講座368 何でも口に入れる赤ちゃんへの対応

赤ちゃんって、いろんな物を口で確かめようとしますよね。

この時期を「口唇期(こうしんき)」と言います。

今回は「口唇期」についての解説です。

 目 次
1.「口唇期」って何?
2.脳の進化
3.口を使って物を確認している時
4.口唇期の対応方法
5.事故の危険
6.まとめ

1.「口唇期」って何?

口唇期というのはオーストリアの心理学者フロイトが唱えた発達段階の中の一つです。

人は、口唇期 → 肛門期 → 男根期 → 潜伏期 → 性器期という段階で発達する「保育ぷらす+」参照

という理論です。

変な名前が付いているので分かりづらいのですが、簡単に言うとこういうことです。

口唇期(0~1歳の乳児期):口を使って物を確認する時期
肛門期(1~3歳):トイレトレーニングを開始する時期
男根期(4~5歳):男らしさ・女らしさを意識する時期
潜伏期(小学生):勉強やスポーツに向かう時期
性器期(12歳以降):恋愛や性に興味を持つ時期
  (「保育ぷらす+」参照

何しろ名前が変なのであまり理解されませんが、普通にそういうことです。

で、私が今回注目するのは赤ちゃんの「口唇期」です。

0~1歳と書かれていますが、本によっては「0~1歳半」「0~2歳」と書かれています。

口唇期:口を使って物を確認する

これは一体なんのためにあるのでしょう。

2.脳の進化

魚とトカゲではどっちの脳が大きいか知ってますか?

カエルとトカゲではどうですか?

大脳(水色の部分)の大きさに注目してください。

動物の「脳の発達」を考える時には、この図のように大脳の大きさに着目すると分かりやすくなります。

そして、人間の脳だけに着目すると、ここにも発達の順序があります。

簡単に言いますと、矢印で示したように「後ろから前へ」の順で発達します。

視覚を司る後頭葉が先に発達して、思考を司る前頭葉は最後に発達します。

脳の進化の順序は、動物の進化の歴史をたどるわけです。

3.口を使って物を確認している時

では、赤ちゃんが口を使って物を確認している時は脳のどこを使っているのでしょう。

それは「体性感覚野」と「運動野」です。

いろいろな研究結果があるのですが、この二つを行き来していると考えていいと思います。

この写真は私の孫が私のケータイからSuicaのカードを抜き取って食べているところです。

「食べる」とか「口に入れる」と言いますけど、心理学的には「口で確認している」ですね。

で、この時、この子の脳はどうなっているかと言いますと、

まだ0歳ですから「おでこの裏(前頭前野)」はそれほど発達していません。

つまり、「よく考えてやっている」という感じではないわけです。

意識してやっているといよりは無意識で食べている感じです(だから叱っても意味はありません)。

で、口にすることでどうなるかと言いますと、

間違いなく「体性感覚野」と「運動野」を働かせているわけです。

これは見たことありますか?

ペンフィールドの「ホムンクルス」

カナダの脳外科医ペンフィールドが考えた模型です。

脳の運動野が、体のどの部分に対応しているのかを視覚的に表した模型です。

これを見ると、「口」「唇」「舌」「手」が極端に大きいですよね。

つまり、これらの部分に「触って感じ取る神経」が集まっているということです。

ペンフィールドの「脳地図」

赤ちゃんは「口」「唇」「舌」「手」を使いまくって脳を発達させていきます。

ここで大人が誤解しやいのが「口」「唇」「舌」です。

手を使って物を触るのは大人にとって「普通のこと」です。

でも、大人は口で物を触りませんよね。

逆に、「Suicaを口に入れるのはおかしい!」と思っちゃいますよね。

でも、それが違うのです。

赤ちゃんにとっては「口も手」なのです。

赤ちゃんは指先がまだ上手に動かせないわけですから、手よりも口で確認するのが普通なのです。

次のことは私の仮説なのですが、

運動野は前頭葉の一部で、前頭前野(考える部分)に近い存在です。

多分、この確認動作をするたびに、運動野と前頭前野の間にネットワークが太く形成されて、外の世界を正しく捉える能力が発達するのではないでしょうか。

そう考えています。

4.口唇期の対応方法

ここまでで、口唇期(0歳~1歳半くらい)に口で確認するメカニズムを解説しました。

次は、その時の対応方法について解説します。

その方法はシンプルです。

「やらせるか/やめさせるか」の二択です。

そこで、「やらせるとどうなるか?」「やめさせるとどうなるか?」について見てみましょう。

(1)上手に対応するとどうなるか?

