分析したことはありますか?

多くの場合、授業の上手い先生は《話し方》が優れているものです。

では、《話し方》のどこが優れているのかを分析したことはありますか?

イベントの司会者などは《話し方》が上手ですよね。

プロの司会者は《話し方》をスキルとして身につけています。

プロ野球の選手と同じで、何度も《話し方》の練習をして上手くなったわけです。

その練習は、漠然としたものであったはずはありません。

意識的な練習です。

《話し方》の何を意識したのでしょうか。

それは、《間》や《抑揚》や《高低》や《表情》や《リズム》や《テンポ》や《雰囲気》などいくつかあります。

教師も《話し方》のプロであるべきですから、意識すると子供達の反応は違って来ます。

その《話し方》を上達させる一番簡単な練習方法が「シャドーイング」なのです。

3.参観日での第一声

では、早速やってみましょう。

まず、お手本になる《授業の上手い先生の言い方》が必要です。

ここでは、日本の教育史上、最も沢山の本を出した公立小学校の先生である「向山洋一」の授業音声記録を使うことにします。

1993年4月22日6年生の国語の授業です。

この授業は参観日に行われたものです。

ですから、教室には沢山の保護者がすでに子供達を囲んでいる状態です。

そして、向山先生が発した第一声はこれです。

では6年生で最初に習った漢字を書けるかどうかやってみましょう。幼稚園の「幼」、サンハイ。

これが第一声です。

この指示に従って、子供達は一斉に人差し指を出して《空書き》を始めます。

授業で「空書き」をさせたことのある先生はイメージできると思いますが、習った漢字を空中で「指書き」させる指導方法です。

空中に書くので「空書き」、暗記しているので「空書き」という二重の意味があります。

では6年生で最初に習った漢字を書けるかどうかやってみましょう。幼稚園の「幼」、サンハイ。

子供達「イーチ、ニー、サン、シーイ、ゴ。」

出来ればここもイメージしてみてください。

空書きする漢字は「幼」(五画)です。

子供達の最初の声が「イチ」ではなく、「イーチ」なのはどうしてなのか想像してみてください。

「幼」の一画目は折れますよね。

折れながら筆順を唱えるので「イーチ」なのです。

それで「イーチ、ニー、サン、シーイ、ゴ。」という言い方になっています。

さて、ここまでで、参観日の授業開始から12秒くらいでしょうか。

教師の第一声だけだと7、8秒だと思います。

その7、8秒をシャドーイングしてみたいと思います。

4.メルマガ「谷和樹の教育新宝島」

「シャドーイング」とは、お手本に声をかぶせる練習方法でした。

お手本となる音声データが必要です。

そのデータは現在、「谷和樹の教育新宝島」のHPに公開されています。

まず、「谷和樹の教育新宝島」HPへ行きます。

すると、下の方に「サンプルを読む」とあります。

そこをクリックすると、

「サンプル第三弾を読む」と出て来ます。

そこをクリックすると、

12月の特典として、向山先生の「詩文の授業」の資料がダウンロードできます。

クリックします。

「特典資料」が出て来ました。

このページで下の方にスクロールすると、「サンプル特典音声」を聴くことができます。

まずは冒頭の第一声だけを聴いてみてください。

※サンプルなので予告なしに削除・変更されることがあります。

(↑)再生ボタンを押してみてください。

どうでしたか?

どんな印象を持たれましたか?

「めっちゃ普通じゃん!」

って思いませんでしたか?

私は最初そう思いました。

皆さんの参観日の授業もこんな感じですか?

お母さん方が教室に入って来ると、先生も子供達も緊張してシーンとしてませんか?

向山先生の学級は違います。

ザワザワします。

子供達が自然体なのです。

管理的なムードが全くないのです。

そこがまず一つ「名人」と言われる所以なのです。

5.シャドーイング

では、今の向山先生の話し方にかぶせて言ってみましょう。

この言葉です。

再生ボタンを押してカーソルを合わせると時間が表示されます。

動画の00:07秒くらいのタイミングで一緒にセリフを言ってみてください。

それが「シャドーイング」です。

では6年生で最初に習った漢字を書けるかどうかやってみましょう。幼稚園の「幼」、サンハイ。

どうですか?

思ったより難しかったのではないでしょうか。

私も最初は全く出来ませんでした。

たったこれだけのことなのに、やってみると全然出来ないのです。

どうして被せられないのでしょう?

