講座354 中学生1000人の進路

『現場で使える教育社会学』という本に「中学生1000人の進路」という資料が載っていました。

文部科学省の「学校基本調査」などをもとに作られた資料です。

ざっと見て「なるほどな」と思ったのですが、

よく見ると「ちょっと心配」になって来ました。

今回はこの資料を読解してみます。

 目 次
1.高校進学970人
2.高校卒業896人
3.まとめ

1.高校進学970人

これは1000人のうち970人が高校に進学します。

「行かない30人はどうしてるのかな?」と思いました。

【中学卒業1000人】
①就職5人
②高等専門学校9人
③高等専修学校2人
④職業開発校2人

②の高等専門学校(高専)は高等教育機関ですから高校と同様に考えていいでしょう。

③の高等専修学校というのは、中卒でも行ける専門学校です。

「高等」と付いていますが、普通に通っていても高卒の資格は取れません。

就職を目標にしている学校ですから。

ここに通いながら合わせて定時制高校や通信制高校を受けることもできるので、そうなれば高卒資格が取れます。

ですから高校とは別と考えておきましょう。

職業開発校というのは職業技術を身につけるために施設です。

「校」とついていますが学校ではありません。

以上を整理するとこうなります。

【中学卒業1000人】→ 979人が高校または高専に進学
①就職5人
②高等専修学校2人
③職業開発校2人

①②③の合計は9人→ 979+9=988

ん?12人はどこへ?

資料のどこにも見当たりません。

高校に行かず、就職も目指さず、何もしていないということでしょうか?

ひきこもりの可能性もありますね。

もうひとつおかしなところがあります。

資料の中に「高等特別支援学校」が含まれてません。

中学校を卒業した生徒の中には高等特別支援学校(支援学校)に行く人が存在するはずです。

はてな?です。

もしかすると「高校進学970人」の中に含まれているのでしょうか?

しかし、支援学校は高校ではありません。

高卒資格は取れません。

分類するなら専修学校に近い学校です。

中卒1000人にはそういう謎が残るのですが、一旦まとめて次に進みます。

【中学卒業1000人】
 → 979人が高校または高専に進学
 →9人が就職または就職をめざす
・12人が謎(引きこもりの可能性あり)
・資料の中に支援学校がない

2.高校卒業896人

高校進学970人
高校卒業896人

つまり、74人が中退していると考えられます。

その74人の行先は不明です。

その一方で、卒業した986人の進路は次のようになっています。

【高校卒業者986人】
①4年生大学413人
②6年生大学13人
③短大51人
④専門学校148人
⑤就職150人
⑥専修学校・職業開発校60人

413+13+51+148+150+60=835人

この835人はすべて就職を目指す人たちと言っていいでしょう。

大学に行こうと、専門学校に行こうと、どちらも就職がゴールです。

986-835=151人

この151人は浪人(進学または就職)ということでしょう。

中には「フリーター」とか「ニート」とか「引きこもり」いう人もいるはずです。

フリーター:「フリー・アルバイター」の略(対象は15歳~34歳)
ニート: Not in Education, Employment or Training(就学も就職も職業訓練も受けていない人)
引きこもり:家族意外とほとんど交流がない状況(対象は15歳~39歳)

フリーターの人数はこんな感じです。

ざっと180万人。

ニートの人数はこんな感じです。

ざっと80万人。

引きこもりの人数です。

15歳~39歳でざっと54万人。

「フリーター」「ニート」「引きこもり」は定義が曖昧ですので重複していたりして正確な数値はわかりません。

ざっとで見ても、なんだか遠い世界のイメージです。

でも、中学生1000人のうち、12名が不明で、151人が高校卒業時に進路未定となっています。

ひと昔前は大学に落ちて浪人という生徒もそれなりに存在しましたが、最近は減少傾向です。

3.まとめ

以上、子供たちの進路を概観しました。

こうしてみて私が考えるのは次のことです。

(1)就学も就職も職業訓練も受けていない人たちが心配
(2)引きこもりはもっと心配
(3)社会に出て働くことをめざす、あるいは働いているということは尊い

さらに言えば、働くことに生きがいを感じている人や楽しいと思ってる人は本当に幸せだなと思います。

そういう人を増やしたい。

そして、そうじゃない人を減らしたい。

そのような世の中を次の世代につなぐのが壮年者、高齢者の役割だと思いました。

教員時代に教室に掲示して暗唱させていた福澤諭吉の心訓を載せて終わります。

 心 訓

一、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。

一、世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。

一、世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。

一、世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。

一、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。

一、世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。

一、世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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12件のフィードバック

  1. タミー より:

    4年生大学に進学する人が多くて驚きました。
    高校卒業や退学して、出産子育てをする女子生徒さんもおられるのかなと思いました。

    • 水野 正司 より:

      高2で妊娠して中退ケースをいくつか知っています。
      幸せになる人もいるでしょうし、不幸せになってしまう人もいます。
      いずれにせよ「子育ての仕方」は教えておくべきだと思います。

  2. 関口芳弘 より:

    <>とありますが、高校です。卒業すれば高卒です。

    • 水野 正司 より:

      特別支援学校のことですか?
      私が確認した範囲では高卒資格とは別になっています。
      今度、道教委に聞いてみようと思います。

    • 水野 正司 より:

      判明しました。
      高校卒業には必履修科目があるからでした。
      高校の学習指導要領に書いてありました。

    • 水野 正司 より:

      なお、
      一年目は高等支援学校に通い、
      二年目から希望者は普通高校に通える。
      そして、必履修教科を履修し、
      高卒認定試験を受ける、
      と高校卒業資格がもらえるという取り組みをやっている都道府県もあるようです。

  3. 水野 正司 より:

    https://www.perplexity.ai/
    に聞いたところ、このような回答がありました。
    ——————
    特別支援学校(高等部)卒業者は高等学校卒業資格を取得しない[1][2][3][4]. しかし、彼らは大学入学を申請する資格があります[1][3].
    ——————

    • 関口芳弘 より:

      特別支援学校高等部卒業は、「特別支援学校高等部卒業」となり高校卒業とは異なるようです。でも大学受験資格はあり、その区別は用語だけのように思います。しかし、一条校であるので、<>は誤りだと思います。この論理だと、小学部、中学部も小学校、中学校ではなくなってしまいます。

      • 水野 正司 より:

        このことを調べた動機は高卒資格がないと社会的に不利なのかを知るためでした。シンプルにいうと就職した時の給与が違うのかなんです。調べた結果、高卒資格はなくても逆に支援学校卒の方が給与が高いということがわかりました。ですから高卒資格にこだわる必要はないんだと理解したところです。

        • 関口芳弘 より:

          調べてくださり、ありがとうございます。支援学校卒の方が給与が高い、というデータソースをご教示ください。給与が高い理由は、障害者雇用促進法により、比較的大規模会社や役所に雇用されるため、だからではないかと思います。逆に雇用率は低いものだと思います。
          何故か、引用した部分が消えてしまいます。支援学校は、一条校であり、れっきとした学校です。分類するなら専修学校に近い学校ではない。

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