講座494 男性は子育ての苦労を知らない!

先日のラジオ収録で、《世の男性は育児の苦労を知らない!》というような話題になりました。

その場にいたのは、3人の男の子を育てている番組パーソナリティの美和さんと、男女4人のお子さんを育てている助産師のマキちゃんと私、つまり男性は私だけです。

この状況で繰り広げられた話が、あまりにもリアルで(私は反論できず)、

(この話はむしろこれは広げなければいけないなと思い)、

記事に書くことにしました。

 目 次
1.母親は家の中が職場!
2.母親は倒れるわけにはいかない!
3.子育てに「赤ハラ」は付きもの!
4.《同じ時間眠っているだろう》は誤解!
5.男性の育児本能は未発達!
6.産後ケアGMT・今年の目標

1.母親は家の中が職場!

助産師のマキちゃんが子育て中のお母さん方にアンケートをとってくれました。

もし、赤ちゃんの面倒を見てもらえるとしたら何をしたいですか?

【圧倒的1位】ゆっくり休みたい

これはつまり、「ゆっくりごはんを食べたい」とか「ゆっくりお風呂に浸かりたい」とか「ゆっくり横になりたい」とか、そういうことです。

これ、どう思いますか?

世の男性なら普通にやれることだと思いませんか?

赤ちゃんを育てていると、それができないんです。

ですから、番組パーソナリティの美和さんは言いました。

「お母さんは24時間働いているんです!家の中が職場なんです!」

旦那さんは帰宅すればゆっくりできますよね。

家と職場は違いますよね。

でも、子育て中の母親にはその区切り目がないのです。

たとえ赤ちゃんが眠っていたとしても、お母さんは外出できません。

眠っている間にちょっとコンビニへ、なんて出来ません。

いつ目を覚ますかわかりませんからね。

目を覚ました時にお母さんがいなかったらきっと泣くでしょう。

母親というのは、その時のことを想像してしまうものです。

ですから、自分ではなく《赤ちゃん優先》にします。

それが母性です。

ですから、赤ちゃんが眠ったとしても自由ではないわけです。

しかし、家の外で働いている男性には、このイメージがなかなか持てません。

ですから、ここがまず父親に必要な理解の①です。

理解①】母親は家の中が職場

2.母親は倒れるわけにはいかない!

アンケートの中には次のような声もありました。

【第2位】自分じゃない人が作ったごはんをゆっくり食べたい

子育て中のお母さん方は、自分で作ったごはんを自分で食べることが日常なわけです。

しかも、食べるスピードが他の家族と違います。

「食べる」というより「かき込む」感じ

片付けもあるので座ってゆっくり食べるのではなく、急いで食べてしまう。

ついつい、そんな習慣になってしまうものです。

《赤ちゃんを片手に抱っこしながら食べる》とか、《立って食べる》なんてことがよくあります。

「立って」までしない時であっても、《赤ちゃんが眠っている様子を横目で見ながら》という「ながら食べ」です。

まったく解放された状態で食事をとることは難しいわけです。

ところが男性はどうでしょう?

外食も出来ますよね。

お弁当は奥さんが作るケースもあるでしょう。

中には《立って食べる》という人もいるかもしれませんが、赤ちゃんを抱っこしたまま食べる人はいませんよね。

「孤独のグルメ」みたいな感じで、食べることを楽しむ人もいるんじゃないでしょうか?

一人で座って、一口ずつ味わいながら食べる。

家で子育てをしている女性の世界とは正反対の世界ですよね。

ここでまた美和さんが名言を発します。

子育てをしている母親は《食事を味わう》というより、《自分の体を維持するためにとりあえず胃袋に物を入れる》という感じです!

これもまた母性ですね。

母親は倒れるわけにはいかないのです。

働いている男性も、会社のために、稼ぐために、倒れるわけにはいかないと思いますが、

それと同じように、母親も、家族のため、赤ちゃんのために倒れるわけにはいきません。

母乳育児の時は特に気を遣うと思います。

お酒だって飲めませんしね。

まさに「家の中が職場」です。

理解②】母親はゆっくり食事できない。

3.子育てに「赤ハラ」は付きもの!

第3位はアンケートの声ではく、番組を収録しながら私が考えたことです。

【第3位】話を聞いてもらいた!

職場にもハラスメントがあるように、育児中の家の中にもハラスメントがあります。

たとえば、赤ちゃんがハイハイをするようになると、いろんなものを触ります。口にします。

畳んだばかりの洗濯物をちらかしてしまうこともあるでしょう。

本棚の本を全部引っ張り出してしまうこもあるでしょう。

ティッシュペーパーを全部出してしまうなんて「あるある」です。

でも、そういうことは発達にとって意味のある行為であって、赤ちゃんが悪いわけではありません。

ですから、赤ちゃんを叱るわけにはいきません。

でも、お母さんにとっては迷惑行為です。

できれば、やって欲しくない行動でしょう。

「ハラスメント」とは、精神的な攻撃などによって 不利益やダメージを受けることを意味します。

ですから、こうした赤ちゃんの行為もハラスメントと呼ぶことができます(「赤ハラ」とでもいうのでしょうか?)。

しかも、この場合は、相手が悪いわけではありませんので、パワハラやセクハラよりもダメージが大きいと考えることもできます。

そのストレスをぶつける場所がないのです。

この場合の対策は大きく2つです。

①赤ちゃんのその行為の意味を理解する

②ストレスの捌け口を見つけて吐き出す

ストレスを溜めるのはよくありません。

話し相手が必要です。

家の中で赤ちゃんと二人きりだと「人間らしい会話」がありません。

ですから、世間話でもいいのです。

ここにも男性の理解が必要だと思いました。

理解③】子育てにおけるハラスメントはキツイ。

4.《同じ時間眠っているだろう》は誤解!