(2)無理にやめさせるとどうなるか?

上手に対応すると次のように育つと言われています。

①満足や快楽を得るので性格の基礎となる安定感や信頼感を獲得する
②知的好奇心を保ったまま成長する

無理にやめさせると次のような危険性があると言われます。(「口唇期に固着しない方法・克服方法・いつまで・特徴」

①不満が残るので成長してから多弁、食道楽、喫煙などの口唇的欲求を満たそうとする
②指しゃぶりをするようになる
③依存心が強い甘えん坊になる
④悲観的で攻撃的な人格になる

これらのことは「傾向」とか「可能性」であって、実証はされていないと思います。

ですから、私の場合はどうしているかと言いますと、

その時の子どもの様子を見ながら、

「ああ、今、口で調べているなあ」とか、

「今、口で感触(刺激)を味わっているのかな」とか、

そんな感じで見守っています。

赤ちゃんにとっては勉強時間

そういうことですね。

で、教員生活を長くやって来た者として思うのは、

学校に上がってから「勉強しなさい」とか「宿題やったのかい」という大人のナント多いことか!

ということです。

乳児期や幼児期の遊びこそ大切な勉強なのになあ~、と思います。

5.事故の危険

ただし、何でも口にさせることには危険も伴います。

「口にさせてはダメなもの」や「目を離した時のリスク」も考慮しなければいけません。

乳児の死因で一番多いのは「不慮の窒息」(約80%)です。

その「不慮の窒息」の原因は次のようになっています。

1位:ベッド内での窒息
2位:胃内容物による窒息
3位:交通事故
4位:食べ物による窒息
5位:詳細不明の窒息

2位の「胃内容物」というのは一度胃の中に入った物ということです。

ミルクや離乳食が逆流して窒息する事故です。

次に、食べ物以外の窒息について見てみましょう。

ちょっと見づらいですが「その他の物体の誤嚥」というのも5年間で21件の乳児に起きています。

「例」の中に「2cmのボールを誤飲」というのがあります。

この「2cm」をどう見るかという知識も問われます。

何センチだと危険なのか?

神戸大学医学部附属病院の山村智彦ドクターは「直径3.9cm以内の物体は全て口に入れる可能性あり」と主張されています。

卓球の球の直径が4cmです。

卓球の球でも窒息する可能性があると思っておいていいでしょう。

窒息以外で怖いのは「急性中毒」です。

家庭内にある危険物のベスト3はこれです。

これらは手の届く所に置かないというのが基本ですね。

しかし、私はそれだけでもダメだと思っています。

「手」だけでなく「目」にも注意!

赤ちゃんは、目で見た物、目に入った物には興味を示します。

知的好奇心のかたまりですからね。

見ちゃったら探す可能性があります。

真似をする可能性もあります。

ですから、危険物については、

目立たないところで使う

という配慮も大切だと思います。

あとは、「ボタン電池」や「マグネット」「マグネットボール」の誤飲ですね。

6.まとめ

今回は前半で「口唇期」の大切さについて解説しました。

また、後半では「窒息事故の危険性」にも触れました。

食べ物以外の「その他の物」での事故は少ないことがわかりましたが、

大切なのはその両方を情報として日常を判断することだと考えます。

最後に、私の娘は管理栄養士の資格を持っていますが、その娘が言うには、

誤嚥を防ぐためにも
よく噛むこと(アムアム・モグモグ)、噛みちぎって食べることといった習慣が大切

だということです。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. タミー より:

    口で勉強しているのですね!
    ピンポン玉の例が分かりやすいです。

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