講座386 4月の参観日で授業を見るポイント

一年生の「ひらがな」の勉強は始まったでしょうか?

私は入学式の翌日から「一日一つ」ずつ教えて7月には教え終わっていました。

中には「全部書けるよ!」と得意そうに言う子もいましたが、

「じゃあ『の』というひらがなを一つ書いてごらん」と言ってノートに書かせてみます。

子どもたちのノートを見て回ると、誰一人正しい「の」を書けていません。

「あ~、おしいなあ~」「ちょっと違うなあ~」

「これもおしいな~」

そんな感じで「在れども視えず」から授業は始まります。

 目 次
1.一斉指導は授業の基本
2.授業には「定式」がある
3.「拡散」から「収束」へ
4.「ドリル」と「スキル」の違い
5.一斉指導の原理は同じ

1.一斉指導は授業の基本

学校の勉強は「一斉指導」が基本です。

30名くらいの子どもたちに対して、教える先生は1人です。

一斉に何かをやらせなければなりません。

それを「一斉指導」と言います。

一斉指導の中心は次の2つです。

(1)一斉に声をそろえる(そろった声が教室に響きます)
(2)一斉にノートへ向かう(教室はしんとなります)

難しいことはありません。

この2つの場面があれば「学校の授業」という雰囲気になります。

小学校の一年生にも「この雰囲気」は伝わります。

一年生こそ早く「これ」をやりたいと思っています。

ですから、先生は「そろった声」「しんとなる瞬間」を味わわせます。

でも、ただでは味わわせません。

こんなおいしいご馳走をただで出すのはもったいないのです。

2.授業には「定式」がある

黒板は先生の大切な教える道具です。

これも簡単には使いません。

書くのは特別な時です。

「じゃあ、書くよ」

そう言って、正しい「の」をじっくり書きます。

正しい「の」は左肩に角度があります。

それが視えるように意識してゆっくり書きます。

そうすると、一年生ですからね。

「あっ!わかった!」と口にする子が出ます。

A君「なんか、あそこがとんがってる!」

Bさん「カクッとしているところがある」

いろんな表現で「視えたこと」が発表されます。

授業ではこれを「気づく」と言います。

最初は「視えないことがある」ということに気づかせ、
次に、「視えたことがある」と気づかせ、発表させる。

こういうのを「授業の定式」とか「型」と言います。

3.「拡散」から「収束」へ

でも、「とんがってる」とか「カクッとなってる」とか、表現がバラバラです。

これを「拡散した状態」と言います。

「拡散」はいいことです。

いろんな意見が出たということですから。

それを次は「束ねる」必要があります。

黒板に書き加えます。

「ななめで もちあげ まわして ぴゅう」

教師が読みます。

次は、子どもたちと読みます。

次は、子どもたちで読みます。

次は、一人で読める子を指名します。

「じょうずだなあ」と言ってほめます。

「みんなで読んでごらん」と言います。

「ななめで もちあげ まわして ぴゅう」

間の取り方やリズムが整っています。

一斉に声をそろえる(そろった声が教室に響きます)