合わない、ズレるということは身体性が違うということ。

被せられないという現象は、向山先生が持っている身体性、

つまり、《間》や《抑揚》や《高低》や《表情》や《リズム》や《テンポ》や《雰囲気》といった言語化出来ないスキルが、

自分とは異なっているということです。

当たり前ですね。

同じだったら授業の名人です。

でも、練習すればこうしたスキルを習得することは可能です。

しかも、シャドーイングは練習方法の中でも初歩的なものです。

これができない理由は二つあります。

①自分とお手本との落差

②教員養成制度にこうしたカリキュラムがないから

だから、日本の学校には授業の上手い先生が少ないのだと思います。

しかし、逆に言えば、練習をすれば《数少ない授業の上手い先生》になれる可能性があるということです。

少しだけ挑戦してみませんか?

6.シャドーイングのコツ

誰でも《いきなり》は難しいのです。

コツがあります。

身体性というのは目に見えないものだから難しいわけです。

それを視覚化してみましょう。

では6年生で/最初に習った/漢字を書けるかどうか/やってみましょう。/幼稚園の「幼」/サンハイ。

「/」で《間》を視覚化しました。

これを見ながら言ってみてください。

かなり近づいて来るはずです。

では6年生で/最初に習った/漢字を書けるかどうか/やってみましょう。/幼稚園の「幼」/サンハイ。

次に、特徴的な声の使い方を真似します。

《間》以外の特徴に気づきませんでしたか?

たとえば《抑揚》です。

「幼稚園の『幼』」と言う時に声が張っています。

その部分を真似します。

まだ他にありませんでしたか?

普通じゃない部分があります。

それは、「漢字を書けるかどうか」の部分が早いことです。

どうしてこの部分が早口なのでしょう?

これは私の推測ですが、この「漢字を書けるかどうか」を早く言うことで緊張感が生まれるように思います。

と言うか、

全体を《のぺーっ》と平坦に言うと緊張感の無い言い方になるのです。

まだあります。

「では6年生で/で一度区切るのも普通ではないですよね。

普通なら「6年生で最初に習った漢字」という部分をひとまとまりにするはずです。

向山先生はどうして「では6年生で/で区切ったのでしょう?

これも私の推測ですが、参観授業の始まりで子供達はまだ集中していません。

こういう時、普通の先生はなんて言いますか?

「はい、こっち見てー」とか、

「はじめますよー」とか言いませんか?

授業の名人はこんな言葉を言いません。

いきなり授業に入って行きます。

ただし、子供達を《置いてきぼり》にするわけではありません。

授業に気持ちを向かわせるために(授業が始まったことに気づかせるために)、

「では6年生で/で、一度区切ったのだと思います。

教師のこの声によって、それまで集中していなかった子が気づきます。

逆に言えば、それまでは《放っておく》《自由にさせておく》ということです。

参観日です。

テンションの上がっている子もいるはずです。

気になってキョロキョロ気ている子もいるはずです。

それが子供です。

そうした子供らしい行動を管理しないのが授業の名人です。

ギリギリまでは好きにさせておく。

そして、最短最小の授業行為で授業に入ってゆく。

それが「では6年生で/の小さな「/」だと考えられます。

このように、授業の上手い先生の授業行為には《意味》があるものです。

私たちは参観していても、その《意味》には気づかないものです。

音声を聴いても気づきません。

シャドーイングしても気づかないでしょう。

しかし、シャドーイングを繰り返して、自分の教室でも真似しているうちに、

なんとなく身体化されて来ます。

《意味》はわからなくても、似て来ると、なぜか授業が変化して来ます。

子供達が集中して来るのです。

私の場合はそういう順序でした。

《意味》に気づいたのは、ずっと後です。

それは、自己研修通信などで向山先生の授業を分析した時に気づきました。

人に伝えるために文章化した時に初めて見えて来たのです。

7.まとめ

ということで今回は「シャドーイング」について解説しました。

シャドーイングをするためには音声データが必要です。

今回はメルマガ「谷和樹の教育新宝島」のサンプルデータを使わせていただきましたが、

本来は、メルマガを購入した人が使用するものなので、特別です。

時々、こうしてサンプルとして一般公開される情報があるのですが、

毎週金曜日に実際に配信されて来る情報はこの100倍くらい貴重なものです。

サンプルはあくまでもサンプルです。

でも、機会があればまたサンプルの情報を使ってご紹介してみようと思います。

出典:「谷和樹の教育新宝島」

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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