次は重要です!

【第4位】ゆっくり眠りたい!

睡眠時間の確保は、子育て中の母親にとって超重要です。

寝不足の母親はとても多いです。

これを誤解している男性が意外と多いかもしれません。

なぜなら、《同じ時間眠っているだろう》と思ってしまうからです。

しかし、そうじゃないんです。

子育て中の母親というのは、自分が眠っている時でも、脳の無意識領域が覚醒しやすくなっているのです。

簡単に言うと《熟睡していない》のです。

美和さんは自分の子育て期間を振り返って、

下の子が小学校2年生になったある時に、

「あ!私、今日、何年振りかで朝までノンストップで眠れた!」

と気づいたそうです。

美和さんには、お子さんが三人いますから、一番下のお子さんが小学校2年生になった時に、初めて「熟睡」を実感できたというのです。

上のお子さんが生まれてから、それまで、トータルで10年間、熟睡していなかったことに気づいた瞬間です。

母親というのは、夜泣きや授乳に対応できるように覚醒しやすくなっているのだと思います。

隣で寝ている男性は、そのことを理解していないと、《同じ時間眠っているだろう》と思ってしまうわけです。

かくいう私も、我が子の夜泣きに目を覚ますことが出来ませんでした。

今思えば、出来ないなら出来ないなりに、もっと支えてあげればよかったと後悔しています。

若いお父さん方には、最初からこのことを知っておいていただきたいと思っております。

理解④】子育て中の母親は熟睡できてない。

5.男性の育児本能は未発達!

性差による本能の違いを否定することはできません。

人類は19万年間以上も狩猟採集生活をしてきて女性同士が共同体として子育てをしてきたと言われています。

ですから女性には、赤ちゃんを育てているお母さんにも、そうじゃない第三者としての女性にも母性が備わっています。

そして、男性に備わっているのは「狩り」の本能です。

男の子が長い棒を持つと「剣」に見立てて振り回してしまうのも、修学旅行先で「木刀」を買ってしまうのも本能です。

1万2000年くらい前に農業革命があって、少しずつ社会の仕組みが変わりました。

それでも多くの社会では《男性は外に出て働く・女性は家にいて子育てをする》という仕組みが長く続きました。

男女共同参画社会が始まったのは、つい最近のことです。

しかもこの点で日本はかなり遅れています。

《子育ての仕組み》においても、《女性の賃金》においても、まだまだです。

《男性の理解》もその中の課題の一つです。

つまり、子育てにおける女性への理解には、社会的な仕組みの他に、本能を乗り越えるための努力(つまり理解と想像という努力)が必要なのだと思います。

理解⑤】男性には「子育て」を理解し想像する努力が必要。

こうしたことを考えて、私は「サピエンス俯瞰図」というものを作りました。

これは、「子育て」という営みを人類の歴史から見た時に、現在はどの段階なのかがわかるようにしたものです。

人類の歴史の中で、お母さんが一人で子育てをするようになったのは、ごく最近の現象であって、本来なら人類の子育ては共同で行うものだったことがここからわかります。

だからこそ私たちは地球上で繁栄して来たのですが、その状況が今は変わりつつあるわけです。

特に、お母さんが一人で働きながら子どもを育てるといった「シングルマザー」としての子育ては人類が経験して来なかった出来事です。

もしかすると、現在の日本の子育ては、人類史上最も過酷な子育てなのかもしれません。

もはや、お金だけでは解決出来ないところまで来ているのかもしれないわけです。

私たちは、こうした人類学の視点からも「子育て」を考えなければならないと思っています。

6.産後ケアGMT・今年の目標

私たち3人は「産後ケアGMT」を名乗り、地元で(自分たちのできる範囲での)子育て支援活動をしています。

今年はまず3人で別海高校での出前授業「赤ちゃん学」を実施しました。

次は、子育て中のお母さん方を「癒す」ための仕組みづくりに挑みます。

アンケート結果から、その方向が見えて来ました。

【第1位】ゆっくり休みたい
【第2位】自分じゃない人が作ったごはんをゆっくり食べたい
【第3位】話を聞いてもらいたい!
【第4位】ゆっくり眠りたい!

「ゆっくり休みたい」を実現するためには「お風呂」なんていいですよね。

町内には温泉施設がいくつかありますから、赤ちゃんを預けている間にゆっくり温泉に浸かるなんていいですよね。

そうしたケアを実現させる仕組みが作れないか?

誰も無理することなくwin-win-winを実現させる仕組み!

それが作れたらいいなと考えております。

最後に「父親学」としての《まとめ》です。

理解①】母親は家の中が職場
理解②】母親はゆっくり食事できない。
理解③】子育てにおけるハラスメントはキツイ。
理解④】子育て中の母親は熟睡できてない。
理解⑤】男性には「子育て」を理解し想像する努力が必要。

投げ銭をする

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

おすすめ

3件のフィードバック

  1. 畠山文 より:

    海外の番組で、仕事の面接に来た人に、無休、無給、1日24時間勤務の仕事ですと説明して、面接に来た人がビックリしたところで、その仕事はお母さんの仕事ですと種明かしをすると、皆、お母さんのありがとうと言う、そのような番組を観たことがあります。これを思い出しました。

    女性側からしますと、少し想像すれば分かるでしょ?と思っていましたが、違うようですね。余裕が無いかもしれませんが、折を見て、夫に状況を伝え続ける必要がありそうですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です