次は、読むときに動作を加えさせます。

人差し指を突き出して、空中に「の」の字を、唱えながら、書くのです。

「ななめで もちあげ まわして ぴゅう」

「じゃあ次は、もっと大きく書いてみよう!」

と言って「ジャンボ・エアー『の』」を書かせます。

「次は、こんな小っちゃく!」

と言って「ありんこくらいの『の』」を書かせます。

「黒板に向かって普通に!」

「目をつむって!」

「机の上に!」

「自分の手のひらの上に!」

これは「変化のあるくり返し」という教育技術です。

子どもは変化が大好きです。

同じことは飽きます。

「変化のあるくり返し」という技術を分析すると次のようになります。

①子どもたちにナニカを習得させる
②そのナニカを使わせる
③そのナニカを使わせるときに変化をつける

学習とは、学んだことを出力しながら身につけることです。

「習」というの漢字は鳥のヒナが羽ばたきの練習をする様です。

やりながら身につける時間を学校の授業の中で確保することはとても重要です。

4.「ドリル」と「スキル」の違い

ここまでで、

正しい「の」の書き方を言葉に出来ました。

それを机の上などに指で書くことも出来ました。

でもまだ机の上には何もありません。

机の上に余計な物を置かせないことはとても大切です。

余計な物が目の前にあれば触りたくなって当然です。

「ちゃんとしなさい!」と注意するのではなく、授業の進め方を考えることが大切です。

この場合ですと、ここでスキルを机の上に出すことになります。

でも、まだスキルだけです。鉛筆は出しません。

スキルにはスキルの使い方があります。目を引く所もあります。

先生によって様々なやり方があると思いますが揺るがない原則もあります。

それは、お手本が薄く書いてある所を鉛筆でなぞらせるということです。

これを「なぞり書き」と言います。

写真だと「ほ」が3つ書いてあります。

この3つをいっぺんに書かせるか。

1つだけ書かせるか。

こういうことが大問題なのです。

昔はスキルではなくドリルを使う学校が多かったと思います。

ドリルというのは、何度も何度も書かせる教材です。

マスがもっとたくさんあったはずです。

それに対し、スキルは数を重視しません。

授業の中で使うものなので、使い方(使われ方)を重視します。

「では、鉛筆を持って、1つだけ書いてみるよ」などとおごそかに言って、

「あー、待って!待って!姿勢は大丈夫かな?」などと姿勢を整えさせ、

「はみ出さないように行くよー」と言って私が、

たてぼう しゅっ
よこ にほん
たての しりふり
たまごがた

と言ってあげます。

言い終わったときに全員が「ほ」を1つ書き終わります。

子どもたちから「ふうっ」というため息が聞こえてきます。

「書き終わった人は姿勢で合図してください」と言うと、みんな背筋をピンとさせます。

先生は目を合わせてほめます。

1つ書くだけなので時間差は小さくて済みます。

そこがドリルと違うところです。

「じゃあね。2つ目は自分一人でやってごらん。終わったら姿勢で合図」

「鉛筆を持って!すたあと」

一斉にスキルへ向かう(教室はしんとなります)

終わった子が姿勢をよくして先生を見ます。

5.一斉指導の原理は同じ

書き順を唱えて書くのは「下村式口唱法」という指導法ですが、

通常の「イチ、ニ…」という唱え方でも授業の骨格は同じです。

「い」の書き方を唱えるときを例にしてみます。

「い」は二画ですから「イチ、ニ」で終わってしまいますが、

そうではなく、「イーチ」の「チ」のときに「ちょっとはねる」という動作を指書きのときにやっておけばいいのです。

そのステップがあれば、なぞり書きのときの「チ」で「ちょっとはねる」が入ります。

そして、「ニ」は「とめる」です。

スキルにも「とめる」と書かれています。

「とめる」という用語(言葉)を教えることにもなります。

そういうステップを指書きの時点で入れておくと、なぞり書きのときに画数だけで一斉指導ができるわけです。

(1)一斉に声をそろえる(そろった声が教室に響きます)
(2)一斉にノートへ向かう(教室はしんとなります)

この二つの場面が授業中にあると子どもは落ち着きます。

「ちゃんと勉強した」という実感を体で感じるのだと思います。

もうすぐ参観日があると思います。

4月の参観日の授業で「一斉指導」の場面を公開できる先生は超安心できる先生です。

この一年間は、落ち着いた授業、落ち着いた教室、落ち着いた子どもたちになっていくと思います。

これは参観日の授業を見るひとつのポイントです。

《関連動画》新「保護者目線」4月の参観日の授業を見るポイント!

《参観日代行サービスについて》
コンサルティングファーム「子育てwin3計画」では参観日代行サービスを開始しました。保護者の方が参観日に行けない場合に私が代わりに参観させていただき保護者の方に報告させていただくシステムです。よろしければご利用ください。子育てwin3計画「保護者向けサービス」

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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1件の返信

  1. タミー より:

    拝読しているだけでも楽しく受けたい授業だと思いました。

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